長期投資家のためのIR情報
バリュートレンド

ビジネスコーチ(9562) 細川社長インタビュー!日経と資本業務提携!2029年9月期に売上50億円 営業利益10億円 ~コーチングから「人的資本経営のプロデューサー」へ ~


【9562】ビジネスコーチ

開催日2025年 11月 10日
出演細川 馨 代表取締役社長

ビジネスコーチの細川社長に日本経済新聞社との資本業務提携、経営戦略についてインタビューしました。

日本経済新聞社との資本業務提携について(2025年11月7日開示)

日本経済新聞社と資本業務提携いたしました。日経グループとは2003年頃からのお付き合いになります。当初は「日経ビジネス」と一緒に企画を行ったり、コーチングセミナーや出版、「日経ビジネスアソシエ」で連載したりさせていただきました。その後、日本経済新聞社さんとも動画制作などで関係が深まりました。

2017年からは共同でコーチングスクールを運営するようになり、日経の常務取締役の方にも実際に当社のスクールに入って体験していただきました。そこで「コーチングは企業の活性化に非常に重要である」と評価していただき、今回の提携の話が進みました。日経さんから見ても、ビジネスコーチ社はコミュニケーションが良く、モチベーションも高く、スピード感があると評価していただいています。私としても、日経さんと組めれば最強のパートナーになりますので、半年ほどかけて準備を進めてきました。

日経さんに期待するのは、ブランディングに加え、やはり「データ」と「マーケティング力」です。日経さんは人材開発に関する豊富なデータを持っていますし、圧倒的なマーケティング力があります。日経さんの顧客基盤に対してセミナーなどでリーチし、見込み客を集めていただけますし、逆に日経さんの商品を私たちが販売することも可能です。

一番の狙いは、我々の本業であるコーチングを軸にしつつ、日経さんと共に「人的資本経営」の支援を本格的に行っていくことです。

これまでのエグゼクティブ(経営層)向けに加え、ミドル層(管理職)にも広げていくということです。日本経済新聞はビジネスリーダーなら必ず読んでいますから、ブランド価値は絶大です。エグゼクティブコーチングに関しては多くの企業に導入いただき、非常に高い評価をいただいています。しかし、エグゼクティブ層の人数は限られます。一方でミドル層は数が多く、例えば1社で3,000人の課長・部長クラス全員にコーチをつけるような事例も出てきています。裾野の広いミドル層にリーチするために、日経ブランドは非常に有効です。

業務提携によるシナジーに加え、資本提携の部分では、まず日経さんには当社の株式の20%を持っていただきます。さらに、我々が計画している2026年9月期の連結売上高24.67億円以上を達成した場合、新株予約権を行使して追加で株式を取得し、保有比率を最大33.4%(3分の1)まで引き上げられる設計になっています。これにより、中長期的に日経さんと共に日本に人的資本経営を普及させていく体制が整います。

来期(2026年9月期)の業績予想は売上高21億円ですが、日経さんが権利行使できる条件は約24.7億円と差があります。21億円は、日経さんとのシナジーを含まず、我々の自力(オーガニック)で達成できる堅実な数字として出しています。各子会社長からの報告を積み上げ、「これはいける」と判断した数字です。残りの上積み部分は、日経さんとのシナジーによって達成を目指すという計画になっています。

 

研修市場の変化(集合型から1対1型へシフト)

最近の市場の変化として、「1対n(多数)」の研修スタイルから「1対1」のコーチングへシフトしています。大企業の経営者は研修効果をシビアに見ており、「1対1で個人の能力を伸ばした方が、企業価値が上がる」と確信を持ち始めています。それが人的資本経営の流れであり、この3年ほどで一気に拡大しています。株主総会などでも説明責任がありますから、より効果の見える1対1型が選ばれているのです。

実際に導入した企業からは、受けた本人からの「良かった」という声はもちろんですが、行動変容による成果が「見える化」されることで、人事部からも高い評価をいただいています。費用対効果が重要ですので、成果を可視化することは必須です。

売上構成比を見ても、1対1型サービスの伸びが顕著です。2023年9月期3億9600万円、2024年9月期4億2400万円、2025年9月期では6億3,600万円と、前期から約2億円以上増えています。まさにステージが変わった印象です。1社で3,000人の管理職にコーチをつけるような、日本を代表するグローバル企業のお客様が増えています。そうした方々が成果を出せば、グループ全体の企業価値向上に直結します。

 

事業売却(株式譲渡)

一方で、KDテクノロジーズの売却がありました。KDテクノロジーズはDXと購買コスト削減のコンサルティングを行う素晴らしい会社ですが、やはりHR(人材)領域とは少し距離がありました。お互いの成長のために、それぞれの道で伸ばした方が良いと判断し、全株式を経営陣に売却(MBO)しました。来期からはDX事業のセグメントはなくなります。

 

