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竹本容器(4248)「挑戦」なくして進化なし!


訪問日 2017.3.1

会社訪問第2弾は、竹本容器(4248)です。 2017年3月1日(水)に本社を訪問しました。 本社の所在地は、東京都台東区松が谷2丁目21-5です。

浅草の雷門から西に1kmほど行った、合羽橋道具街(かっぱばし=食器や業務用調理器具のお店ばかりの商店街です) の近くにあります。浅草と上野という昔からの繁華街に挟まれた場所で、 周りは住宅と商店、小規模のオフィスビルが入り混じったような環境で、 都内最古の寺である浅草寺のお膝元ということもあり、お寺も多く見かけます。

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道具街から少し入ったところにあるのが竹本容器の本社ビルです。 ビルの角に緑色の竹本容器のサイン看板もあるので、すぐ見つかります。

 近隣は今でこそびっしりと建物が建っていますが、 この辺りは昭和20年(1945年)3月の東京大空襲による爆弾・焼夷弾で一面焼き尽くされたところです (浅草寺本堂も焼失し、今の本堂は昭和33年に再建されたものです)。

竹本容器の沿革によると、創業者の竹本茂さんは東京光冠容器(昭和23年創業)で ガラス壜リサイクル事業に従事していたところ、昭和25年3月に竹本商店を興して独立し、 さらに昭和28年5月に竹本容器株式会社を設立したとあります。 いずれもこの松が谷(旧松葉町)近辺で商売を行っていたようですので、 まさに焼け野原から戦後の復興に、事業を通して貢献してきた企業の一つではないでしょうか。

 さて本社ビルに入ってみましょう。1階には来訪者受付の電話が置いてあり、 容器のサンプル商品が陳列されていました。電話で担当の方に来訪を告げると、 応接室に案内され、そこで戸田取締役に日根野のインタビューを受けていただきました。

 

戸田琢哉取締役は、もともとは金融業界の方で、日興証券(現SMBC日興証券)、 東京三菱証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)、エイチ・エス証券で働いたのち、 2012年に竹本容器の執行役員経営企画室長に就任され、その後、取締役になられています。

このため、投資家目線での質問をしたとき、こちらの意図をすぐに理解していただき、 適切な答えをいただけたので、とてもインタビューしやすかったです。

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合羽橋のショールームを案内してくださっている戸田取締役

1.社長について

竹本容器の社長は竹本笑子(えみこ)さんです。1975年8月21日生まれですので、会社訪問時点で41歳です。 これだけ若い女性社長というと、日本の上場企業ではかなり珍しいです。

どのような経歴か、と有価証券報告書を見てみると1998年7月に国際証券に入社とあります(22歳ですね)。 その前1年間は、イギリスに留学していたそうです。

その経験から英語での日常会話は十分でき、海外に対するアレルギーもないそうです。 実際に、海外の企業との商談にも自ら臨んでいます。とは言え重要な商談の場合は通訳をつけて慎重に対応しているそうです。

竹本容器は積極的にグローバル展開していますが、その背景には竹本社長に海外アレルギーが無い (というか、逆に海外に対して親近感を持っている!)ことがあるのだと思います。 これからの日本企業は、長期的に事業を拡大していくためには海外展開が必須ですから、 竹本社長のこのような経験と能力、志向はとても重要なものであると考えます。

中小企業の社長さんのなかには海外アレルギー、英語アレルギーの方がいらっしゃいますが、 そのような企業はやはり事業展開の選択肢が国内に限られてしまいます。

先にも書いたように、祖父の竹本茂さんが創業者で、当初はガラス容器(再生瓶)の販売を開始したことが始まりです。 2代目 竹本雅英さん(笑子さんの父)は、1989年から2004年まで社長をつとめました。 そして、雅英さんが54歳、笑子さんが29歳の2004年に社長交代が行われました。

竹本笑子さんは3人姉妹の真ん中で、三女は取締役の竹本えつ子さんです。

 同族経営について ~アクションラーニングの捉え方~

同族企業経営には長短あると思います。長所は、同族経営だからこそ、思い切った決断ができる、ということです。 サラリーマン社長、なかでもプロパーのサラリーマン社長だと、どうしても前例踏襲的な経営判断を行いがちだと思います。

