オカダアイヨン【6294】ユーザーの声を集めて建物解体作業を進化させる
今回は、建物の解体現場で使用する各種油圧アタッチメントを製造販売しているオカダアイヨン【6294】のIR部門を訪問してきました。
オカダアイヨンの本社は、大阪府大阪市港区海岸通4-1-18です。
地下鉄中央線大阪港駅から南東方向に徒歩18分。往復するといい運動になります。
オカダアイヨン本社周辺の道路は幅が広く、阪神高速道路16号大阪港線天保山出入口が近くにあるため、メーカーの大きな工場や大規模倉庫も多く、大型トラックが道路通行の主役、といった感じの街です。
1. 日本の発展に貢献したい思いで創業
オカダアイヨンは、現代表取締役社長 岡田祐司さんの祖父、岡田農夫(たつお)さんが大阪日本橋で「オカダ鑿岩機営業所」を、戦前の1938年7月に開業したのが会社の原点です。
農夫さんは、明治期から増えたコンクリートや石造りの建築物を建て替えるにあたって、効率的な方法、道具を提供して日本の発展に貢献したい、という気持ちが昂じて全くの異業種からの参入でした。
コンクリートの解体については、明治後期ごろから職人がハンマーで砕く「はつり業」が成立しました。
その後、ハンマーの大型化から次第に機械化へと移り、コンプレッサーを動力源とした空圧ブレーカ(鑿岩機)が使用されるようになっていきました。
オカダ鑿岩機営業所は、エアーコンプレッサーやブレーカメーカーの販売代理店として、それらの機械の販売とメンテナンスを行っていました。
その後、戦中戦後の混乱を経て、1960年9月に大阪市東区にオカダ鑿岩機株式会社を設立し、ブレーカをはじめとする建設機械の販売修理や組立を本格的に行うようになりました。
販売代理店でありメンテナンスを行うオカダ鑿岩機は、現場ユーザーの声にいつも耳を傾けていました。
そうした中で、解体や削岩の現場ではより大きなブレーカが必要になっているが、それに応える機械がないことに気がつきます。
当初はそのような現場の要望を、販売代理店としてメーカーに伝えましたが、一向に新しい製品は出てきません。
そこでオカダ鑿岩機が独自に大型機械を企画し、メーカーとの共同開発という形で1960年に世に出したのが大型空圧ブレーカ「IPH-400」です。
この作業者の背丈ほどもある大型ブレーカIPH-400は大ヒットし、日本各地の現場で活躍しました。
このヒットによりIPH-400の「I」と型番の「4」を合わせた「I-4」(アイヨン)は、大型空圧ブレーカの代名詞となり、現場ではブレーカはどのような機種でも「アイヨン」と呼ばれるまでになりました。
1977年には、空圧より力の強い油圧ブレーカの販売を開始しました。
油圧ブレーカによる現場作業の効率化を通じて売上も向上し、国内主要都市に営業所・サービス拠点を構えるようになりました。
そしてついには、1983年にはオカダ鑿岩機株式会社という社名も「オカダアイヨン株式会社」に変更しました。
その後、油圧ショベル用アタッチメント(油圧ショベルのアーム先端のバケットを付け替えてブレーカや破砕・切断機能を提供するもの。油圧ショベルの油圧を動力源とし、アーム操作で作業に適した様々なポジションが取れる)を次々と世に出し、事業を拡大していきます。
そして1992年には大証2部に上場してIPOを果たし、2016年には東証1部指定銘柄に変更となっています。
現在のオカダアイヨンの主力製品は空圧ブレーカから油圧アタッチメントに移行しています。
2. 圧砕機のアタッチメントで国内トップシェア
オカダアイヨンの売上高は178億66百万円、経常利益は15億60百万円、当期純利益は10億円(2019年3月決算)です。
オカダアイヨンが販売するアタッチメントは、油圧ブレーカの他にも、ビルなどのコンクリート構築物を挟んで割る「大割機(おおわりき)」、大割機が割ったコンクリートをさらに細かくする「小割機(こわりき)」、鉄骨カッターなどの、いわゆる圧砕機が解体現場で活躍しています。
