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【6482】ユーシン精機 赤字知らずの射出成形品取出メーカー!


会社訪問第7弾は、ユーシン精機(6482)です。

前日から台風21号が近畿地方あたりを通っており、会社訪問は難しいかもしれないと思いましたが、訪問日の朝までには近畿地方を通過してくれたため、会社訪問できました。
場所は京都市南区久世殿城町にある本社工場です。2016年12月に完成したばかりで、ピカピカでした。

本社工場の外観
本社工場の外観
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          本社工場の入り口          

 

今回は、小谷眞由美社長に直接お話をお聞きすることができました。

1. 小谷進さんが1971年に創業

 ユーシン精機を創業したのは小谷進さんです。1971年に京阪電鉄七条駅、鴨川のすぐ近くの京都市東山区一橋野本町という場所で個人事業として始められました。その2年後に、株式会社ユーシン精機として法人になりました。

 小谷進さんは、現社長である小谷眞由美さんの夫になります。ちょうどユーシン精機を創業されたころにご結婚されたそうです。創業当初は、今のようにプラスチック射出成形品取出ロボットを事業としていたわけではなく、製造現場における自動化機械の設計・製造をされていたそうです。

 あるとき射出成形機のメーカーから、その会社向けの特注の射出成形品取出ロボットの設計・製造を依頼され、試行錯誤の末に製品が完成したそうです。その納めたロボットが好評で、取引が徐々に拡大し、射出成形品取出ロボットのメーカーになっていったそうです。

 残念ながら小谷進さんは2002年に59歳の若さで他界され、その後に妻の小谷眞由美さんが社長に就任されました。

 小谷眞由美さんは、創業時から会社経営に携わられており、研究開発以外はすべて経験してこられたということもあり、小谷眞由美さんが社長に就かれた後も業績は拡大していきました。

2.社名の由来は「信用」が「有る」会社になりたい

 「ユーシン精機」という社名には、いろいろな思いが込められているそうです。なかでも、小谷眞由美社長(以下、「小谷社長」といいます。)が最も強調されるのは、創業時に「信用」が「有る」会社になりたい、人から信用される会社になりたい、という思いを込めて「ユーシン精機」という社名にされたそうです(他にも「優秀に進みたい」という想いも込められているとのこと)。小谷進さん、小谷眞由美さんお二人の誠実なお人柄と、事業に対する真摯な姿勢が伝わってくる社名ですね。

 創業者の小谷進さんは、製造現場で働く人を非人間的な作業から解放したいとの思いから「できない、無理だ、は出発点」と言って、省力化機械の開発にあたっていたそうです。また、経費の使い方もとても厳しい方で、交際費はほとんど使わない、タクシーも使わない。借入れもできるだけ行わない。決算は公正に行い、公明正大を旨とするという考え方だったそうです。

3.上場。従業員が会社に誇りを持てるように!

 小谷眞由美社長は、とにかく黒字にこだわる経営者です。創業者の小谷進さんも同様だったそうですが、非常に強い意思で「黒字経営」を行っています。

 そのことがヒシヒシと伝わってくるのが、小谷社長の手帳です。

 

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小谷社長の手帳(私も愛用している高橋書店の手帳でした) 

 

 小谷社長の手帳には、法人になってから以降のすべての期の売上等の情報が書かれています。売上の変動はありますが、常に黒字です。毎年手帳を買い換えられるごとに、この表を手帳に記入しているのだと思います。小谷社長の黒字に対するこだわりが感じられるとともに、会社経営に真摯に向き合う姿勢が強く感じられる手帳です。

 株式の公開については、当時、会社経営は順調で資金に困るわけでもありませんでした。しかし、公正な会計処理を行い、毎年きっちりと利益を出せている、ということを広く社会に証明したかった。またそのことで、従業員にも自社にプライドを感じてほしかった、そういう想いで上場されたそうです。

 上場したのは1996年12月で、創業から25年での上場です。当初は大証二部と京都証券取引所に上場しました。また1999年12月には、大証二部から大証一部、東証二部を飛ばして一気に東証一部に上場しました。大証二部から東証一部に上場した、初めてのケースだったそうです。上場する際には従業員に株を譲り、従業員も大いに利益を得られたそうです。

 上場してからは、従業員の自社に対するプライドが向上し、売上や利益などの数字に対して上場前よりこだわりを持つようになった、と小谷社長は感じたそうです。小谷社長は毎月、全社員の前で月次の業績を発表しています。

4.射出成形品取出ロボットとは?

 射出成形品とは、プラスチックなどを原材料とし、金型を使って作られるものです。完成した射出成形品は、金型から取り出して、次の工程へと移動させる必要があります。その役割を担うのが、射出成形品取出ロボットです。射出成形品は、大きさ、形、数量などが様々なので、物によっては取出ロボット導入で大きく効率化することがあります。

 

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最新の射出成形機用取出ロボット「FRA」

 

 そもそも射出成形品取出ロボットは、なぜ必要なのでしょうか?射出成形機メーカーが、取出し機能も一緒に開発しないのでしょうか?

