パーク24【4666】社会インフラサービスとしての駐車場、モビリティ事業を展開する
今回は、パーク24【4666】のIR部門を訪問してきました。
パーク24の本社(グループ本社ビル)は、東京都品川区西五反田2ー20ー4にあります。
JR山手線五反田駅から徒歩2分、地下鉄都営浅草線五反田駅からは、「A2出口」から地上に出るとすぐ目の前に、本社3階エントランスへ続くエスカレータが目に入る、そんな駅近のビルです。
国道1号線と目黒川が交差する地点に面して、美しいカーブを描くガラスが印象的な本社ビルは、今年(2019年)竣工し、それまで本社のあった有楽町から5月に移転してきたばかりの、ピカピカの12階建てです。
グループ本社ビルは3階から12階がいわゆるオフィススペースですが、1階はパーク24の主力事業である時間貸駐車場「タイムズパーキング」、2階はパーク24グループの情報発信基地である「タイムズカフェ」になっています。
ここは、目黒川を見下ろしながら、一般の方も利用ができるオープンカフェです。
2階からは、タイムズパーキングの入出庫口が見えるのですが、実はこのビルの地下に合計100台もの駐車スペースが確保されているのです(タイムズパーキングの営業駐車スペースは50台。50台はタイムズカーの車庫として活用)。
この地下駐車場には「サイレントパイラー」で知られる技研製作所【6289】の耐震地下駐車場「エコパーク」が採用されています。
これにより、大容量の駐車場をビルの地下に実現することできます。
都会での駐車場不足に対するひとつの解決モデルを、パーク24グループ本社ビルは示しています。
1. 駐車禁止看板から社会インフラのサービス企業へ
パーク24は、現 代表取締役社長 西川光一さんの父親である西川清さんが1971年に設立した株式会社ニシカワ商会が起源です。
ニシカワ商会は駐車禁止看板の製造販売をしていましたが、創業間もないあるとき、西川さんは自動車1台ごとに一定時間内を100円で駐車できる機械を目にします。
これは今で言うコインパーキングの機械で、日本信号【6741】が1970年に開発したばかりの「パークロック」という製品でした。
鉄道会社が主要顧客である日本信号では、鉄道会社の各種ニーズを商品化し、納入することが主力事業でした。
一方、所有技術を活かしたシーズ先行商品であるパークロックは、これから市場を作る商品であり、日本信号はその普及に苦労していました。
そこにパークロックを知った西川清さんが大きな可能性を直感し、日本信号に交渉してニシカワ商会でパークロックの販売をすることになったのです。
これ以降、ニシカワ商会ではパークロックの販売・普及に努め、販売開始から14年後の1985年には、販売したパークロックの保守や駐車場運営管理を主な事業としてパーク二四株式会社を設立します。これが現在のパーク24の実質的な設立です。
パーク24はその後、1991年12月に24時間営業時間貸無人駐車場の「タイムズパーキング」第1号を開設します。
このタイムズ事業の開始にあたっては、3年前から自社所有の土地を使って実際に時間貸駐車場を運営し、その賃料や損益のシミュレーションを繰り返しました。
その上で土地オーナーにキチンと提案できるデータ・資料を揃えての新規事業スタートでした。
このような慎重な準備をした背景には、西川清さんの2つの想いがありました。
そのひとつは、社会インフラであるはずの駐車場の不足です。
自動車は「走る」一方で「停まる」ところも必要です。
走るための道路整備は国や自治体が整備するにもかかわらず、停まるところは民間任せ。
その結果、路上駐車が常態化して渋滞や事故も起きている。
自動車の保管場所としての駐車場とは別に、一時的な駐車場も道路と同じように社会インフラではないか。しかし圧倒的に不足している。
西川清さんは「これを何とかしたい」と強く思いました。
もう一つは経営面での想いです。
ニシカワ商会の経営はパークロックを「販売」するフロー型であり、毎年度、新しい販売先を探してきて販売する、という経営でした。
これを西川清さんは、一旦契約したら月々売上が継続して上がるようなストック型ビジネスにできないか、と日頃から考えていました。
そこでタイムズパーキングでは、土地オーナーから用地を借り上げ、時間貸し駐車場の売上はパーク24に入る、という経営形態を取りました。
バブル崩壊によって用地候補も多くなり、比較的小さな土地でも時間貸駐車場を開設できたため、24時間営業時間貸駐車場タイムズパーキングは順調に増えて行きました。