特に強度が求められる大割機・鉄骨カッターの部材は鋳鋼(特殊鋼の鋳物)になっており、専門技術をもった外注先へ製造委託しています。オカダアイヨンは、ユーザーの声を聞いて新製品を開発・製造・販売し、また販売後のメンテナンスを行います。
国内におけるアタッチメントの商品シェアは、右図のとおりです。
大割機、小割機、鉄骨カッターは、オカダアイヨンと日本ニューマチック工業【非上場】・古河ロックドリル【非上場】(古河機械金属【5715】の子会社)の3社で国内シェアをほぼ占めています。
都心における再開発を見越してオカダアイヨンが2015年に開設した東京オフィス、横浜営業所は、首都圏におけるシェア拡大につながっています。
一方で、社名の由来となったブレーカは、汎用性が高いものの差別化が難しく競合メーカーとの価格競争に陥っており、国内シェアは12%程度となっています。
オカダアイヨンの製品別売上構成は、油圧ブレーカが17%、大割機、小割機、鉄骨カッターなどの圧砕機が37%となり、さらにつかみ機が3%で、油圧ショベル用アタッチメントが売上の約6割を占めます。
他は、木材を砕くチッパーなどの環境関連機器が8%、製品のメンテナンス・部品販売が14%、2017年に買収した南星の林業用機械が16%となっています。
オカダアイヨン製品の国内販売先ですが、油圧ショベルなどの建設機械メーカー向けが約60%、建機レンタル業者向けが約20%、解体業者などのユーザーへの販売が約20%とのことです。
海外での販売先は建機ディーラーやレンタル会社が中心とのことです。
3. 全国に広がるメンテナンス網が強み
オカダアイヨンが取り扱うアタッチメントは、建物解体に利用され、摩耗していきます。このため、アタッチメントの一部の取替えや定期的なメンテナンスが必要になります。万が一、解体現場でアタッチメントが破損してしまうと現場作業が止まってしまうため、迅速な取替えや修理が望まれます。
オカダアイヨンは、そのメンテナンスを自社の営業所に併設した整備工場で行っています。自社で販売からメンテナンスまで行う企業は同業他社では少なく、ユーザーの作業現場の近くにある営業所ですぐにメンテナンスができる環境にあることはユーザーにとって安心です。ここにオカダアイヨンの強みがあります。
4. 林業に使われる環境関連機器を輸入販売
オカダアイヨンでは、アメリカのモバーク社やドイツのハンメル社から輸入した環境関連機器を販売しています。
品目としては、林業で発生する間伐材や木造家屋解体時に発生する廃木材の処理で使われるチッパー、ログバスター、ウッドホグなどです。
森林の間伐を促進し災害に強い国土とするため、国は、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法に基づき、2013年から2020年までの8年間で森林整備を進めています。また、再生エネルギーとして木材チップを利用したバイオマス発電が増加する等、これらの国策の影響で環境関連機器の市場は賑わいをみせています。更に林業分野の事業領域を拡大するために日本の風土に合い小回りが利く林業機械を製造するメーカー南星グループの買収へとつながりました。
5. 南星グループを買収し林業・自社製造にも注力
オカダアイヨンが2017年に買収、子会社化したのが南星グループ(株式会社南星機械、株式会社南星ウインテック、暁機工株式会社の3社の総称。2019年4月、株式会社南星機械を存続会社として合併)です。
南星グループは林業機械やリサイクル機械の製造、販売をしています。
木材を掴むグラップル、木材をまとめて巻き上げるウインチなどの林業機械があります。
また、金属スクラップを掴み上げる機械やダム建設に使われるケーブルクレーンも作っています。
これらの製品を製造している南星グループを子会社化した理由は、自社で9割以上の製品を製造している南星グループを取り込むことで、外注先の確保、商品ラインナップの拡充、ユーザー満足度向上、市場シェア向上といったシナジー効果につながることを期待してのことです。
