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ファンデリー【3137】 医療機関でカタログ配布、栄養士がカウンセリングして健康食を宅配


今回は、2015年6月に東証マザーズに上場した健康食宅配事業のファンデリー【3137】のIR部門を訪問しました。Fundely.jpg (48 KB)

ファンデリーの本社は、東京都北区赤羽2-51-3 NS3ビルにあります。JR赤羽駅から徒歩7分、東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅からですと徒歩2分の場所にあります。

赤羽駅は、東京北部のターミナル駅として京浜東北線・宇都宮線・高崎線・埼京線・湘南新宿ライン・上野東京ラインの停車駅であり、赤羽からは東京や新宿など都心の主要駅はもちろんのこと、横浜、浦和、宇都宮、前橋の各県庁所在地の駅へも乗り換え無しで行ける便利な駅です。

赤羽駅周辺は再開発が進んだとはいえ、昔ながらの店も残っており、下町情緒のある街です。

 

1.一念発起で起業、試行錯誤の中で健康食宅配事業を開発

ファンデリーは、現代表取締役の阿部公祐さんが創業した会社ですが、事業の中身が何も決まっていない中で「起業したい」という阿部さんの思いからスタートした会社です。何故そのような思いを抱くに至ったか、まずはそこから見ていきましょう。

阿部さんは大学卒業後の1996年に朝日火災海上保険(現楽天損害保険)に新卒入社します。
就職活動に当たっては「サラリーマンとして働く」という、ごく一般的な考えであり、当時自分で起業しようという思いは全くなかったそうです。

ところが会社に入って保険代理店を増やす営業をしているうちに、仕事で会う経営者がとても輝いていることに気付きます。多くが自ら創業した社長さんたちで、自分の事業について夢を持っていることに魅入られるようになります。
1999年、ある講演を聴き、阿部さんは衝撃を受けます。講演者の「チャレンジすれば何でも出来る」という言葉どおり、新しい仕組み作りにチャレンジする姿に感銘を受け、自分でも起業しようと思い立ち、朝日火災海上保険を退職します。
この時点ではどんな事業で起業するか、阿部さんには全く見えていませんでした。

 

当時の経済環境は、IT関連企業が注目を集めて株価が上昇したり、ITベンチャー企業に資金が集まったりしていた時期でした。しかし阿部さんは、フェイス・トゥ・フェイスの仕事が自分に合っていると思い、生活者を応援するビジネスを立ち上げたいと考えていました。

中でも「食」での事業を考えていたところ、栄養士による食材の宅配という事業を思いつき、2000年9月にファンデリーを創業し、翌2001年の4月から「カウンセリングデリバリー」を開始します。

カウンセリングデリバリーは、栄養士がクルマで契約者宅に食材を届け、その際に栄養に関する相談を受けて、食事コントロールや献立などのアドバイスをする、という画期的なものでした。
しかしながらこの方法は、配達先が点在しているため効率がとても悪く、資金がどんどん減って、行き詰まりを見せます。

そんな時にある糖尿病のお客さんから「食事制限数値に合わせた食事をつくるのは難しく面倒」という話を受けたことから、栄養価をコントロールした食事(健康食)を冷凍で届けよう、と思い立ちます。
さらに、そのような健康食を必要とする人たちは、病院・医院で食事についての指導を受けることから、医療機関に健康食のカタログを置いてもらって、自宅に持ち帰ったカタログを通じて受注しようと考えました。この医療機関でのカタログ配布ルートを確保したことも、事業の発展につながった大きなポイントの一つです。

阿部さんは、健康食提供の事業を思いついてから健康食通販カタログ『ミールタイム』発刊までの間に、健康食を作ってくれる製造委託先の食品工場探しに奔走する一方、カタログを活用してくれる病院などの開拓やカタログの企画編集、そして広告を出す可能性がある医療関連企業や食品メーカーへの広告営業にも走り回りました。