パーク24では、タイムズパーキングの拡大とともにサービスの向上にもつとめ、1993年には日本信号、NTTとの三社提携で駐車場予約システムに取り組み、2000年にはタイムズパーキングの場所と満車・空車情報の配信を開始します。
2003年にはこれを発展させ、現金・クレジットカードでの料金収受や稼働状況の把握機能なども付加したTONIC(Times Online Network & Information Center)というシステムを自社開発し、全タイムズパーキングに導入していきます。
2004年には、初めての社長交代が行われ、西川光一さんが二代目の社長に就任します。
それから間もない2006年には、改正道路交通法が施行され、違法駐車取締り手続きの多くの部分が民間委託可能となり、違法駐車取締りが実質的に厳しくなりました。それを受けて、タイムズをはじめとするコインパーキングの利用が大幅に増加するという追い風もありました。
これは言い換えれば「停める場所さえあれば、駐車違反を減らせる」ことの証明でもあり、時間貸駐車場は社会インフラであることを改めて確認できました。
また、2009年には株式会社マツダレンタカーの買収に成功し、レンタカー・カーシェアリングへの参入を果たします。
現在は社名をタイムズモビリティネットワークス(本社広島市、資本金5億円。100%子会社)に変更しており、駐車場事業に次ぐ売上のモビリティ事業を担っています。
この間、1997年に日本証券業協会に株式を店頭登録。1999年4月には東証2部に上場し、そのちょうど1年後の2000年4月には東証1部へ市場変更を行っています。
その後2011年には駐車場事業をタイムズ24株式会社に承継し、パーク24は持株会社に移行して現在に至っています。
2. 総運営台数72万台を超える国内駐車場事業
パーク24の売上高は2985億17百万円、経常利益は225億32百万円、純利益は138億51百万円(いずれも2018年10月31日決算。以下同じ)です。
これらの業績は、駐車場事業(国内)、モビリティ事業、駐車場事業(海外)の3つの事業セグメントからなり、国内外約2.1万カ所の駐車場と約137万台の駐車能力(駐車台数)、国内約5.4万台のレンタカー・カーシェア車両が担っています。
駐車場事業(国内)の売上高は1570億6百万円、セグメント利益は269億6百万円です。
国内約1.9万件のタイムズパーキングのうち、約4分の3の約1.4万件がフラップ式(駐車するとパネルが立ち上がるタイプ)の駐車場です。
残り4分の1は、1件あたりの台数が多い駐車場で設置されているゲート式になっています。
また、月極駐車場や管理受託駐車場が約1,400件あります。
これら国内駐車場の総運営台数は72万台超となり、運営台数は、毎年5%程度の増加を続けています。
駐車場事業の基本のビジネスモデルは、先にも述べたように、土地オーナーから毎月定額で土地を借り、タイムズパーキング利用者に駐車スペースを転貸するというサブリース方式を採っています。
これにより土地オーナーは、安定した駐車場収入が得られます。
パーク24と競合する会社では、時間貸駐車場の利用に応じてオーナーへの支払額が変動するレベニューシェア方式を採っているところもありますが、パーク24では全て固定額を毎月支払っています。
また、競合会社の中には、お祭りなどのイベントで駐車場が混雑するときに限って、利用料を上げるパーキングもありますが、駐車場は社会インフラであると考えるパーク24では年間を通して同じ利用料金としています。
国内の駐車場事業では、ホテルや商業施設、銀行などの施設付帯の既存駐車場を、やはりサブリースで借り受けてタイムズパーキングとして運営する「タイムズパートナーサービス」という方式も増えています。
きっかけになったのは、銀行の駐車場です。
銀行は駅前や繁華街などの一等地にあり、その近くに駐車場を備えていることが多くあります。
しかしお客様駐車場の利用時間は、銀行が開店している9時から15時の6時間だけ。
残りの18時間はスペースが空いたままになっていました。
この銀行の駐車場をタイムズパーキングにすることで、銀行は土地の賃料収入を得られるだけでなく、駐車場管理の業務からも開放されました。
もちろん駐車場が24時間営業となることで利用者の利便性も向上しています。
最近では大きな病院や市役所などの行政機関など、公共性の高い場所の駐車場にもパートナーサービスは広がっています。
