日本プリメックス【2795】 無借金経営の産業用小型プリンタ専門開発・製造・販売会社
今回は、日本プリメックス【2795】のIR部門を訪問しました。
日本プリメックスは、東京都大田区鵜の木1-5-12にあります。
最寄り駅は東急多摩川線の鵜の木駅、もしくは東急池上線の久が原駅で、それぞれの駅から徒歩5分程度の便利な場所です。
近隣は、キヤノン【7751】の本社があり、多摩川の対岸にはNEC【6701】の玉川事業所があるなど、大手電子機器メーカーの事業拠点であり、かつては町工場も多くありました。近年はそれら町工場の姿はほとんど見られず、表通りを外れるとマンションや戸建住宅がならぶ閑静な住宅街となっています。
そのような周辺状況の中、交通量の多い都道環状8号線(通称:かんぱち)面して建つ、日本プリメックスの本社ビルで事業内容や決算について話を伺いました。
1.創業は、産業用プリンタのディーラーとして
小型プリンタメーカーとしてのイメージが強い日本プリメックスですが、1979年にシチズン事務機(現シチズン・システムズ株式会社)やスター精密【7718】の国内代理店として、産業用小型プリンタやその他の電子機器、部品の販売会社として創業しました。
創業時の主たる出資者は、現代表取締役会長兼社長の中川善司さんでした。しかし当時中川さんはシチズン事務機でアメリカ駐在の仕事をしており、上原さんという方に社長をお願いしてのスタートでした。
創業翌年の1980年にはセイコーエプソン【6724】や、ブラザー工業【6448】のプリンタや電子機器も扱うようになり、営業の幅を大きく広げました。
このように大手メーカーと創業間もなくから取引ができた背景には、長野県諏訪地域の精密機械工業のつながりがあったそうです。
もともとシチズン時計【7762】と関係の深かった日本プリメックスですが、時計などの精密機械メーカーの多くが戦時中に長野県の諏訪地方に疎開をしました。諏訪地方に集まった要因としては、地域として水と空気がきれいなことに加え、かつて盛んだった生糸産業の工場や手先の器用な労働力が豊富だったことがあります。
戦中・戦後をここで過ごしたメーカーは、互いに競い合いながらも協力できるところは協力する、という姿勢があり、日本プリメックスも諏訪地域に事業所を構える各社の製品を取り扱うようになったとのことです。
その後、1986年にはメーカーとしての第一歩を踏み出します。山梨県富士吉田市に小型プリンタの開発・製造を目的とした子会社、ニチプリ電子工業株式会社(現:日本プリンタエンジニアリング株式会社)を設立し、OEM製品の製造を始めます。
OEM供給は順調に拡大し、ついに1993年にはオリジナル小型プリンタの販売も開始しました。
このオリジナル小型プリンタは、国内販売開始2年後の1995年には輸出が開始されます。
一方、1997年にはアメリカのプリンタメーカーであるエルトロン社(現ゼブラ社、Zebra Technologies【ZBRA】)と日本国内総代理店契約を締結し、輸入販売も開始します。
2004年2月には店頭登録銘柄としてIPOを果たしますが、同年12月には店頭登録を取消してジャスダックに上場します。そして現在は証券取引所の合併に伴い、日本プリメックスは東証JASDAQ(スタンダード)銘柄となっています。
2.あらゆる産業用小型プリンタを取扱う
日本プリメックスの事業セグメントは「ミニプリンタの開発・製造・販売所業」単一であり、売上は約54億円(2018年3月決算)です。
このうち、自社オリジナルミニプリンタの売上が約25%。国内外から仕入れたプリンタの販売が75%という構成です。
ミニプリンタ販売では国内トップであり、大手メーカーであるシチズン、エプソン、ブラザーの小型プリンタ販売では日本プリメックスがトップディーラーの地位にいます。
国内の販売先は1万社にも及ぶため、日本プリメックスの営業マンは1日平均5軒の得意先を回っているということでした。
日本プリメックスの取り扱うプリンタは、一般に販売されているインクジェットプリンタやレーザープリンタではなく、感熱紙と組み合わせて使用する「サーマルプリンタ(ダイレクトラインサーマル方式)」がほとんどです。
スーパーやコンビニで受け取るレシートは、現在はほとんどがこの方式でプリントされたものであり、レジスターに組み込まれたプリンタから打ち出されています。つまり、小型プリンタは部品として組み込まれて使われることが大半です。
用途としてはレジスターの他に、ガソリン給油機やコインパーキング精算機、銀行ATM、鉄道各社の切符販売機、航空券発券機、食券の券売機、そして多用途のKIOSK端末など身近な多くの機械に小型プリンタは組み込まれています。
また、一般に目にすることはありませんが漁船のGPS機器にも組み込まれているそうです。これは、漁船が航跡データを提出する必要があり、その出力用だそうです。
給油機やATM、券売機などは定期的に新型への入れ替え需要が発生しますので、それに付随している小型プリンタも入れ替え需要を見込めるということでした。
また最近は、機械に組み込まない、独立したポータブルプリンタの需要も増えているそうです。
スマホやタブレット決済においてUSBやBluetooth、無線LAN接続によりレシートを出力するポータブルプリンタを各社に販売しています。
スタートがディーラーだったこともあり、取扱商品に自社製品だけでなくあらゆる小型プリンタを取り揃え、顧客の要望に応えるという姿勢が、多くの顧客を掴んだ要因かもしれません。
3.競合と海外の状況は?