制作に取りかかっていたため、広告を集められないと資金がショートする、という綱渡りでのチャレンジだったそうです。

見事10社から受注することができ、2004年4月の『ミールタイム』第1号発刊に漕ぎ着けました。

そういった創業期の奮闘もあり『ミールタイム』の設置医療機関は、その後順調に伸びて現在では16,563カ所になり、年4回3か月ごとに発行されています。また、『ミールタイム ファーマ』(お薬の情報などを掲載する調剤薬局向けで、年2回6か月ごとに発行)は4,125カ所の調剤薬局に設置されており、設置箇所は合わせて21,688カ所となりました(2018年6月現在)。発行部数は『ミールタイム』『ミールタイム ファーマ』合わせて年間約300万部にまで伸長しました。

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(『ミールタイム』2018年秋号)

 

2.主力のMFD(Medical Food Delivery、健康食宅配)事業、栄養士が電話で提案

それでは、ファンデリーの事業と決算を具体的に見ていきましょう。
2018年3月決算の売上は33億円。そのうち主力のMFD事業が29億円であり、総売上の約9割を占めます。

受注の基本は電話注文です。ファンデリーでは必ず栄養士が電話に出て、病状や血液検査の数値などを聞き、お客さんに合ったメニューを提案します。お客さんも手元の『ミールタイム』を見ながら説明を受け、メニューを決めます。
さらに、次の注文時にも血液検査結果を担当の栄養士が聞いて、改善結果を必ず確かめます。

お客さんにとって、ファンデリーを利用したことがきっかけで、血液検査の数値が改善できていると医師に褒められることも多いそうで、健康食宅配を続ける動機にもなるようです。

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注文を受けた健康食は早い地域では翌日に、北海道や九州でも翌々日にはクール便で配達されます。到着したら冷凍庫に保管して、都度電子レンジで温めて食するという利用法です。

現在、『ミールタイム』の購入者は約22万人で、その6割以上が65歳以上の方々です。会員の地域分布は、ほぼ各都道府県の人口分布に比例しているとのことでした。

また、定期コースで注文される方も多く、約6割が定期コースを選んでいます。定期コースは担当栄養士がそのお客さんの食事制限数値、アレルギーの有無や好みに合わせた食事を選び、定期的に届けるものです。業績面からは、安定した売上につながりそうです。

健康食通販カタログ『ミールタイム』の設置・配布については、医療機関等に金銭的な対価を支払っていないそうです。

それではどうして病院が民間企業のカタログを無料で活用してくれるのでしょうか?

病院では、外来患者に栄養指導はできても、実際の食事を提供することができず、患者任せになります。この時に『ミールタイム』掲載の食事をキチンととってもらえば、患者の数値改善や日々の負担軽減に繋がるという思いがあるようです。

医療従事者は、患者の病状改善を強く願っているので、『ミールタイム』はその支援ツールとして活用されているようですね。

また、栄養士の栄養食事指導は病院・医院にとって診療報酬点数の対象ですが、指導の際に 『ミールタイム』の食事情報ページが役に立つ、ということも理由として挙げられます。

 

3.競合は?拡大余地は

ファンデリーのように注文を全て栄養士が受け、カウンセリングをして健康食を宅配するという形式の会社は無いそうです。

家庭での食事なので中食と捉えれば、中食市場10兆円という巨大な市場がターゲットになります。しかも健康食の中心的なユーザーである65歳以上の人口は、これからも増加します。

現在ファンデリーの売上は約33億円(2018年3月決算)ですから、まだまだ事業拡大余地はあります。成長性は多いにあると言えるでしょう。

また、食に関する事業であり、しかも定期コースがあるため、世界経済の動向や景気の良し悪しの影響を受けにくいディフェンシブな事業であると言えます。

 

4.大きな投資でSPAに。強みをさらに磨いて、健康食NO.1ブランドの確立へ

医療機関ルートで広がったファンデリーのMFD事業ですが、商品である健康食製造は大手メーカーへの外部委託です。つまり製造に関する固定資産を持たないファブレスで事業を行っており、かつ利益も継続して出しています(営業利益率20%前後)。

製品品質はどんな業界でも大切ですが、「食」の安全には特に高度な品質管理が必要です。これについては大手メーカーの品質管理ノウハウで担保されていると言っていいでしょう。

