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オプテックスグループ【6914】 温度・光のセンシングと周辺技術で複数の世界トップシェア。職場環境と社会貢献活動を両立する


OPTEXg_honsya.jpg (64 KB)今回は、センサや画像検査装置用照明などの分野で、世界シェアNO.1製品を持つ事業会社を複数抱えるオプテックスグループ【6914】のIR部門を訪問してきました。

 

オプテックスグループの本社所在地は、滋賀県大津市雄琴5-8-12。最寄り駅は京都駅から湖西線で5駅目の「おごと温泉」です。
おごと温泉の駅から東南方面に緩やかな下り坂を歩いて10分程度。田園地帯のその先、一見、琵琶湖のほとりに浮かぶ大きな客船のようなアーチ状の建物がオプテックスグループの本社です。

正面入り口から入るとロビーまでの長いアプローチがあります。このアプローチにはオプテックスグループ製品に関する展示がされており、それを見ながら歩くうちに、これからの未来に対する期待感が高まるような気分になります。

さらに、アプローチを経てドアが開くと、高い天井と正面の大ガラスの先に琵琶湖が大きく広がっていて、その景色に驚かされます。
そんな、都会のオフィスでは絶対体験できない、窓から見える贅沢な背景の中でIRご担当者にお話を伺いました。

 

1.オプテックスグループの歴史
オプテックスグループ株式会社のスタートは、現代表取締役会長の小林徹さんをはじめ、京都のセンサメーカー出身者3名プラス1名での創業でした。

この会社の設計部門にいた小林さんは、同僚のエンジニア2名とともに京都のセンサメーカーを退社し、他社より管理部門の1名を加えて、この4人で1979年5月に滋賀県大津市で自動ドアセンサ、防犯センサの開発・販売を目的としてオプテックス株式会社を創業しました。

社名は、「Opt(光学)、Tech(技術)、X(無限)」の組み合わせで、世界に通用するブランドにする、ということから「オプテックス(OPTEX)」に決めたそうです。

また、創業の地を滋賀県大津市にしたのは、京都には古くから大きな技術系企業が多く存在するのに比べ、滋賀県では上場企業が比較的少なく、存在感を発揮できそうだということ、さらには小林さんが同志社大学の学生時代にボート部に所属していたため、琵琶湖への思い入れがあったことなどが要因になったそうです。
この琵琶湖とボートの関係は、現在も社会貢献活動の場として大きな位置を占めています。

創業翌年の1980年には、世界で初めて遠赤外線による自動ドアセンサを開発し、業界にインパクトを与えました。

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(上)自動ドア用赤外線センサ
(下)自動ドア用タッチスイッチ

それまでの自動ドアは、玄関マットに仕込まれたスイッチを踏むことでドアが開く「マットスイッチ」が主流だったので、故障が多い一方、体重の軽い子どもでは作動しないなど、多くの問題を抱えていました。

これに対してオプテックスが開発した「赤外線センサ」は故障が少ないだけでなく、ドア上部への取り付けのため美観を損なわないなど、画期的な商品でした。

この時期、オプテックスでは防犯用の赤外線センサも開発し、自動ドア用と併せて創業期の経営基盤構築に大きく貢献しました。

創業6年目の1985年には、早くもアメリカ合衆国での製品の直接販売を目的としてカリフォルニア州に海外現地法人を設立します。この後も1991年イギリス、1994年に香港、2003年に韓国とフランスというように、海外合弁会社・現地法人の設立や現地企業の買収などをアクティブに行い、グローバルなネットワークを構築しています。

国内においても積極的にM&Aを展開しています。そのための財務は、事業スタイルが開発と販売というファブレスのため、もともと流動資産の比率が高かったことに加え、1991年の株式店頭登録、2001年東証2部、2003年東証1部、子会社である2005年のオプテックス・エフエーの大証ヘラクレス(現JASDAQ)上場等によるファイナンスも活用して、2004年に人数カウントシステム開発の技研トラステム株式会社、2008年にLSI設計の株式会社ジーニック、そして2016年に公開買付によって画像処理用LED照明装置のシーシーエス株式会社などをグループ化しています。

最近でも、2018年6月にソフト開発会社の株式会社スリーエースを完全子会社化するなど、以前より内外問わずM&Aを活用している経営スタイルです。
(なお、オプテックス・エフエーは2017年にオプテックスの完全子会社となったことで、JASDAQ上場廃止となっています)

持株会社制への移行にともない2017年1月にオプテックス株式会社から商号変更したオプテックスグループ株式会社は、創業40周年の本年(2019年)、今や国内11社、海外23社のグループ会社を傘下に持つグローバル企業に成長。この間、一度も赤字を出すこと無く経営を行っています。