国内では大手メーカーの販売力が強いので、強いて競合といえばシチズンやエプソンになるようですが、これらの会社は仕入れ先でもあり、OEMの供給先でもあるという関係です。
海外に目を向けると、先述のゼブラ社が世界的に有名で、中国で生産されるKIOSKマシンなどではゼブラ社が有利なようです。
一方、国内ではゼブラ社より日本プリメックスの方が強い、ということでした。
これは、中国ではともかくコストが優先されるのに対し、日本では品質(耐久性や耐候性、メンテナンスのしやすさ、印刷品質の高さ等)が重視される、という違いがあるようです。
海外へは、世界各国に輸出しており売上の15%程度を占めています。海外の取引先は200社以上ありますが、アフリカや中近東などの一部の国では、必ず代理店を通すことを求められる取引もあるようです。
海外でもガソリン給油機や駐車場機器、KIOSKマシン用が主流ですが、変わったところではカジノマシン向けのプリンタもあるそうです。これは、マシンから精算時にコインやメダルではなくプリントされたレシートが出てくるそうです。
拡販には、従来の取引先からの紹介の他、海外の展示会へ年7回程度参加しています。参加経費は高額ですが、一度取引ができるとリピート率は高く、長い目で見ると利益率は悪くないとのことでした。
4.健全な財務体質と今後の事業展開
今まで見てきたように国内・国外とも多種多様な業種の取引先があり、また入替需要もあるために、景気変動の影響は比較的受けにくいディフェンシブで成熟型の事業構造になっていると考えられます。
この事業によってこれまでに内部留保を蓄積し、日本プリメックスの財務は盤石です。
2018年3月決算の数字を見ると、流動比率は323%、自己資本比率は71%です。また、長期・短期の借入金はゼロ(無借金経営)で、現預金が35.7億円もあります。
これは、産業用小型プリンタという比較的ニッチな世界でトップディーラーになる、という戦略が優れていたことに加え、「無駄なことはやらない」という堅実な社風が財務基盤を作り上げてきたのでしょう(今でも金額の多寡に関わらず、すべての稟議に社長自ら決裁をしているそうです)。
小型プリンタトップディーラーの日本プリメックス。小口の現金周辺で使用されることが多い小型プリンタですが、将来を考えると、今よりもさらにキャッシュレスは進み、さらにペーパーレス化も進むと言われていますが、申告納税制度を採用する多くの国々で、証憑書類としてのレシートの必要性が義務付けられており、中には自動販売機にもレシート出力機能が必要な国もあるとのことで、日本プリメックスの取り扱うプリンタ需要に対して、ペーパーレス化のリスクはほとんど無いと考えているとのことでした。
インタビュー後記
日本プリメックスの本社ロビーに一歩入ると、メーカーらしく、コスト意識が徹底していることがひしひしと伝わってきます。ショーケースのディスプレイも華美でなく、質実剛健を地で行く感じでした。
この堅実性を維持しながらも、今まで大きな内部留保に貢献してくれた小型プリンタに並ぶ新しい事業を打ち立てることに期待したいと思います。
以上
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