3.順調に進展しているモビリティ事業
パーク24のモビリティ事業は、売上高735億5百万円、セグメント利益は68億58百万円で、過去3年平均で17%を超える売上高成長率となっています。
売上の構成としてはレンタカーが約53%、カーシェアが約40%です(残りの7%は4年の償却が経過したモビリティ車両の中古車販売やロードサービスの売上です)。
カーシェアに比べレンタカーの売上比率の方が高いですが、カーシェアは過去3年20%以上の伸びを示しており、モビリティ事業の成長を牽引しています。
パーク24では、実はかなり以前よりカーシェアリングの参入を検討していました。
というのも「駐車場事業が社会インフラのサービスなら、その先のサービスはクルマ自体のデリバリーだ」という考えを持っていたからです。
また、膨大な数のタイムズパーキングの一部を、カーシェア用に使うことができ、相乗効果が期待できるということもあります。
しかし、パーク24は駐車場管理・運営のノウハウはあるものの、クルマの整備・管理のノウハウはありません。
その中でカーシェアリングをどう実現するか、という検討を続けていたところ、2009年にカーシェア事業も手がけていたマツダレンタカーの買収が決まりました。
グループ会社となった当初はレンタカー事業を中心に行いながら、無人ステーションでのカーシェアサービス提供のテストを繰り返し、2011年に本格的にカーシェアリングに参入しました。
レンタカーとカーシェアの基本的な違いは、レンタカーが貸出時間6時間からで、店舗の営業時間内に有人で貸出し・返却が必要なのに対し、カーシェアは15分単位で、24時間いつでも無人のステーションにて貸出し・返却が可能であるという点です。
また、カーシェアでは月額会費(法人・学生を除く)が必要、ガソリン代と保険料が利用料に含まれる、などの違いもあります。
パーク24のタイムズカーシェアは、法人・個人を合わせ、現在では100万人を超える会員に利用されるようになり、シェアはダントツトップです。
トラックやワゴンを使いたいなど、特定用途の時はレンタカーが選ばれますが、一般に短時間の普段使いではカーシェア、長時間の利用ではレンタカー料金が安くなっています。
ただ、状況によっては利用者がどちらを選ぶか迷うような場面もあります。
そこでパーク24では、カーシェアとレンタカーを融合した「タイムズカー」を、2019年1月から都内のカーシェアステーションでトライアル営業を開始、同年10月から全国のレンタカー店舗で本格的に開始します。
タイムズカーでは、15分~複数日数の利用が可能、多くの車種が選べるなどの特長があり、この新しいサービスで私たちの生活がどう変わるかにも期待が膨らみます。
4.無人営業を支えるバックヤード、IT情報システム
駐車場事業とモビリティ事業の中のカーシェアで、共通するのは無人営業という点です。
利用者が自ら適切な位置にクルマを駐車し、料金を支払って退出していく。そんな運営を可能にしているのは、駐車場の保守管理や利用者とのコンタクトを受け持つバックヤードがしっかりしているからです。
これら無人営業を支えるグループ会社が、駐車場管理を行うタイムズサービスと、コンタクトセンターやロードサービスを受け持つタイムズコミュニケーション(ともに100%子会社)の2社です。
日々のメンテナンスをしっかり行っていても、クルマどうしの接触をはじめ、駐車券をなくした、紙幣が詰まった、ゴミが落ちている、領収書がでない、など多種多様の連絡がタイムズコミュニケーションに寄せられます。
これらの連絡を受けたオペレータの判断で、現場急行が必要な場合は直ちにタイムズサービスに通知され、原則、連絡から20分以内で現場となるタイムズパーキングへ係員が到着することを実施しています。
また走行中の事故や故障などについては、タイムズコミュニケーションのロードサービスが駆けつけます。
これらはサービス開始以来、直営で行っており、今後もアウトソーシングをする予定はありません。
直営だからこそ、駐車場事業、モビリティ事業との連携で、サービス品質の向上、無人営業ノウハウの向上が図れ、競争力を高められるとの考えからです。
もう一つパーク24が重視するものに「TONIC」によるITネットワークがあります。
TONICは、全国のタイムズパーキングと情報センターをオンラインで結ぶ自社開発のシステムで、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済を担うほか、駐車場の稼働状況の把握をおこないます。
