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退職給付引当金の計上について


退職給付引当金とは

貸借対照表を見てみると負債の部に計上されている、気になる存在・・・

退職給付引当金

これってなんだ?

まあ、読んで字の如く、

従業員が退職した時に支給する退職金です。
(役員の退職金は、役員退職慰労引当金として計上されます。)

はて?

退職金を支払った時に費用にするんじゃないの?
なんで負債に計上されているの???

「現時点において既に、従業員に対してお金を支払う義務がある」ので、これを負債として計上しているわけです。

別の言い方をすれば、確かに会社がお金を支払うのは従業員が会社を辞めたときだけど、実際には、毎月毎月、従業員が勤務する期間に比例してもらえる退職金は増えていきますよね。

つまり、
「現金の支出はまだ」
だけど、
「費用は発生している」
わけです。

なので、従業員に対して支払わなければならない退職金を退職給付引当金として計上しているわけです。

 

退職給付引当金にはいくら計上すればいいのか?

では、退職給付引当金にはいくら計上すればいいのでしょうか?

従業員が退職した時に支払う退職金といっても、
従業員が自分の都合で退職した場合(自己都合退職)もあれば、
会社の都合で従業員を退職させる場合(会社都合退職)もあります。

それぞれのケースで退職金の支給額が異なります。

また、退職した時に一括してもらえるお金(退職一時金)もあれば、退職後長期間にわたってもらえるお金(退職年金)もあります。

なので、従業員が退職した時の退職金を退職給付引当金に計上するといっても、いくら計上すればいいか?とても微妙な問題なんです。

自己都合退職時の退職金を計上すればいいのか?
会社都合退職時の退職金を計上すればいいのか?

で、計上方法には大きく分けて

原則法と簡便法が用意されています。

 

原則法と簡便法

原則法というのは、厳密に計算する方法です。

一般的には、過去の統計から考えて
・従業員が自己都合退職する確率は何%
・従業員が死亡退職する確率は何%
・定年まで勤務する確率は何%
などをもとに将来のキャッシュアウトフローを計算し、これを割り引いて現在価値を計算します。

要するに、統計的に将来の現金支出を予測し、インフレを考慮して現在価値を計算する
ということです。

これに対して簡便法。
簡便法のなかにもいろいろ方法はあるのですが、おおざっぱに言えば、従業員が期末に全員自己都合で退職した時に支払わなければならない金額を計算する方法です。

会社都合退職や定年退職に比べて自己都合退職の場合は、退職金の額がかなり減ります。

ということは、簡便法で計算した場合は、原則法で計算した時に比べて、退職給付引当金が少なめに計上されます。

原則法は、かなり正確。
簡便法は、おおざっぱで、しかも少なめ。というイメージです。

ちなみに、簡便法は基本的に、従業員数が300人未満の小規模企業で適用できます。

従業員数300人未満の会社?

そう、上場企業のなかでも300人未満の会社ってけっこうあります。

ということで上場企業の中でも簡便法を適用している会社は、あります。

では、投資対象として検討している会社が退職給付引当金を計上する時に原則法と簡便法のどっちを使っているのかどうやったらわかるのか?

有価証券報告書や決算短信などで、財務諸表の後に財務諸表作成の基本となる事項(会計方針)として記載されています。

ここに退職給付引当金の計上方法が記載されています。

というわけで、投資をする際には、こういう点にも気をつけたいですね!

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