オカダアイヨンは、自社の営業所と南星グループの営業所が重複する地域を統合して、お互いの強みをいかした営業所づくりに力を入れています。
基幹システムを導入して経営合理化を推進しますが、全国の営業所統合が完了して効率的な営業ができるようになるには時間を要します。
営業所統合により営業品目が増えるので、お互いの製品について理解を深める研修に力を入れています。
オカダアイヨンの営業所は整備工場を併設しているため、南星グループの製品も定期的なメンテナンスや部品交換ができるようになります。この点で、他社との差別化を図っています。
南星セグメントの売上は28億87百万円、セグメント利益が1億94百万円(2019年3月期)です。
6. 北米、アジア、ヨーロッパへ海外展開を進めている
国内で製造した製品を海外でも建設機械メーカーやユーザーに販売しています。海外では油圧ブレーカが中心です。圧砕機に関しては、日本では摩耗の激しい破砕歯の整備は溶接で行いますが、海外では溶接工が少ないので、破砕歯をボルトで交換できるようにするなどの海外専用モデルを開発し販売しています。
海外の販売先としては、北米(オレゴン州にアメリカ本社)が中心です。営業員を増やし、北米市場での製品深耕が進んでいます。
アジアでは、2019年6月にタイに駐在員事務所を設置し、建て替え需要が大きい東南アジアでの販売拡大を狙っています。現地における競合会社との価格競争を避けるため、中国での事業展開は考えていないそうです。
2016年以降、欧州で現地代理店が増えたことにより売上が伸びていることから、2020年1月にオランダで現地法人を設立し欧州での営業活動推進に力を入れる予定です。
また、オカダアイヨンは海外で工場を持っていませんが、国内と同水準の製品が安価で作れるようであれば海外での工場建設も検討するそうです。ただ、国内における製品需要が旺盛であるため、海外展開を積極的に進めるよりは、国内の需要への対応を優先しています。
海外セグメントの売上は30億62百万円、セグメント利益が3億95百万円(2019年3月期)です。
7. 建物解体需要が増えるのは、まだまだこれから。成長可能性に期待。
オカダアイヨンの主力製品である油圧アタッチメントは解体現場で使用されますが、その需要はこれからも増えていく一方です。
高度経済成長期に建設され古くなった建物、道路、橋梁の建て替え需要が増えてきており、オカダアイヨンの事業拡大に追い風となっています。
その需要を取りこぼすことのないよう、工場への設備投資を積極的に進め、製品生産能力を高めています。
耐用年数が経過した建物は補修されなければ、危険な建物として解体されることになります。
こうして古くなった建物群を取り壊して、新しい街の再開発が都市部で進んでいることもオカダアイヨンにとって追い風です。
「中長期経営計画(2015年度~2020年度)」では、
連結売上高2倍、売上高伸び率年平均10%以上、業界№1の企業グループとなる目標を掲げています。
具体的には2021年3月決算で売上高200億円、経常利益20億円を目指しています。計画達成に向けて、南星グループとのシナジー効果創出、海外での営業体制確立、社員満足度向上の取り組みを進めています。
インタビュー後記
2018年度の建設機械市場は約2兆8000億円(「2018年度建設機械出荷額」:建設機械工業会統計より)という巨大市場。
その中で、売上178億円という小さな規模ながら、ユーザーの要望を製品にして、よりよい日本の国土作りに貢献しているオカダアイヨン。
南星機械をグループに加え、日本林業の再興にも尽力するオカダアイヨン。
小粒ながらキラリと光るオカダアイヨンに今後も注目していきたいと思います。
以上
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