さらに、カーシェア車両の燃料残量把握、走行情報などのデータも瞬時に取得します。
これにより駐車場のマーケティング情報が得られたり、より良いサービス開発に繋げたりすることができます。
また、時間貸駐車場でありながら数日間にわたる利用などの不審駐車も把握できるので、トラブルの未然対応などにも活かされています。
5.ITとガバナンス強化で今後の伸長が期待される海外駐車場事業
駐車場事業(海外)の売上高は682億90百万円、セグメント利益は▲8億79百万円です。
この赤字の主な要因は、前期(2017年10月決算)に取得した海外子会社4社の、当期のれん償却費用の約30億円が大きな要因となっています。
パーク24の特長ともいえる、事前の慎重な事業検討は海外事業においても同様で、2006年には韓国に合弁会社、台湾には支店を設立し、それぞれ400件以上のタイムズパーキングを運営するなど、10年以上前から海外進出を果たしていました。
しかし「本格的」といえる海外展開は前期からです。
2017年1月にオーストラリア、ニュージーランド、イギリス、マレーシア、シンガポールで駐車場事業を展開する「Secure Parking」(各国のグループ会社を含む)の株式を取得しました。
Secure Parkingは、全体で1,082件、380,598台の駐車場を運営しています。
また、2017年8月にはイギリスの「National Car Parks」の持株会社の株式を取得しました。
National Car Parksは、2,512件、649,429台の駐車場を運営するイギリス最大手駐車場会社です。
これらの投資額は前期1年間で400億円以上にもります。
しかしパーク24では、サービス内容充実のためにこれらの海外子会社に更なる投資をしています。
取得した海外子会社の駐車場は、空港やショッピングセンターなどの大規模な施設付帯駐車場が多く、1件あたりの駐車台数が多いのが特長です。
そのため、日本でスタンダードなフラップ型ではなく、ゲート型の駐車場が主流です。
また、駐車場設備をオーナーが保有する管理受託型駐車場も多数あります。
これらの海外駐車場にTONIC同様システムの導入を急いでいます。
駐車場の管理形態、方法が多様なので簡単ではありませんが、パーク24ではTONIC同様システムを導入することで、駐車場の空車満車情報の利用者への提供などのサービスの向上に加え、駐車場1件ごとの細かい利用データを取得することが、今後の事業展開の重要なファクターと考えているためです。
もう一つ海外事業での重要な方針が「コーポレートガバナンスの強化」です。
国が違えば、風土・習慣・法律・システムなど様々な違いがあります。
パーク24では、日本で成功したからといって、海外子会社に日本のビジネススタイルを押しつけるようなことをしません。
よって海外子会社では、現地の商習慣をよく知る現地出身者をCEOにしています。
一方でJ-SOXに適合した内部統制報告体制が必要なため、CFOなど管理部門のトップは日本人としています。
CFOはパーク24の理念を現地の経営に根付かせるという重要な役割も担います
こうして常に現地人CEOと日本人CFOが綿密なコミュニケーションを取れるようにして、パーク24の理念を活かした現地経営ができるようにしています。
海外事業は、のれん償却という大きな費用負担もあるので、できるだけ支出を減らして早期の黒字化を望む声があるのは事実です。
しかしパーク24では、会計上のちょっとした不注意が企業に大きなダメージを与えることをよく知っているので、海外事業のガバナンス体制作りには手を抜きません。
「海外事業のしっかりした土台を作る」という強い意志が、このガバナンス強化とTONICによるIT・情報システムの整備に見て取れます。
インタビュー後記
皆さんは「8月9日」は何の日かご存じですか?
この日は「駐車場(パーク)の日」で、路上駐車とそれに伴う事故を無くそう、という日です。
これはパーク24が「1年のうち、たった1日でもいいから路上駐車が引き起こす様々な社会問題について考えてほしい」という願いを込めて1998年に記念日登録したものです。
駐車場とクルマで人の移動を支え、街の活性化に繋げる、という「社会インフラサービス企業」としてのパーク24の中長期的な取り組みに、これからも注目です。
以上
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