それに比べて、同族経営の場合は、思い切った経営判断ができます。思い浮かぶのは、例えばユニ・チャーム(8113)です。 もちろん、同族経営の会社でも、前例踏襲的で保守的な経営を行っている企業もあります。 また、経営陣は同族ではなくても、大株主に創業者一族がいて、実質的に経営陣に重要な影響を与えている場合もあります。 例えば、セブンアンドアイ(3382)の伊藤家や、出光興産(5019)の出光家などです。

どの形態が良い、悪い、と一律に評価することはできません。 企業ごとに背景が異なるので、各企業に適した経営の在り方がある、という見方が大切なのだと思います。

2.プラスチック容器業界について

プラスチック容器は、金型にプラスチック樹脂を流し込むことで生産されます。 ですから、プラスチック容器の生産において金型は必需品であり、重要な役割を果たします。

プラスチック容器の業界は、金型を顧客が所有しているか(カスタムボトル)、 プラスチック容器メーカーが所有しているか(スタンダードボトル)によって、 大きくカスタムボトル市場とスタンダードボトル市場に分けられます。

カスタムボトル市場は、例えば資生堂(4911)花王(4452)ライオン(4912)などのように 1商品年間100万本以上出荷されるような商品の容器の市場です。 この市場は吉野工業所と吉田プラ工業(ともに非上場)が2強で、大きなシェアを占めています。 特に吉野工業所のシェアが大きくなっています。

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試しに、花王の商品の底面を見てみると、吉野工業所のマークが刻まれていました。 右図のマークが、花王商品のボトルの底面には刻まれています。 これを見れば、「あ、このボトルは吉野工業所が生産したのだな」ということが分かります。

 

今まで意識したことが無かったです。 みなさんも、家にある容器の底面を片っ端からチェックしてみてください。 この吉野工業所のマークをたくさん見つけると思います。

カスタムボトル市場は、その顧客の商品専用にボトル形状をデザインし、 金型代も顧客が負担します(だからこそカスタムボトルと言われる)。 金型はその顧客が所有していますので、他の企業が使用することはできません。

竹本容器はこのカスタムボトル市場では戦いません。

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一方、竹本容器が生産した容器の底には、右のマークが記載されています。

竹本容器のマークも、吉野工業所のマークに比べると数は少ないですが、ときどき見かけます。

 

竹本容器は、自社で金型を製作し、保有しています。 顧客は、竹本容器が保有する金型を利用して、自社の好みにカスタマイズした商品を発注し、購入します。 この竹本容器が保有する金型により生産した容器を「スタンダードボトル」と呼びます。

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合羽橋のショールームに展示されているスタンダードボトル

「あ、店頭でこういうデザインの容器を見たことがある!」というボトルがたくさんあります。 シャンプーのボトルのようなものだけでなく、ハンドクリームや洗顔料などが入っているようなボトルもあります。

スタンダードボトル市場は、容器メーカー(=竹本容器)が金型を保有し、 顧客が、そのスタンダードな商品をうまく組み合わせて、自社なりのボトルを生産する市場です。

容器の形状、容量、色、フタ部分などをカスタマイズできるため、 スタンダードボトルでも十分独自性のある容器を生産することができます。

スタンダードボトル市場は少しずつ伸びているそうです。 その背景には、2003年薬事法改正で中小企業でも化粧品市場に参入しやすくなっていることがあります。

スタンダードボトルの魅力は、カスタムボトルに比べ、価格が安いことです。 資金力が十分でない中小企業の参入が増えれば、スタンダードボトルの利用も増加します。

スタンダードボトルのもうひとつの魅力は、開発が早いということです。 金型がすでにあることから開発のスピードが非常に早くなります。逆に、金型から生産していると時間がかかるのですね。

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2016年12月期 第2四半期決算説明会資料

まとめるとスタンダードボトルは、「個性的なのに、安い、早い!」という特徴があるといえるでしょう。

スタンダードボトルの主な顧客は中小企業ですが、大企業でもテスト品をスタンダードボトルで使用する場合もあるそうです。 全く新しい商品の場合、スタンダードボトルでテスト販売し、売れ行きの様子を見る、ということに使われるのでしょうね。

 

3.金型について

竹本容器は、自社の強みとして、多数の金型を保有していることを強調します。 金型の多さが強みになるとは、すぐには理解しにくいところです。 さらにいうと、金型は、意匠権を取得しにくいそうで、独特な形状の金型を作っても類似品が出てきます。

にも関わらず、多数の金型を保有していることが強み、というのはどういうことでしょうか?

