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USEN-NEXT HOLDINGS【9418】 ダイナミックに変容し、安定事業・成長事業のポートフォリオで戦略展開


今回はUSEN-NEXT HOLDINGS【9418】に訪問してきました。

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(新本社エントランス)

2017年12月にU-NEXTとUSENの経営統合により誕生した持株会社USEN-NEXT HOLDINGS。売上規模が大きく、かつ企業形態が大きく変わったUSEN-NEXTグループについてレポートしたいと思います。

USEN-NEXT HOLDINGSの本社は、2018年7月9日に東京都品川区上大崎三丁目1番1号 目黒セントラルスクエアに移転となりましたが、訪問した時はまだ北青山にあり、そちらでお話を伺いました。

1.大阪有線放送社が起源

ご存じの方も多いと思いますがUSEN-NEXT HOLDINGSは、現社長 宇野康秀さんの父親である宇野元忠さんが、1961年に大阪市で始めた「大阪有線放送社」(以下、大阪有線)が起源です。大阪有線が事業を始めた当時は、飲食店にカラオケ設備はまだありませんでした。流しの歌手がギターを手に店を回って持ち歌を歌ったり、客のリクエストに応えたりということが行われていた時代です。

大阪有線は、契約先の店舗ごとに文字通り同軸ケーブルを敷設し、音響設備を設置して音楽を提供しました。複数のチャンネルで多様なジャンルの音楽が選べる有線放送。店のスタイルに合った音楽を流せることと、電話で好きな曲をリクエストして放送してもらうこともできたので、戦後の高度経済成長の波にも乗ってバーやスナックなどの料飲店を中心に広がって行き、大阪有線は大きなシェアを持つ全国規模の会社となりました。有線放送の普及により、有線リクエストから火の付いたヒット曲というのも誕生しました。

大阪有線が大きなシェアをとれた背景には、時代の波に乗ったということの他にも、申込みから音楽放送開始までを短期間で行うスピード工事がありました。社員の仕事が早いのはもちろんですが、スピードを優先するあまり、電力会社や電電公社(現 東西NTT)に無許可での電柱使用もありました。スピード重視のあまり無許可で敷設したケーブルは、問題となる一方で既成事実となり、追随するライバル企業の参入障壁ともなりました。

その後、1998年に元忠さんが病に倒れ、急逝されたこともあり、自ら創業した株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)の社長だった宇野康秀さん(元忠さんの次男)が経営を引き継ぎました。

康秀さんは、当時あった大阪有線の大きな有利子負債の返済に追われる一方、電柱問題の解決に当たりました。当時は「できっこない」と思われていた電柱使用の正常化ですが、1本1本調べるというような地道な努力と交渉を重ね、2000年3月には各電力会社やNTTなどと過去分も含めた清算を完了させました。

会社経営を引き継いだ最初の重要案件が、多額の借金返済と各方面との関係正常化。マイナスからゼロ、さらにプラスに引き上げる仕事というのは、さぞかし大変だったろうと思います。

2. ダイナミックに変容するUSEN-NEXTグループ

関係正常化ができた2000年頃、世の中はブロードバンドの時代を迎えていました。このタイミングで社名を「株式会社有線ブロードネットワークス」に変更(2000年4月)。7月には株式会社ユーズコミュニケーションズ(現アルテリア・ネットワークス株式会社)を設立、第1種電気通信事業許可を取得し、2001年3月には商用として世界で初めて光ファイバーによるブロードバンド通信サービスを開始し、反攻に転じます。そして2001年4月にはナスダックジャパン(現JASDAQ)に上場を果たしました。

このように短期間での復活が可能だったのは、大胆な経営方針とともに、大阪有線時代から培った強力な営業力と機動的な工事部隊(フィールドエンジニア)の力によるところも大きいと思います。

上場後は、安定した収益源となる音楽配信事業や光回線事業に加えて、映像配信などのコンテンツ事業、業務用システムを事業化すべく、頻繁な企業の買収、譲渡、分割等を行いました。企業の変容が激しく、紹介しきれないので下記に主なものだけを載せます。

2004年12月      映画制作・配給の株式会社ギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ株式会社)を連結子会社化

2005年3月       「株式会社USEN」(以下、USEN)に社名変更

2005年4月       無料ブロードバンド放送サービス(広告収入型)「GyaO」開始

2006年10月      株式会社アルメックスを完全子会社化

2007年6月       テレビ向け動画配信サービス「ギャオ ネクスト」(現「U-NEXT」)開始

この後、2008年に起きたリーマンショックの影響でGyaOなどの映像配信事業が赤字となり、またインテリジェンスを子会社化するタイミングとも相まって、のれん償却も膨らみ、USENは2008年8月期、2009年8月期の2期連続で純損失500億円以上という、大きな赤字を計上してしまいます。

この結果、2009年にGyaOやギャガ・コミュニケーションズ、2010年にインテリジェンスを売却。U-NEXT事業は、売却先が見つからなかったことと将来性を信じていたことから、2010年12月に会社分割で株式会社U-NEXTに事業を引き継いだ上で、同社の全株式を宇野康秀さんが個人で買い取り、USENから分離することとなりました。

分離後のU-NEXTは、光回線やMVNOを扱う回線事業と有料映像配信事業で黒字化を達成して、2014年12月にマザーズ上場を果たしました(その後2015年12月に東証1部に指定替え)。

一方アルメックスは、USENの子会社として、レジャーホテルや病院の自動精算システムなど提供する業務用システムの会社で、音楽配信事業とのクロスセル効果もあり、手堅い業績を残し、グループの利益基盤となっていきました。

このようにUSEN-NEXTグループは、赤字部門の分離と残った事業で業績を立て直しつつ、分離した赤字部門が独立企業として業績を上げ、IPOを果たすという復活を遂げたのです。

さらにU-NEXTのIPOから3年後の2017年12月には、U-NEXTが存続会社、USENが消滅会社となる経営統合が行われ、株式会社USEN-NEXT HOLDINGSに商号変更するとともに、子会社として新設分割した株式会社U-NEXTと株式会社USENが誕生したのです。

ここまで、大阪有線を引き継いでから20年。500億円の損失からは、たったの10年です!

