不二製油グループ本社(2607) 人権に配慮した材料調達で、おいしいチョコを私たちの手に!
今回は、不二製油グループ本社(2607)を訪問しました(以下、「不二製油」といいます)。
本社は大阪市北区中之島3丁目6番32号 ダイビル本館にあります。地下鉄四つ橋線の肥後橋駅から徒歩6分の場所にあります。JR大阪駅からも歩ける距離にあり、便利な場所に位置しています。
なお、 登記上の本社は、大阪府泉佐野市住吉町1番地にあります。ここには不二製油の阪南工場がある場所です。阪南工場は、1969年に操業を開始し、現在も重要な製造拠点としての役割を果たしています。
1.1950年に創業。パーム核油搾油に成功! 二つと無いものを創る!
1950年に創業し、1954年にはパーム油の搾油に成功しました。それまで、チョコレートには、ココア油などの高級な油が使われていました。戦後すぐだったこともあり、庶民には手の届かないものだったのです。
ところが、不二製油が安価なパーム油からの搾油に日本で初めて成功しました。これをチョコレート製造に使うことで、チョコレートをそれまでよりも安い価格で生産することができるようになり、チョコレートが庶民のものになりました。
また、創業当初はヤシ油などを石鹸用に製造・販売していましたが、チョコレートやマーガリンなど、食用に使われる油の取り扱いが増えていきました。
不二製油の社名は、二つとないものをつくる、という意味が込められているそうです。まさに日本で初めてパーム油から搾油することに成功したことが、会社の長きにわたる発展の始まりでした。
会社が大きく発展するきっかけとなったのが、1969年に操業を開始した阪南工場への大規模投資です。当時の企業規模からはかなり大規模で、思い切った投資だったそうです。それを決断したのは、西村政太郎社長(当時)でした。元は伊藤忠におられた方でしたが、不二製油の社長を務めておられました。
その投資判断は成功し、不二製油は1973年 大証1部に上場、1978年には東証1部に上場し、着実に売上高と利益が増加しています。
2.食品用でも目的に応じて異なる性質の油脂が必要になる!
不二製油の製品は「油脂(食用加工油脂、チョコレート用油脂)」「製菓・製パン素材(チョコレート、クリーム、マーガリン、フィリング)」「大豆関連製品」に分けられます。なかでも私たちにとって、なじみがあるのがチョコレートです。
食品用のチョコレートというと、1つの種類の製品で足りるような気がしますが、実は大違いです。
チョコレートといっても、アイスクリームにかける用途、クッキーに入れ込む用途、ケーキ用途など、さまざまな場面で使われます。チョコレートには融点(溶ける温度)がありますが、用途によって異なる融点が求められます。
例えば、アイスクリームにかけるチョコレートは、口に含んだときにアイスクリームと一緒に溶けてほしいですから、融点は低い方がよいです。
それに対してクッキーに入れ込むチョコレートは、クッキーを焼くときに溶けてしまわないように、融点は高いほうが良いのです。
このように同じチョコレートでも、使われる場面によって、求められる性質が異なり、不二製油はその融点をうまくコントロールできます。
不二製油の製品はいろいろな場面で使われています。チョコレートでも、上記のようなアイスクリーム、クッキー、ケーキだけでなく、菓子パンのなかに入れる、ビスケット等にトッピングするなど多様です。チョコレートを使ったお菓子をスーパーで見てみると、チョコレートがいかに多様に使われているかが分かります。
また、コンビニで販売しているざるそばが、そば同士で絡まらずにスムーズにとれるようにするためにも油が使われていますし、発泡酒の生産にも使われています。スナック菓子を揚げたり、即席麺を揚げるのにも油が使われています。
私たちはあまり意識していませんが、実は日々、不二製油の製品が使われた食品を口にしていて、大変お世話になっているのです。
3.ますます広がる世界の食市場。動物性タンパクの不足が予想される。
世界の人口は、これからますます増加し、いずれ100億人に到達すると予想されています。そのとき、動物性タンパクが不足すると考えられています。というのも、牛、豚、鶏などの肉は、生産するまでに大量の飼料が必要になりますから、生産効率は悪くなります。
不二製油はそこに注目し、脱脂大豆を加工して植物肉ハンバーグを生産し、2018年から発売します。世界の人口増加による動物性タンパク不足を補うために、不二製油の植物肉が世界の人々の空腹を満たしている様子が眼に浮かびますね!
不二製油にとって、広がる市場はそれだけではありません。
例えば、中国では食の洋風化が進んでおり、パン食が普及してきています。それに伴い、マーガリンやフィリングに対する需要も増加しています。
「製菓・製パン素材」セグメントにとっては、絶好のチャンスです。
同様のことは、中国だけでなく、アジアの各国でも起こることが予想できます。所得が増えればチョコレートなどの嗜好品に対する需要も高まりますし、食が洋風化すればマーガリンやフィリングに対する需要も高まります。
「油脂」セグメントにとっても大きなチャンスがあります。
さらに、2015年にはブラジルの業務用チョコレートで最大手のハラルド社を買収し、アジアだけでなく南米にも事業を展開しています。
不二製油の製品に対する需要は拡大していくことが予想されますが、需要は安定しているのでしょうか、景気の影響を受けやすいのでしょうか?
不二製油の製品は、食料品に使われるものがほとんどですから、景気のよしあしに関係なく、需要があると考えられます。
過去の業績を見ると、売上も利益も安定して推移しています。
4.競合は? さらなる海外展開
それぞれの製品においては競合が存在します。例えば国内の競合というと、大豆関連製品であればマルコメ、油脂であれば日清オイリオグループ(2602)などです。海外では、チョコレートメーカーであるバリーカレボー(スイス)、食用油脂のAAK(デンマーク)などです。
しかし、不二製油のように、横断的に油脂を取り扱う企業は他にありません。製品群が横断的という点で、非常に特徴的な企業なのです。
5.人権に配慮した原材料の調達。グループ憲法で高い倫理観を。
不二製油の製品を生産するうえで欠かせないのがパーム油です。パーム油は、マレーシア、インドネシアでしか採れません。東南アジアの大農園で単一農作物を生産する、というとどうしても過去のプランテーションのネガティブなイメージを連想しがちです。現地の人たちの人権を無視したような過酷な労働環境で働かせるというイメージです。
不二製油では、そのような人権侵害が無いよう人権宣言を採択し、人権に配慮した労働環境を整備しています。
2018年には現地のユナイテッドプランテーション社と提携し、人権や環境に配慮した工場運営を行います。
このような不二製油の経営姿勢には、基盤となるグループ憲法があります。
会社訪問時にIR担当者の方が、「不二製油グループ憲法」を手渡してくださりました。単に形として制定しているだけでなく、社員がそれを日々意識していることがわかります。
ホームページに分かりやすくまとめられた図があるので紹介します。
出所:不二製油ホームページより
インタビュー後記
不二製油のビジネスは、広い海外市場がターゲットになるうえ、油脂だけでなく植物肉まで領域を拡大しており、大きな成長性を秘めています。また、それに対する需要は景気に対してディフェンシブな性格を有している点でも、投資家にとっては魅力的に思われます。
そのうえ、人権や環境に配慮した原材料調達を行うなど、ぜひ応援したくなるような企業です。
ぜひ、がんばってほしいですし、応援したいですね!
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