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中本パックス【7811】食品関連を中心に全天候型経営を目指す成長企業


nakamoto packs.png (236 KB)今回は、グラビア印刷や印刷物へのラミネート加工、コーティング加工などを行う中本パックス【7811】のIR部門を訪問してきました。

中本パックスの本社所在地は大阪市天王寺区空堀町2-8なのですが、IR部門は東京の拠点(東京都千代田区内神田3-6-2 アーバンネット神田ビル8F)にあるので、今回は東京の拠点にお伺いしました。

JR神田駅西口から徒歩1分の便利な場所にあります。近くには飲食店も多く、会社帰りに一杯という会社員がたくさん見かけられます。

 

ちなみに大阪の本社がある場所は、JR環状線玉造駅から徒歩8分の場所にあります。真田幸村ゆかりの名所・旧跡が数多くあるエリアです。

中本パックスは、このような周辺環境で事業を行っています。

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1. 戦時中に台湾で創業した事業から始まり、上場企業に

中本パックスは、中本 実さんが1941年に、台湾で紙販売を目的とした商社を創業したことが始まりです。

その後、台湾から帰国した中本実さんは、1950年10月、大阪市南区(現在の大阪市中央区)に株式会社山本洋紙店を設立しました。「山本」という名前がついたのは、当時の仕入先であった山本インキ株式会社の「山本」にちなんだものだったのですが、その後山本インキが倒産したため、1951年10月に中本実さんの姓を取り、株式会社中本洋紙店に商号変更しました。

当初は印刷インキ・洋紙販売を行っていたのですが、1955年頃、転機が訪れます。大手乳業メーカーから、バターを包む紙の加工・印刷を依頼されたのです。この仕事をうまくやれたことで、洋紙販売に比べて専門性が高く、継続的に技術革新していくことが求められる紙加工・グラビア印刷事業へと、事業転換が進んでいきます。

その後、事業は順調に拡大し、関東に進出。1995年には、包装資材の加工事業を目的として、中国に子会社を設立します。

2005年には現在の子会社であるアールが行う日用品・雑貨の製造販売事業を譲り受け、さらなる事業拡大を図っています。

そして、2016年3月に東証二部に上場しました。昔から上場を目指していたそうで、その狙いは事業展開していく上での信用力向上にありました。

上場時の社長は、創業者である中本実さんの子、中本高志さんでした。26歳のときに入社してから41年後の上場です。
2017年4月、中本高志さんは代表取締役会長となり、河田淳さんが代表取締役社長に就任します。41歳と若く、活力に満ちた年齢での3代目社長就任です。河田淳さんは、中本高志さんの次女の配偶者にあたります。

その後、2017年9月には東証一部に指定されています。

中本パックスは、歴史ある企業でオーナーシップもありながら、若い社長が率いる元気な企業、という印象を持ちました。

 

2.印刷技術に強み。特に食品関連で支持されている

それでは中本パックスの事業を見ていきましょう。

中本パックスでは製品の用途別に売上高を分類しています。

(1) 食品関連、(2) IT・工業材関連、(3) 生活資材関連、(4) 医療・医薬関連、(5) 建材関連と5つの用途に分類されています。

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(2019年2月期 決算説明会資料より)

 

2019年2月期の決算説明会資料を見てみましょう。

売上高に占める割合は(1) 食品関連が69%、売上総利益に占める割合も(1) 食品関連が50%と最大になっています。

また、(1) 食品関連、(3) 生活資材関連、(4) 医療・医薬関連のように、景気の影響を受けにくいディフェンシブな用途の製品と、(2) IT・工業関連、(5) 建材関連のように景気の影響を受けやすい用途の製品とに、うまく分散していることがわかります。これが安定した業績につながっています。

 

(1) 食品関連は、加工食品、コンビニ商品、乳製品などの商品パッケージに対するグラビア印刷が中心になります。代表的な製品が、食品トレーです。

中本パックスの主要取引先のひとつにエフピコ【7947】があります。エフピコは、本社が広島にある、食品トレーや弁当・惣菜容器の最大手企業で、多様な人材を活用していることでよく知られています。エフピコが製造する食品トレー等の原料で、成形される前のフィルムに対して中本パックスが印刷をしたりラミネート加工したりします。

印刷というと、差別化が難しく価格競争になりがち、というイメージがあります。ところが、中本パックスが得意とするミニトマトやキウイなどを入れるフードパックの印刷は、印刷対象物が一般的な印刷に比べて分厚いため、そのための機械装置とノウハウが必要です。

中本パックスは、そのような印刷に適した機械装置とノウハウを有しており、競合と比べた強みとなっています。

 

食品トレー等は安定した需要があり、その分野で強みがあるため、中本パックスの業績も安定しています。長期業績推移をみると、リーマンショック時も黒字決算になっていることがわかります。

 

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(2019年2月期 決算説明会資料より)

 

なお、2019年2月期において、食品関連の売上高は232億73百万円、売上総利益は26億58百万円、売上総利益率は11.4%となっています。

 

3.IT・工業材にラミネート、コーティング加工を提供

(2) IT・工業材関連は、モバイル機器の遮光フィルム印刷や自動車の内装材のラミネート加工、半導体に関連して電子部品製造工程に使用するフィルムのコーティング加工などを行っています。