 

2.トップシェア製品を持つSS事業、FA事業、MVL事業
それでは、オプテックスグループの事業を見ていきましょう。
2017年12月決算の有価証券報告書によると事業セグメントは、SS事業、FA事業、MVL事業です(2018年12月決算からは、EMS事業を加えた4区分に変更されています)。

 

SS事業というのはSensing Solutionのことで、事業会社であるオプテックスが担当しています。内容は祖業でもある自動ドアセンサ、防犯センサ等の開発・販売事業です。この事業の売上高は211億円で、営業利益は30億円です(2017年12月決算。以下同じ)。
SS事業の中でも、遠赤外線自動ドアセンサは、冒頭に述べたように世界初の開発・販売であり、その後の技術改良を重ねていることで、世界シェアトップを取っています。

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屋外型防犯センサ SLシリーズ

また、屋外用の防犯センサ(侵入検知センサ)でも、世界シェアトップです。

温度変化を検知し、電気信号に変える赤外線センサの原理上、昼夜や天候によって気温変化が大きい屋外型は安定したセンシングが難しく、また犬猫などの動物の侵入でセンサが働いてしまうなど「ヒト」だけを検知するのは難しいのですが、この分野でオプテックスの技術は非常にすぐれていて、警備保障会社などでオプテックス製品が採用されています。

犬猫などの動物の侵入でセンサが働いてしまうと、警備保障会社は不要な出動をすることになり、コストがかさんでしまいます。センサが優れていると、警備会社は不要な出動を無くすことができるというメリットがあります。

海外では特に、テロ対策としての重要施設(発電所やデータセンタなど)や、移民流入などによる治安悪化を恐れる一般家庭で警備保障会社と契約するニーズが増えており、オプテックス製品の売り上げに繋がっています。

さらには「ヒト」に対するセンシング技術を発展させ、カウントシステムも開発しています。つまり会場への入場者数や、クルマの駐車台数などをセンサでカウントする仕組みをシステムとして販売しています。

 

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(上)文字認識画像センサMVS-OCR2
(下)変位センサCDX

FA事業はFactory Automationのことで、オプテックス・エフエーが主に担っています。

文字通り工場での生産工程の自動化、省力化に資するセンサを提供しています。
この事業分野ではオムロン【6645】キーエンス【6861】など、業界のジャイアントが存在していますが、一口に「センサ」と言っても、多種多様でありこの紙面では書ききれないほどの種類があります。

オプテックス・エフエーの主力センサとしては、主に半導体、電気・電子部品業界向けの「変位センサ」、主に医薬品・食品・化粧品業界向けの「画像センサ」、物流業界向けの「光電センサ」などであり、売上高73億円、営業利益9億円です。

変位センサは赤外線を利用し、ミリ以下の単位で形状の変化を感知します。たとえばスマートフォン本体の外装ケースのゆがみや、電子部品の基板の反りなど検出します。
また検査対象をカメラなどで撮像し、それを分析して検出する画像センサの中でも「文字認識画像センサ」では、世界シェアトップです。

SS事業の主なセンシング対象は「ヒト」が中心であるのに対し、FA事業でのセンシング対象は、主に工場ラインで流れる「モノ」であるということで、それぞれの事業の特長が良くわかります。

 

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画像検査用LED照明
(右上)LDR2各種
(右下)LFV3各種

MVL事業は、Machine Vision Lightingのことで、画像センサに不可欠な高品質な検査用LED照明の開発・販売です。この事業は主にシーシーエスが担っており、売上高90億円、営業利益11億円です。

メーカーの生産ラインでは必ず検査のプロセスがあり、撮像した画像で良品と不良品を判別する方式も多く採られています。この画像センサによる検査装置で使われるLED照明です。

検査対象物は立体物であることが多く、陰もできやすく高速でラインが進む環境の中で、異物や文字のかすれなどの不良品を検出するためには、その正しい判別のための適切な照明が必要です。
この画像検査用LED照明も世界シェアトップを取っています。

画像装置用の照明は以前からオプテックス・エフエーも開発・販売しており、JASDAQ上場のシーシーエスは競合会社でした。それが前述のとおり2016年に公開買付によってオプテックスグループの連結子会社となりました。現在は100%子会社となり上場廃止となっているシーシーエスですが、FA分野でのオプテックス・エフエーとのシナジーの他に、内外の画像処理装置メーカーへの供給など、グループ外の売上も大きい事業です。