まずひとつは、顧客にとってボトルデザインの選択肢が多い、ということになります。

たくさんの種類の金型を保有しているということは、顧客にとってたくさんの種類の容器のなかから、 自社の商品のコンセプトに合致した容器を選択できるということです。 また、競合他社の容器との違いが際立つデザインでなければなりません。

よって、金型の種類が多い=デザインの選択肢が多い、こと自体が、竹本容器にとっては他社との差別化要因となります。 特に金型は高価なため、体力のない企業はたくさん保有することができません。

顧客にとってのもうひとつのメリットは、同じデザインの容器でも、様々なサイズのなかから選ぶことができることです。

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顧客の立場にたってみると、デザインは気に入ったけれど、容量が目的と合わない、ということがあります。

例えば、高級な商品であれば、容量は小さく、デザインは豪華な容器にして、 顧客の体感価値を引き上げたいと考えるでしょう。 逆に、安価な商品であれば、容量を大きくして、お得感を際立たせたいでしょう。

 

また、同じ商品でも、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズのようにサイズを分けたり、 極少の試供品を提供したいと考えることもあるでしょう。

顧客のこのようなニーズに応えるためには、デザインが同じだけれど、サイズが異なる金型も必要になってくるのです。 上記の写真を見ると、デザインは同じですが、容量が様々に異なる容器があることがわかります。 競合他社は例えば100ccの金型のみを製作し、他の容量の金型は製作しませんが、 竹本容器は様々なサイズの金型を製作します。このことが竹本容器の強みになります。

スタンダードボトル市場では竹本容器が最大手であり、資金力があります。 ゆえに様々な種類の金型を保有することができています。 結果として、竹本容器の高い収益力につながっていることを、決算書の利益率からうかがい知ることができます。

もっとも、金型が安くなれば、競合が金型を安価に生産できるようになり、競争が激しくなる可能性はあります。

そもそも金型を使わずに容器そのものを3Dプリンタで生産することはできないのか、という質問を良く受けるそうですが、 現状の3Dプリンタのスピードでは、まだ量産が不可能だそうです。 将来、3Dプリンタのスピードが劇的に早くなれば、とって代わられる可能性がないとは言えないとのことです。

なお、竹本容器の金型はあえて小さめの金型で、小ロット生産に適しているようにしています。成型機も小さめだそうです。

海外展開について

取締役は海外を飛び回っており、会議も電話会議で行うことがよくあるそうです。

中国での売上は、ローカル企業40%、日系企業30%、外資系企業30%です。 一方ヨーロッパではスタンダードボトルの競合会社もありますが、競合が保有している金型はせいぜい1,000型。 対する竹本容器は3,065型と3倍以上(2016年12月現在)。

生産本数も、竹本容器では例えば3,000本でも対応しますが、そのような小ロットにも細やかな対応をする企業はないそうです。 海外には大きなビジネスチャンスがあると社長はおっしゃっていました。

竹本容器の商品は主に化粧品に使われています。 化粧品を利用するのは、もちろん日本人だけではなく、世界中の(主に)女性が利用します。 ですから、世界の人口が増加することに伴い市場規模は拡大しますし、 新興国が豊かになり1人当たりのGDPが増加すれば、今まで化粧品を使わなかった女性も化粧品を使うようになります。

そういう意味で、竹本容器の潜在的な成長性はとても魅力的です。

編集後記

竹本社長の海外経験に裏打ちされた、積極的な海外展開は、 株主にとって、たいへん頼もしいものだと思います。将来に対する期待も膨らみます。

今まで全く意識していませんでしたが、日用品のボトルの底面に、実は製造メーカーのロゴが入っていることに驚きました。 こんなところにも投資のヒントが隠れていたのですね。

今回のインタビューで印象に残ったのは「挑戦なくして進化なし」という言葉です。 社長を始め、失敗してもいいから、とにかく挑戦しよう、という意気込みで海外展開を積極的に進めています。

海外には広大な市場が広がっています。

海外アレルギーの無い、若い女性社長が、 失敗しながらも長期的には事業を大きくしていく様子をイメージすることができました。

将来への投資が積極的なため、表面的に業績が停滞しており、株価も停滞しています。 これはかえって長期投資をしている皆さんにとっては、購入を検討するよいタイミングかもしれません。

※本稿は、日根野がヒアリングした内容を、事前に調査した内容等も踏まえて総合的に記述しています。 企業が正式に公表した見解・事実等ではないので、ご留意ください。

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