 射出成形の主要な工程は、①「樹脂の融解」、②「樹脂の金型への射出」、③「樹脂の冷却・成形」、④「成形品の取出し」の4工程です。このうち、④については金型を開いて成形品を取り出すのですが、金型を開いたときに落下させて取り出す成形品もあります。落下による取り出しには「ロボット」と呼ばれるような高度な機械は必要ありません。

 一方、複数の種類の成形品を一つの金型で作り、それを適切に仕分ける場合や、大型成形品等で、できたばかりの成形品を適切な位置(コンベアなど)に置かなくてはいけない場合などは、人の腕や手の機能に似た動きを実現する機械が必要です。成形品を掴んで、タテ・ヨコ・ナナメ(正確にはX・Y・Zの3軸)の動きをして、適切な位置で成形品を離す機械。これはもう「マテハン」(マテリアル・ハンドリング)と言われる技術であり、射出成形機メーカーの得意分野ではないのです。

 小谷進さんが自動化機械の設計・製造を始めて間もない頃に、射出成形機メーカーが依頼してきたのも、そういう事情だと思われます。

 このような取出ロボットがない時代は、プラスチック工場で働く人たちが取出しを行っていました。

人間の手や腕は非常に優れていますから、大抵の作業をこなします。でも、その作業は機械的な動きの繰り返しです。これを先に書いたようにユーシン精機は「非人間的な作業から解放したい」という思いで「射出成形品取出ロボット」を開発し、労働者の非人間的な作業を無くしました。

 また人間の作業では、1日の作業時間に限界がありますし、疲労や集中力の途切れによって生産性も不安定になります。取出し作業をロボット化することによって、24時間同じスピードで正確無比に作業が行われることになり、プラスチック工場の経営にも貢献するというわけです。

 ユーシン精機は、この射出成形品取出ロボットを販売するほか、グローバルにメンテナンス体制を構築しており、故障時の対応や消耗品の取換えなども重要な収益源となっています。

5.競合は?

 競合企業としては、セーラー万年筆(7992)、スター精機(非上場。本社 愛知県)、ハーモ(非上場。本社 長野県)、ウィットマン(オーストリア)、セプロ(フランス)、ユド(韓国)、アルファ(台湾)、エイペックス(台湾)などです。

 国内ではユーシン精機が最後発で参入しており、当時の国内市場は14社での戦いだったそうです。今やその多くが廃業し、ユーシン精機が国内トップに躍り出ています。

6.ユーシン精機の強みとは? ファブレス経営

 ユーシン精機が長期にわたり黒字を出し続けられる秘訣は何でしょうか?

 経営者の事業に対する情熱、優れた従業員など、いろいろな要素があると思います。その1つに、製造や組み立ての工程、設備を自前で持たない「ファブレス経営」であることが挙げられます。ファブレス経営の企業として、例えばアップルが挙げられます。ユーシン精機もアップルと同じく、製造は外注することで事業展開を進めてきました。

 ユーシン精機は、製造業の会社ではあるものの、生産については外注しています。企画、設計、購買、そして検査は自社で行いますが、製造は自社で行いません。部品製造はもちろん、組立も協力会社の工場で行っていますが、大型製品のアセンブリについては、自社工場内で、協力会社が組立を行っています。

 一般的には、景気の変動に応じて、製造業では余剰生産能力が発生し、それが要因となって大きな赤字に陥ってしまうことがあります。ところがユーシン精機のようなファブレス経営だと、生産設備や生産人員などの固定的な費用が存在しないため、景気循環の影響によっても黒字を維持しやすくなるという特徴があります。黒字を維持できる秘訣のひとつは、このファブレス経営にあるのではないかと思います。

7.射出成形品が増加することで、ユーシン精機の市場も拡大していく!

 射出成形品は、世界的に増加していく傾向にあるそうです。身の回りを見てみると、木製だったもの(例えばお椀や踏み台)、ガラス製だったもの(例えばレンズ)、鉄製だったもの(例えば歯車や工具箱)で、少なくない種類がプラスチック製に移行しています。プラスチックだと製造工程が少ないため、効率的な生産ができそうです。また、従来は人手によって射出成形品を取り出していた製造現場も、働き方改革、工場自動化の流れの中で、今まで以上に人手からロボットに置き換わっていくというトレンドにあります。

 このようなことから長期的にみれば、グローバルに射出成形品は増加していくと考えられ、そうすると射出成形機メーカーの売上が拡大し、それに伴ってユーシン精機のような射出成形品取り出しメーカーの売上も拡大していくと予想できます。

 ユーシン精機は、アメリカ、韓国、中国、タイ、イギリスなどに販売子会社を有しており、海外売上割合は約60%にもなります。世界的な需要の拡大を受けて、ますます業績が拡大していくことを期待できると思います。

インタビュー後記

 ユーシン(有信)という名前の通り、信頼できる、真面目な会社だな、という印象を強く持ちました。

 冒頭に書きましたが、本社工場を2016年12月に竣工させましたが、無借金経営を継続し、自己資本比率も85%と高レベルを維持しています。

 このような財務の背景には、経営が苦しいときもリストラを行わずに、社員一丸となって危機を乗り越えてきたという歴史があります。そのような点から「ユーシン(有信)」という社名は、対外のみならず、社員にも向けられているのだと思いました。

 小谷社長の話からだけでなく様々な場面で、信頼できる、真面目な会社だな、という印象を持ちました。

 例えば、会社の敷地の入り口に立っている守衛さんが、私に対して接してくれる時の親切な立ち居振る舞い。小谷社長とIR担当者の方が応接室に入ってこられた際、従業員よりも先に小谷社長が冷蔵庫に手を伸ばし、私にコーヒーを差し出してくださったこと。工場(検査現場)における、従業員の方たちの検査姿勢。さまざまな点で、その真面目さを感じました。

 堅実経営であることから、急激な業績拡大は無いかもしれませんが、着実に信用を積み重ねて、ますます事業が発展するイメージが湧く企業でした。さらなる事業展開を楽しみにして応援したいと思います!

以上

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