売上高に占める割合は14%、売上総利益に占める割合は22%となっています。

ラミネート加工とは、包装材料の強化や機能付加を目的としたもので、接着剤により多層複合化することをいいます。薄い膜状の機能材を何枚も重ね合わせるイメージです。

コーティング加工とは、素材表面を樹脂等の薄い皮膜で覆い、機能性を持たせることをいいます。素材表面に機能材を塗るイメージです。

中本パックスでは、これらの加工に必要な機械を、自社設計、製造、改造、設備保全するためのエンジニアリング部を設けており、他社との差別化要因となっています。

 

2019年2月期においてIT・工業材関連の売上高は47億61百万円、売上総利益は11億68百万円、売上総利益率は24.5%となっています。

 

4.生活資材、医療・医薬、建材など多様な業界に顧客あり、安定経営

(3) 生活資材関連は、主に子会社である株式会社アールが行っています。私たちにもなじみのある商品を製造販売しています。

例えば、ふとん圧縮袋です。冬に使うふとんを、夏の間はふとん圧縮袋に入れて保管します。スペース有効活用が期待できるだけでなく、防ダニなどの付加価値を持った製品もあります。そのほか、理容・美容に使うクシ、手袋や、キッチン・掃除関連用品、DIY用品など、私たちの身近な商品を取り扱います。生活資材関連の商品は、ホームセンターなどで販売しています。

2019年2月期において生活資材関連の売上高は33億67百万円、売上総利益は9億円、売上総利益率は26.7%となっており、IT・工業材関連に迫る規模となっています。

ただ、生活資材関連はIT・工業材関連と異なり、景気の好不調に影響を受けにくいことから安定した業績推移を期待できます。

 

(4) 医療・医薬関連は、多くが貼付剤用の離型フィルムです。離型フィルムとは、貼付剤(身体に貼り付ける医薬品等)が、そのパッケージ袋とくっつかないようにするために特殊なコーティングをしたフィルムのことです。あるいは、絆創膏のように身体に貼り付けて使うものは、粘着面にフィルムがあり、そのフィルムを剥がして身体に貼り付けますよね。あのフィルムが離型フィルムです。

2019年2月期において生活資材関連の売上高は13億24百万円、売上総利益は2億98百万円、売上総利益率は22.5%となっています。

 

(5) 建材関連は、主として住宅の壁紙やキッチンで使われる化粧シート、化粧フィルムなどです。住宅が新築される際や、リフォームされる際に使われます。

2019年2月期において建材関連の売上高は8億14百万円、売上総利益は1億33百万円、売上総利益率は16.4%となっています。

 

このように(3) 生活資材関連、(4) 医療・医薬関連、(5) 建材関連は、食品関連、IT・工業材関連ほどの規模ではありません。しかし、相互に関連性の薄い業界であり、それらの業界に売上が分散していることから、中本パックスの経営が安定する要因となっています。例えば、IT・工業材関連の業界と建材関連の業界は関連性が薄いため、一方が不調になっても他方はその影響を受けにくいと考えられます。

 

5.海外事業の拡大と自社ブランド製品の拡販でさらなる成長を目指す

中本パックスがさらなる成長のために注力しているのが、自社ブランド「Nブランド」の拡販と海外事業の拡大です。

Nブランドは、大阪にある研究開発拠点で新たに開発した素材を使って、食品関連、IT・工業材関連、生活資材関連、医療・医薬関連などで高付加価値にした製品です。例えば、お菓子のトレーです。従来よりも剛性を高めることで薄肉化し、省資源にするとともにコストダウンを実現しています。また、飛行機の機内食などに使われる、耐熱性に優れた容器もあります。

Nブランド製品を中長期的には年間50億円の売上に育てていく目標です。

もう1つの成長の柱が海外事業の拡大です。

既に中国に工場(4拠点)があり、現地の食品関連の印刷・加工を行ったり、自動車メーカー向けのIT・工業材関連の加工を行ったりしています。

また、アメリカのナッシュビルに営業事務所を構え、主に自動車メーカー向けに内装材加工の営業活動を行っています。タイムリーな配送ができるように倉庫も3か所設けています。アメリカでは自動車内装材だけでなく、食品包材、機能材などの分野で新規獲得を目指しています。

さらに、中国、アメリカだけでなくさらに海外事業を拡大するべく、東南アジアを中心に情報収集と現地視察を重ねているところです。

海外事業では中長期的に年間100億円の売上を目指しています。

 

中本パックスは、これらを実行していくことで、中長期目標として売上高500億円、経常利益25億円を目指しています。

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(2019年2月期 決算説明会資料より)

 

一方で、安定した経営を実現するため、食品関連を伸ばしつつも、IT・工業材関連や建材関連など他の分野をさらに伸ばすことで売上先をさらに分散させ収益バランスを整えることも同時に目指しています。

 

インタビュー後記

中本パックスは、長い社歴のなかで人材とノウハウを育ててきました。そして、若い河田社長にバトンタッチし、ますますの発展を期待できそうです。

また、食品関連を中心として、長い年月の中で築いてきた信用と東証一部上場企業であるという安心感が、事業の成長につながっていると思います。

Nブランドの育成や海外事業の拡大など、将来の成長が楽しみです。これからも応援したいと思います!

以上

 

 

※当コンテンツは当社がアクションラーニング会員及びそれ以外の個人投資家に向けて、個別企業を見た印象を記事にしたものです。

当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。

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