eBASE(3835) 商品情報管理のデファクトスタンダードを構築!
今回は、商品情報管理データベースのプラットフォームを提供しているeBASE(3835)の本社を訪問して来ました。
eBASEの本社は、大阪市北区豊崎5丁目4-9の商業第二ビルにあります。最寄り駅は中津駅ですが、関西随一の巨大ターミナル駅である梅田駅からも歩いて行ける距離にあります。そんなビジネス街のビルの10階でお話を伺いました。
1.事業内容は
eBASEは上場企業として、どのような事業を行っているのでしょうか。
ユーザーが138,000名(2018年3月現在)もいるという「eBASE」ですが、一般消費者が直接コンタクトすることがほとんどないB2B(ビジネスtoビジネス)事業ですので、業容をよくご存じの個人投資家の方は多くないかと思います。そこでまずは事業内容を見ていきましょう。
eBASEの事業の根幹は「商品情報管理データベースソフト」を顧客へ提供することです。顧客の中心は、チェーンストアなどの小売事業者です。
店舗販売がメインのチェーンストアは、新聞折り込みなどのチラシ、通信販売業者はカタログ作成が必須の業務になりますが、掲載するナショナルブランド商品の情報はサプライヤーから提供してもらい、それでチラシやカタログを作成していきます。
このサプライヤーから提供された商品情報を管理し、スムーズなチラシ・カタログ作成やECサイトの運用が行えるようにするパッケージソフトが「eBASE」です。
「eBASE」の製品は業界ごとに最適化されていて、最も需要の大きい食品業界向けには「FOODS eBASE」を、日用雑貨・生活関連商品には「GOODS eBASE」を、グリーン調達に向けた化学・環境関連商品には「GREEN eBASE」といったラインナップになっています。
データベースに登録される情報は、商品メーカー(サプライヤー)が提供するものですが、主な有料製品の顧客は商品メーカーではなく、チェーンストアなどの小売事業者である点が興味深いポイントです。
小売事業者は「eBASE」に格納された情報を元にチラシ・カタログなどの印刷物を作成するだけでなく、ネットスーパーなどのECサイトのためのWebカタログ、小売商品に貼る値札、商品入替時に陳列を検討するための棚割システムなどにも、データを活用します。
各種「eBASE」は、パッケージソフトとして小売事業者のサーバーにインストールされて利用されるもの(オンプレミス)の他に、最近は「食材えびす」や「家電えびす」のようにeBASE社が保有するデータベースに商品情報を登録し、それをクラウドサービスで提供するものもあります。
これら「eBASE事業」の売上は1,435百万円(2017年3月期)ですが、この事業での経常利益は全体の2/3を占めていて、利益の柱となっています。
もう一つの事業は「eBASE-PLUS事業」と呼ばれるITエンジニアを派遣する「ITアウトソーシング業務」です。こちらの事業は主に連結子会社のeBASE-PLUS株式会社が担っています。連結従業員数432名(2017年4月)のうち、3/4を占める320名がeBASE-PLUS株式会社に在籍しています。
「eBASE-PLUS事業」の売上は2,147百万円(2017年3月期)となっています。
両事業を比べてみると「eBASE事業」では、企画・開発した製品の販売を行ういわば「フロービジネス」の事業であり、「eBASE-PLUS事業」では、ITアウトソーシングとしての人材派遣業務である事から毎月定期的な売上が見込める「ストックビジネス」と言えます。売上構成としては、どちらかに大きく偏ることなく、現状4:6のバランスのとれた比率になっています。
またeBASEの事業は、食品や日用雑貨・生活関連商品という生活に密着したディフェンシブな業界を対象としているので、景気の波に左右されにくく、比較的安定した事業といえます。
2.ニッチな分野の製品だからこそできた創業
eBASEは2001年、大阪市北区に株式会社ホットアイという社名で創業します。創業時から自社開発した商品情報管理データベースソフトの販売を目的にしていました。
創業メンバーは、常包浩司(つねかね こうじ)社長をはじめ、凸版印刷(7911)の関西画像研究所の数名だったそうです。
ホットアイが設立された当時は、小売事業者のカタログ作成の担当者や、印刷製本を請け負う印刷会社はどこでも、掲載商品情報の管理とカタログ作成に大変な労力をかけていました。
Apple MacintoshによってもたらされたDTP(Desk Top Publishing)が、2000年頃には日本の印刷業界でも普及し、完成イメージを画面で確認しながらカタログの各ページを作って行けるようになりました(それまでは文字組版と画像が別々に処理されていた)。
それでもサプライヤーや卸業者各社から集めた商品情報を手打ちで入力したり、商品写真を別途スキャニングして、間違いなく商品ページに配置したり、というように神経を使う作業を行っていました。
しかも厚いカタログでは数百ページ、掲載商品点数で数千点に及ぶ物もあり、途中で掲載商品の入れ替えが発生したりすると、ミス発生確率が格段に高くなったりしました。
