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バリュートレンド

『ビジョナリーカンパニー』


※ほたる:アクションラーニングの編集長

 

ほたる:社長っていうと、やっぱりソフトバンクの孫さんみたいに壮大な構想をドーンとぶち上げて、みんなを熱狂させるカリスマ経営者が理想のように思われている気がします。

 

日根野:そうだね。メディア受けするからね。
でも、そういうカリスマ性が社長に求められるものかというと、そうではないという意見もあるんだ。

 

ほたる:実際、孫さんみたいに目立つ社長さんばかりじゃないですもんね。

 

経営者にはカリスマ性が必要なわけではない

日根野:『ビジョナリー カンパニー』(ジム・コリンズ)という本、知ってるかな?
1994年に書かれた本で、日本語にも訳されているよ。

 

ほたる:えーっと、大学の授業で名前だけ聞いたことがあったような。。。

 

 

日根野:経営に関する名著として知られているよ。
実は、この本で書かれているのは、経営者にはカリスマ性が必要なわけではない、ということなんだ。

 

ビジョナリーカンパニーとは

ほたる:あの~、そもそも「ビジョナリー カンパニー」って、なんなんでしょう?

日根野:ビジョナリー カンパニーとは、「ビジョンを持っている企業、未来志向の企業、先見的な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業」のこと。

 

ほたる:要するに、とんでもなくすごい企業!ってことですね(笑)

 

日根野:具体的な企業として挙げられているのは、例えばアメリカン・エキスプレス、ジョンソン&ジョンソン、プロクター&ギャンブル、ウォルト・ディズニーなど、アクションでも紹介したことのある企業が紹介されている。

 

ほたる:ほほう。素人考えでいくと、こういったビジョナリー カンパニーには、カリスマ的な経営者がいた、だから今日の繁栄がある、って内容じゃないんですか?

 

日根野:それがむしろ逆なんだ。

ビジョナリーカンパニーは「組織」が優れている


ビジョナリー カンパニーは「組織」が優れている、というんだ。

 

ほたる:組織って、どういうことでしょうか?

 

日根野:まず大切なのは「基本理念」。
そして、その基本理念を従業員の意識や、「具体的な仕組み」に落としこんだもの。
これが組織だ。

 

ほたる:そういたものを作るのが社長の仕事であり、社長が会社にもたらすものである、ということですか。

 

日根野:おっ!察しがいいね。
正確にいうと、「作る」のではない、作ろうとして作れるものではない。社長(やその他の中核的なメンバー)が、内側を見つめることによって「見つけ出す」ものなんだ。

 

ほたる:なんとなく思いついた、取って付けたようなものではなく、社長が自分の人生経験やそこから形成された価値観を見つめることによって、自然と導き出されるもの、というイメージでしょうか。

 

日根野:そう。これは、社長が会社にもたらす、最も大切なもののひとつと言える。

 

会社の「基本理念」とは?

ほたる:言葉にこだわるようですけど、それじゃあ会社の「基本理念」って、なんなんでしょうか?

 

日根野:基本理念は、基本的価値観と目的を合わせたもの。

基本理念 = 基本的価値観 + 目的

基本的価値観=組織にとって不可欠で不変の主義。いくつかの一般的な指導原理からなり、文化や経営手法と混同してはならず、利益の追求や目先の事情のために曲げてはならない。

目 的  =単なるカネ儲けを超えた会社の根本的な存在理由。地平線の上に永遠に輝き続ける道しるべとなる星であり、個々の目標や事業戦略と混同してはならない。

 

 

ほたる:なにやら経営学のようになってきました。

 

日根野:なんてったって、社長は「経営者」だからね。

 

ほたる:「基本理念」を見つけ出して、これをずっと守り続けている企業って、生き方としてかっこいいとは思うんですけど、厳しい競争のなかで勝ち残っていけるんでしょうか?

 

日根野:社長に求められるのは、基本理念に反するような経営方針、経営手法、目標はダメだ、変更しなければならない、ということ。
けれど、ジム・コリンズは、こうも言っている。
基本理念だけは変えてはならない。しかし、基本理念以外は、聖域なく変えてよい。

 

ほたる:なるほど。。。
人口動態や技術革新などによって外部環境はどんどん変化していくなかで、生き残っていくためならば、それに合わせて変化していってよい。というか進歩していかなければならない。
基本理念に反しさえしなければ。
ということですね。

 

会社は「進歩」しなければならない

日根野:そう。もう1つのキーワードが「進歩」なんだ。
会社は進歩しなければならない。そして、それはやはり「具体的な仕組み」として会社に埋め込まれなければならないんだ。

 

ほたる:確かにカリスマ経営者が必要ではなさそうですね。
むしろどちらかというと、地味というか、修行僧のように自分を深く見つめ直して「基本理念」を発見し、次は建築家のように、基本理念を守りつつ進歩していける具体的な仕組みを組織のなかに埋め込んでいく。
これが大事なんだ、ということですね。

 

日根野:社長が会社にもたらすものだ。

 

ほたる:なんかすごく地味~~~
でも、アクションラーニングっぽい(笑)
長期投資家が共感できる!

 

日根野:カリスマ経営者の存在は、とても華々しくて、メディアにも受けが良い。
そして会社は実際に大きく発展する。
でも、そのカリスマ経営者が引退した後、どうなるだろう?

 

ほたる:そのカリスマ経営者が、実はその裏で地道に「基本理念」を見つけ、進歩を促す仕組みを組織に埋め込んでいれば、カリスマ経営者がいなくなった後も、会社は発展する!
でも、それができていなければ、会社は発展しない!

 

社長の役割

日根野:つまり、社長が会社にもたらさなければならないものは・・・

基本理念を維持しながら、進歩を促すこと。
そして、その具体的な仕組みを整えること。

カリスマとして目立つことが悪いことではないけれど、それが社長の本来の役割ではない、ということだね。

 

ほたる:社長って、大変そうですね。
基本理念を見つけるとか、進歩し続けるとか、そういう仕組みを作るとか。
どれもすごく難しそうです。

 

日根野:社長って、大変なんだよ(笑)

 

ほたる:進歩するのって、実際にはすごく大変ですよね。
今までと同じ仕事を、今までと同じやり方で続けたい、というのが人間だと思うのです。

 

日根野:そういう意味では、ビジョナリーカンパニーの従業員は大変なんだ(笑)
基本理念を維持したり、進歩を促す具体的な方法として次のものが挙げられている。

1.社運を賭けた大胆な目標を設定すること(進歩を促す)

2.まるで宗教のように基本理念を尊重する文化を構築する(基本理念を維持する)

3.大量の行動を起こし、うまくいったものを残す(進歩を促す)

4.生え抜きの人材を経営陣に登用し、基本理念に忠実な者だけが経営幹部になれるようにする(基本理念を維持する)

5.決して現状に満足しない(進歩を促す)

 


ほたる:うわ~、理想的だけど、従業員は、やっぱり大変!

 

日根野:そこのところを上手く仕組みにしてくのが社長の仕事。
本当に難しいね。

 

ほたる:私もその本、読んでみようかな。

 

日根野:分厚いけれど、株式投資をしている人ならお馴染みのアメリカ企業が、具体例をまじえて紹介されているので、とてもおもしろいよ。
ちなみに続編も3冊出ているよ。
『ビジョナリー・カンパニー2 - 飛躍の法則』
『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』
『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』
経営に関心がある人は、ぜひ読んでみましょう!

 




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