最近では京都国立近代美術館をはじめ、多くの美術館・博物館で、展示物の照明にシーシーエスのLED照明が採用されるなど、新しい分野も伸長しています。

 

2018年12月期決算からセグメントに加わったEMS事業についても触れておきましょう。
EMS事業は、Electronics Manufacturing Serviceで、電子機器の生産受託事業です。2018年4月に設立されたオプテックス・エムエフジー株式会社が担当します。SS事業のオプテックス、FA事業のオプテックス・エフエーというそれぞれの法人にあった生産関連部門を統合し、中国の自社工場や国内の各協力工場を統括します。
これにより重複の無駄を無くし、生産改善成果の共有、生産技術の開発などをすすめます。

 

3.海外の売上や今後については?
創業時より海外市場もターゲットにしてきたオプテックスグループ。内外の売上比率は国内42%に対し、海外は58%です。
特にヨーロッパでは、1989年にドイツのジックAG社と合弁の製造会社設立に始まり、各国の販売代理店網も早くから整備されたこともあり、FA事業売上の約半分、30億円はヨーロッパを中心とした海外売上です。
また、SS事業のなかでも防犯センサ関連は海外需要が旺盛で、約8割を海外が占めます。とはいえ海外は、北米を中心にまだまだ開拓・成長余地が多くあります。

事業ごとの成長見込みついては、防犯・自動ドアセンサについては、年率5%程度の売上高の成長を見込んでいます。
FA事業やMVL事業については、近年スマートフォン製造ラインでの導入が進み、売上高は2桁成長をしてきました。

今後もIoTが多くの分野で進むことと、中国を中心とした人件費高騰に対する製造ラインの省力化投資で、やはり2桁程度の成長を見込めると考えています。
オプテックスグループ全体としては、今後も年率10%程度の売上高の成長を見込んでいます。
また成長を支えるための研究開発投資も売上比7%~8%を継続していくということでした。

どの事業についても「ニッチ」の中で「トップシェア」を取って行く、という戦略は一貫して変わらず、必要なM&A投資や研究開発投資は、積極的に行っていくという姿勢です。

 

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オプテックスグループ本社全景

4.湖岸のユニークな建物と立地を活かした社会貢献

琵琶湖のほとりに建つオプテックスグループの本社は、2004年に建てられたものです。設計・施工は竹中工務店【非上場】です。

この「WESTWING」と名付けられた本社ビルは2004年の「ニューオフィス推進賞<近畿経済産業局長賞>」を受賞しています。
受賞理由には「湖と共生するアメニティ豊かな快適オフィス」とあります。開発をコアコンピタンスとする会社において、まさに創造性が発揮されるオフィスではないだろうか、と感じました。

この素晴らしい本社の環境は、社員や取引先だけに提供されているのではなく、琵琶湖環境体験学習の場として地域社会にも提供されています。
子会社のオーパルオプテックスが提供する体験学習の内容としては、カヌー、ドラゴンボート、いかだ作りなどの「スポーツ体験学習」、湖畔の生き物、水環境調べやプランクトン観察、ヨシ紙を使った笛づくりなどの「水環境体験学習」などのプログラムがあります。

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ロビーの大きなガラス壁面から見る琵琶湖

また小・中学校の校外学習や企業研修の場としても提供されており、今までに16万人以上の方々に利用されています。

さらには、スポーツ支援としてカヌーチームを持っており、2018年度は、チームから8名もの日本代表選手が選出されています。

 

日本では東京や大阪などに本社を持つ会社は多くあります。確かに都会のオフィスは便利かもしれませんが、オプテックスグループの本社ロビーに入ると、働く人にとっての便利を超えた別のものがあることを実感させてくれます。

「働き方改革」が声高に叫ばれる現在なればこそ、社員のみならず地域と一体になった本社環境の活用を以前から考えている経営に、とても感心しました。

 

 

インタビュー後記
滋賀県を選んだ創業、ニッチトップを目指す経営、地域貢献など、とても個性的なオプテックスグループですが、創業時のエピソードをもう一つ。
4人の創業者は、自分たちの親類縁者はオプテックスに入社させない、というルールを決めたそうです。変な忖度が働くのを嫌い、実力で世界に立ち向かって行く企業にしよう、という意思の表れではないでしょうか。
オプテックスグループの経営哲学を継続しつつ、今後も成長し続けて行くことを期待したいと思います。

以上

※当コンテンツは当社がアクションラーニング会員及びそれ以外の個人投資家に向けて、個別企業を見た印象を記事にしたものです。
当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。
このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。

 

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