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売上債権


売上債権とは?

売上債権とは、未回収の商品代金のことをいいます。

受取手形(商品販売時に得意先から入手した手形)や売掛金(商品をツケで売ったツケ)が該当します。

 

売上債権の回転期間について

売上債権の回転期間は短いにこしたことはありません。商品・サービスを販売したら、即キャッシュでもらえるというのが、企業としては、安心・安全です。

売上債権の回転期間が短いと回収が滞るリスクが少なく、運転資金が少なく済みます

逆に売上債権の回転期間が長くなるほど、その間に取引先が倒産したりして、回収が滞る危険が増えます

売上債権の回転期間は、基本的には業界の慣行としてある程度決まってしまいます。

なので、同業他社との比較や時系列での比較も大切になってきます。

 

売上債権回転期間の計算し、貸し倒れを事前に予測する!

売上債権回転期間(1カ月)は、売上債権を1カ月あたり売上高で割ることにより計算されます。

つまり、何か月分の売上高に対応する売上債権が残っているかを意味します。

 

得意先別売上債権をイメージする!

自営業の方や企業の経理で働いたことがある方なら、この得意先別売上債権のイメージをしっかりと持っているでしょう。

当然のことですが、企業は様々な得意先に対して商品を販売しています。

得意先の中には健全経営で十分な支払能力のある先もあれば、火の車で日々資金繰りのために走り回っている先もあるでしょう。

支払能力がない企業に商品を販売すると、売上債権が回収できないまま、どんどん増加していくことになります。

そしてある日、回収できない売上債権が、貸倒処理されるのです。

貸倒処理とは、売上債権を取崩、損失処理することをいいます。

このように回収できない売上債権を多額に有する企業に対する投資は、財産価値リスク(財産価値が減少することにより、1株価値が減少するリスク)が高くなります。

逆に、回収できる売上債権ばかりの企業に対する投資は、安全なものになります。

それでは、どのようにすれば、回収できない売上債権を多額に有する企業とそうでない企業を見分けることができるのでしょうか?

これに役立つのが売上債権の回転期間分析なのです。

 

リスクが高い企業の特徴は?

財産価値リスクが高い企業の特徴は、回転期間が長いことです。

売上債権回転期間が長いということは、1ヶ月当たりの売上高と比較して、売上債権が多額にあることを意味します。

つまり、回収できない売上債権が存在している可能性が高い、ということができます。

そこで、具体的には、売上債権回転期間が4ヶ月以下の企業にだけ投資することを投資判断の基準とします

というのも、売上債権回転期間が4ヶ月を超える企業は、多額の売上債権が貸し倒れるリスクがあるからです。

 

回収できない売上債権がどうして発生してしまうのか?

どうして回収できない売上債権が発生してしまうのか、想像がつかないかもしれません。

「回収できないような企業には最初から売らなければいいじゃないか」と言われれば、その通りなのですが、現実にはその通りにできない事情があります。

ひとつは、業績が良くない企業が一時的に売上高を伸ばそうとして苦し紛れに売ってしまう場合があります。

もうひとつは、管理がずさんな企業が、得意先の支払能力の有無をチェックせずに売ってしまう場合です。

理論的には、「回収できないような企業には売らない」ことが正しくとも、なかなかその通りにできないのが現実のようです。

 

回転期間分析の応用的な使い方

ここまでのところでは、回転期間は画一的に4ヶ月以下という基準を用いてきました。

しかし、現実の企業を見てみると、業種ごとに自己資本比率や流動比率の傾向があったように、回転期間についてもやはり傾向があります。

つまり、業種全体として回転期間が長い業種もあれば短い業種もあるのです。

そこで、回転期間分析をより現実に近付けて使ってみましょう。

応用方法は、①業種平均との比較、②前期との比較の2つです。

 

業種平均との比較をしよう!

各業種には、業種構造があります。また、取引の慣習があります。

商品代金の回収条件も然りです。販売日から1ヶ月で回収する会社もあれば、3ヵ月で回収する会社もあります。回収期間が短いものの最たる例がコンビニで、通常は現金販売しかしません。

回収条件が1ヶ月の会社は、売上債権回転期間も1ヶ月になるはずです。また、回収条件が3ヶ月の会社は、売上債権回転期間も3ヶ月になるはずです。

ところが、売上債権の中に回収できずに滞留しているものがあると、回転期間は長期化するのです。

代金回収条件は、一律に決まっていないものの、業種ごとに傾向があるので、同業他社との比較を行うことでより精度の高い分析をすることができます。

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売上債権回転期間について、実際には、4ヶ月以下であっても業種平均値と比べて、回転期間が長期化している場合には、貸し倒れが発生するリスクがあると考えられます。

業種別の売上債権回転期間を見てみましょう。

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このように、売上債権回転期間といっても、業種の特性によりその平均的な値は様々です。

ここでは例として、機械と小売業について、比較しましょう。

 

一般的には、企業相手の取引であれば、代金回収期間が長くなるのが一般的です。

したがって、機械業種のように、取引先が企業ばかりの業種は、売上債権回転期間も長くなります。

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これに対して、個人相手の取引であれば、代金回収期間が短くなるのが一般的です。

したがって、小売業のように、取引先が個人ばかりの業種は、売上債権回転期間も短くなります。

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当然ですが、セブンイレブンに行ってツケでものを買おうと思ってもそれはできません。

ですから現金取引が中心となり、売上債権の金額は減少します。

このような現金商売の小売業においては、売上債権が貸し倒れるリスクはほとんどないといっていいでしょう。

 

逆に企業取引で、債権が多額でかつ長期間にわたって回収しなくてはならない機械業界などは、売上債権の回転期間が長期となり、その分債権を回収できないリスクも高まってしまうのです。

 

前期との比較をしよう!

回転期間を単年度で把握するだけでなく、過去数年間にわたって分析することで、その傾向が見えてきます。

回転期間が長期化傾向にある会社は、やはり投資の際に注意しなければなりません。

売上債権回転期間が前期比で長期化している場合、回収できない債権が増加している可能性があります。

 

海外に対する売上がある場合

海外に対する売上がある場合は、売上債権回転期間が一般的に長くなる傾向があります。

海外に対する売上債権の回収は長期にわたることが多く、中国など国によっては条件どおりになかなか支払ってもらえない場合もあります。

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