このような時代にeBASEは、商品の文字情報と商品写真などの画像情報を一緒に管理できるデータベース「eBASE」を開発し、カタログのページ作成ソフトと連動させることに成功しました。これによってカタログを発行する小売事業者は、「eBASE」にあるデータから、カタログに掲載する商品のデータを、選択しさえすれば良くなりました。
また、商品個々のデータ収集についてeBASEは、商品データ入力に特化したソフトを作成し、小売事業者を通じて無料でサプライヤーに配布しました。こうすることでサプライヤーが入力した商品情報を、小売事業者や印刷会社がデータを打ち替えたり、商品データと商品写真を取り違えたりすることなく、カタログページ作成ソフトにレイアウトできるようになりました。
大幅に業務改善できることを知った大手通販事業者が導入したことをきっかけに、「eBASE」は他社にも浸透していきました。
さらに、食品も扱う共同購入組合、さらには大手流通チェーンストアも、チラシ作成等で「eBASE」を採用するようになりました。特に食品では、安全面から食品衛生法等で表示すべき品質情報も決められているので、表示忘れなど許されません。そこで「eBASE」を使うことで、必要項目の入力が促され、間違いなく法規制もクリアできるようになります。その結果「eBASE」は、商品情報管理データベースの、事実上の標準フォーマットになったのでした。
このように、毎週のように日本中の至る所で作成されているチラシ・カタログにおいて、制作のデファクトスタンダードを握った結果、eBASEは創業から5年の2006年に大阪証券取引所ヘラクレスへ上場。その後JASDAQ、東証2部を経て、2017年12月に東証1部指定銘柄となっています。
創業の目的であった商品情報管理ソフトで、業界のデファクトスタンダードの地位を得るという成功を収めた要因には、周到な戦略と多くのチャンスに恵まれたこと、そして何といっても未来を見通す確かな目があったからだと思います。
eBASE創業者である常包社長は、凸版印刷に在籍していたとき、カタログ作成の苦労を身近に見ていましたし、デジタル化の進展により、合理化が可能であることを確信していました。しかし、売上高1兆円企業の凸版印刷では、合理化効果による売上では小さすぎて事業対象とならなかったため、創業メンバーは凸版印刷を退職して自分たちで行うことを選択しました。
でもこの創業の道によって商品情報管理データベースのデファクトスタンダードとなり、eBASE社で社会を変えることになった。自分たちの見通しを信じてのこのようなチャレンジは、何とエキサイティングなことかと思います。
3.今後の事業展開について
海外事業については、2008年に「FOODS eBASE」の英語版、中国版はリリース済みですが、それぞれ日本とは商流が異なり、デファクトスタンダードには成り得ていないようです。可能性はあると思うので、今後の展開が気になるところです。
国内では、前述の「食材えびす」などクラウド型に注力しています。このクラウド型では、eBASEが管理するサーバーに登録会員である食品メーカー等が無料で自社商品データを登録し、それを小売業などの利用会員が、利用料を払って利用する仕組みです。これによって、小売業は、自社にサーバーを設置することなく、月額料金で必要な商品情報データベースを利用することができるようになりました。
ナショナルブランド商品の食品メーカーにとっても、小売事業者ごとに入力ソフトにデータを入力していたのが「食材えびす」への入力だけで、多くの小売事業者へのデータ提供ができるようになり、また商品の仕様変更などの場合も「食材えびす」のデータを修正するだけで済むようになりました。
さらには、eBASEにとっては、これまで顧客のサーバーにデータベースソフトを設置する「オンプレミス型」は、どうしても予算処置として年度内導入検収を目指す顧客の意向もあり、第4四半期での売上が突出していましたが、クラウド型では売上の平準化ができるというメリットがあります。
このように、「eBASE事業」でもストック型のビジネスが進みつつあります。
インタビュー後記
2018年3月27日、eBASEは市販用医薬品(OTC医薬品)向けに「OTCえびす」、医療用医薬品(調剤薬品)向けに「調剤えびす」の提供開始を発表しました。
元々生活に密着したディフェンシブな業界を対象としているeBASEが、さらに医薬品業界に向けてビジネス領域を広げたことで、今後さらに成長への期待が高まります。
eBASEでは、自社の事業を面白い表現でたとえていました。「顧客である小売事業者が、高級自動車を揃える店をつくろうが、大衆車を販売する店を作ろうが、車を売ることに変わりはありません。当社はその車を動かすガソリンを提供したいのです」と。商品販売をドライブするための情報が、すなわち車におけるガソリンということでした。このように事業を抽象化してみる目を持っていれば、時代が変化しても本質を見抜き、新たな対応ができると思います。
最後にeBASEの理念を紹介します。
貢献なくして利益なし
利益なくして継続なし
継続なくして貢献なし
最初に「貢献あり」きです。貢献によって利益がついてくる。そして利益を継続してさらに貢献する、というスパイラルを会社の理念にしています。この理念を実践し続けることを期待したいと思います。
以上
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