しかしファンデリーは、中期経営計画「Will2022」(2018年2月15日のIR)でファブレスでの事業運営にとどまらず、SPA(製造小売業)になることを宣言し、55億円を投資して自社工場を建設することを発表しました。そのための用地についても売買契約を締結したことを発表しました(2018年5月23日のIR)。

先に書いたように現在のMFD事業の売上額は29億円(2018年3月決算)です。売上の2倍近い投資をするという大胆な経営決定です。

ファンデリーがSPAになる目的は、自社製造することによってコストダウンを図り、より良質な食材を使用した健康食をお客さんに提供することです。これまで築いてきた栄養士によるカウンセリングというソフトに加え、より高品質な健康食を生産できる体制というハード面の競争優位も獲得して、健康食NO.1のブランドを確立しようという戦略です。

そしてその戦略の下、2022年度には売上を約3倍(2018年3月決算比)にしていくという中期戦略になっています。

売上3倍も大変な目標ですが、自社生産で利益を出すためには、より良質な食材の安定調達や効率的な製造ノウハウ獲得、高度な品質管理の確立など、チャレンジすべき課題がたくさんあります。

自社生産への切り替えにより限界利益は増加しますが、これを営業利益につなげて行くには、お客さんに選んでもらえる付加価値の高い商品を作り上げることが何より大切です。

 

5.マーケティング事業の展開

ファンデリーの中期経営計画では、売上3.7億円(2018年3月決算)のマーケティング事業を、新設のメディア事業と合わせ2022年度に9億円にする予定です。こちらもMFD事業ほどではありませんが、5年で2.4倍以上に伸ばすという意欲的な計画です。

マーケティング事業は、会員22万人、年間300万部発行のメディアである『ミールタイム』への広告の他に、サンプリング業務受託があります。

サンプリングは、例えば、食品メーカーの減塩商品を、医療機関を通じて(減塩商品が適した)患者に紹介するというものです。

サンプリングは『ミールタイム』設置で培った全国2万カ所以上の紹介ネットワークに募集をかけ、応募があったところにサンプルを発送しています。この場合も医療機関に支払う費用は無いので、利益率の高い事業となっています。

また、新事業であるメディア事業は、例えば家電メーカーのシャープが製造販売する『ポイント家電』の対象家電「ヘルシオ」に、栄養士のアドバイスや食品メーカーの広告などを配信し、それをユーザーが視聴する都度ポイントが貯まり、点数によってQUOカードや、コンビニでの買物引換券などに交換ができるというものです。

ファンデリーは、栄養士によるコンテンツ制作や広告営業業務を行い、シャープと『ポイント家電』を共同運営しています。対象家電はヘルシオの他、冷蔵庫やその他の調理器具に広がりつつあります。

こちらもマーケティング事業同様に利益率が高いので、対象家電の広がり次第では大きく期待のもてる事業になりそうです。

インタビュー後記

健康食宅配と医療機関の紹介ネットワーク、この2つの組み合わせは、ファンデリーの「発見」と言ってよい、新しい事業創造だと思います。

それに等しい価値があると思われるのが「栄養士の活躍機会創造」ではないでしょうか。

2年から4年の高等教育機関での修業・国家資格取得が必要な栄養士・管理栄養士。その活躍の場は病院や学校、企業・自治体の食堂などの「調理の現場」が主なものでした。

そこにファンデリーは栄養士による「電話カウンセリングよる最適健康食提案」という職場を提供しました。その他にも、ファンデリーの健康食のメニュー開発という栄養士本来の仕事はもちろん、『ミールタイム』の企画ページ、広告ページの作成も行うなど、ファンデリー所属栄養士の仕事は多岐にわたっています。

このため、「採用難」と言われている現在において、ファンデリーの栄養士募集には20倍を超える応募がある状況だということでした。

社員が生き生きと働き、顧客の健康が守られる事業を行っているファンデリー。現在「第二の創業期」として中期計画で取り組んでいる大きなチャレンジが成功することを願って、応援したいと思います。

以上

※当コンテンツは当社がアクションラーニング会員及びそれ以外の個人投資家に向けて、個別企業を見た印象を記事にしたものです。

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