3.安定収益事業と高成長事業

経営統合によって、旧U-NEXTと旧USEN事業の整理が行われ、事業セグメントも「店舗サービス」「通信」「業務用システム」「コンテンツ配信」「エネルギー」「メディア」の6事業になりました。

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(2018年8月期 第1四半期 決算説明資料より)

これらの事業は安定的に収益を上げ続ける事業と、将来性の見込める高成長事業の組み合わせとなっています。

店舗サービス事業の一つである音楽配信は、現在シェア80%。安定した収益を上げ続けています。さらには第2位で10%のシェアを持つ株式会社キャンシステムを完全子会社化する予定です(公正取引委員会の承認待ち)。

ここまで高シェアだと成長余地が無いようにも思えますが、実は日本国内でBGM等を流している店舗は約200万店。一方で音楽著作権料を払っている店舗100万店足らず。つまり残り約100万店舗は、著作権の許諾を得ていない、違法状態になっているということでした。

1999年の著作権法改正(附則14条の廃止)により、免除されていた一部の業務での音楽利用も支払い義務が発生することになり、多くの店舗で著作権支払いが必要になりました。USEN等の放送事業者は、日本音楽著作権協会(JASRAC)等に著作権料を納めているので、USENと契約した店舗は合法に音楽を流していることになります。しかし自分で購入したCDで音楽を流している店舗は、個別に著作権料の支払いが必要になりますが、管理の手間もあり支払いがされていない店舗も多く存在します。JASRACはこれら店舗からの徴収に力を入れているようです。

店舗以外でも一般企業のオフィスや工場において、働く環境改善の一つとしてBGM導入の流れがあり、音楽配信のマーケットはまだまだ余地があるようです。

また、音楽配信を受けている店舗サービス事業の顧客は、店舗向けIoTサービスなどの多くの商材をもつUSEN-NEXTグループにとって、クロスセルのターゲットとしても有望です。

一方、高成長事業には映像配信事業があります。「U-NEXT」ブランドで提供されている、オンラインでの映画、ドラマ、アニメ等映像コンテンツの提供サービスです。

大手と言われる映像配信サービスはU-NEXTの他に、NetflixやAmazon(Amazon Prime Video)、Hulu、dTVなどであり、その他にも枚挙にいとまがないほど映像配信サービスがあります。それだけこのマーケットに各社が将来性を見込んでいる証左ともいえます。

このような厳しい競争の中でU-NEXTは、12万本という豊富な映像コンテンツと、新作映画の早期レンタルリリースなどで顧客を獲得しています。また大手では唯一アダルトコンテンツがあります。こういった市場の成長期において、アダルトコンテンツを持つサービスは、解約率を低く抑えられるという効果もあるようです。

いずれにしても激しい競争の中で、コンテンツ獲得のための投資と会員獲得のための販促費は高額にならざるを得ません。

これらの資金・コストを支えるのが、先の音楽配信事業であり、また収益を確保しながら成長性も見込める業務用システム事業です。

アルメックスが担当する業務用システム事業は、ホテルや病院、ゴルフ場などに受付や精算の自動化機械を提供しています。ホテルなどの自動受付機・精算機は、店舗の人手不足解消や客と店員の対面機会を減らす効果だけでなく、最近は機械の多言語対応により、外国人客の取り込みにも寄与しています。

これらの機械は、メンテナンスや新型機械への入れ替え需要などのランニング収益もあり、安定した売上が見込めます。

これまで見てきた事業は、いずれのも景気の影響は受けにくく、概ねディフェンシブな事業かと思います。一方で、将来を見据えた過当競争のフィールドで戦うコンテンツ配信事業もあり、将来さらなる成長ができるかどうかは予測が難しそうです。

音楽配信や業務用システムで安定収益を確保し、成長事業のコンテンツ配信へ投資を積極的に行っているUSEN-NEXTグループ。今後、見込み通りにコンテンツ配信事業で収益が一層上がるようになれば、光回線などの通信事業との相乗効果もさらに期待できるようになるでしょう。

インタビュー後記

USEN-NEXT HOLDINGSが手がける事業範囲は広く、商材も多いため、ここでは代表的なものだけを取り上げました。

多くの方に社名や代表者を知られた会社ですが、今まで見てきたように企業体の変容が激しく、一般の方は事業内容を把握しにくいかもしれません。

そんな多様で変容するUSEN-NEXT HOLDINGSという企業のエッセンスは何か、と言えば、トップの大胆な経営舵取りもさることながら、その舵取りに素早く呼応する「社員の力」ではないかと感じました。営業も、フィールドエンジニアも、開発も。これからの成長事業においても、存分に社員の力を発揮してもらいたいと思います。

以上

※当コンテンツは当社がアクションラーニング会員及びそれ以外の個人投資家に向けて、個別企業を見た印象を記事にしたものです。

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