連結業績サマリ

2025年9月期は、売上高20億円(前期比125.2%)、売上総利益12億4800万円(同128.3%)、営業利益1億6300万円(同205.1%)、当期純利益1億2300万円(同227.7%)で非常に好調でした。

 

2025年9月期ハイライト

セグメントごとでは、人材開発事業の売上高が 15 億 9300 万円(前年同期費 123.5%)、セグメントの営業利益も 1 億 2900 万円(同101%)です。DX事業は売却したため来期はありません。

非常に満足いく成績です。仕組みで仕事をしているためリピート率がほぼ100%に近く、かつ案件が大型化していることが要因です。また、前期に優秀なプロフェッショナル人材を20名ほど採用し、一時的にコストはかかりましたが、それを補って余りある業績を残せました。

来期の2026年9月期は、DX事業がなくなった状態でも売上高21億円、営業利益3億円(前期比83.1%増)と大幅な増収増益を予想しています。既存のお客様のリピートと大型化が見えていること、そして昨年採用した優秀な人材が戦力化することから、オーガニックでの21億円達成は固いと考えています。

人材開発事業は非常に順調に推移しています。サービスの単価については多少の値上げを実施しましたが、売上増加の最大の要因は、単価の高い「1対1型」サービスの導入が大幅に増えたことにあります。従来の「1対n」型ではなく、個別のコーチングサービスの需要が急増しており、これが売上を牽引しています。

市場環境としても、昨年に比べてさらに強い追い風を感じています。大企業を中心に「人的資本経営」が企業価値向上に必須であるという認識が広まり、ビジネスコーチングが選ばれているためです。さらに、日経ブランドによる信用力の向上も大きなプラス要因となっています。

 

株主還元施策(配当)

株主還元については、連結配当性向30%、もしくは1株当たり50円のいずれか高い方を配当する方針をとっており、少なくとも50円の配当は維持される見込みです。2025年11月7日時点の株価(2,610円)から算出すると配当利回りは約1.9%となります。加えて、3月末と9月末に300株以上を保有する株主に対して、各5,000円分のデジタルギフトを贈呈する株主優待制度もあり、これを含めると実質的な利回りはさらに高まります。財務面では、実質無借金に近い健全な経営を続けています。さらに、KDテクノロジーズの売却益(約2億6,000万円)や日本経済新聞社からの出資(約6億円超)が加わることで、キャッシュポジションはより潤沢になり、安定した配当継続が可能となる見通しです。

 

人材開発事業

2025年9月期第4四半期の実績は、売上高4億2,800万円、営業利益1,900万円と、着実に利益を確保しています。

今後の成長戦略として、2026年9月期からは日本経済新聞社との提携を活かし、ミドル層(中間管理職)向けの1対1コーチング市場を拡大させていきます。このプロジェクトは半年前から準備を進めており、既に稼働を開始しています。

これまでミドル層への普及には壁がありましたが、まずはエグゼクティブ層が自らコーチングの効果を実感することで、その部下であるミドル層(部長・課長クラス)への導入が進むという流れができています。上司と部下の板挟みになりがちな中間管理職にとって、コーチング力は必須のスキルであり、自らコーチングを受ける必要性が高まっています。実際に、ある企業ではミドル層3,000人を対象としたプロジェクトも始動しています。

日本経済新聞社と組む最大のメリットは、「データに基づいた提案力」と「圧倒的な信用力」です。日経グループはビジネスパーソンの悩みやキャリア形成に関する膨大なデータを書籍やデータベースとして保有しており、これらを共有・活用することでサービスの説得力と質が格段に向上します。

競合他社から見れば、当社は単なる「コーチング専門会社」から、多様なソリューションを提供する「総合商社」のような存在へと進化したと映るでしょう。これが大きな差別化要因となります。

 

取引先企業数および1社あたり平均売上高の推移

2025年9月期の指標において特筆すべきは、取引先企業数が横ばいであるのに対し、1社あたりの平均売上高が飛躍的に伸びている点です。これは顧客企業に入り込み、対象をエグゼクティブ層からミドル層へと拡大させることで、関係性を深めた(アップセル・クロスセルに成功した)結果です。

 

プライム上場企業を中心とした強固な顧客基盤

導入企業には名だたる大手企業が名を連ねていますが、当社から売り込むのではなく、ほとんどがお客様からの「お問い合わせ」によるものです。定期的に開催している様々なセミナーを通じて関心を持っていただき、経営層から直接ご相談や発注をいただくケースが定着しています。

現在の取引先企業数は約300社ですが、その内訳を見ると、プライム上場企業およびその子会社が約7割を占めています。誰もが知る優良な大企業が多く、長きにわたってお付き合いさせていただいているのが特徴です。こうした大企業には数千人規模の従業員が在籍しているため、これまではエグゼクティブ層を対象としてきましたが、今後は部課長クラス数百人、数千人といった「ミドル層」への展開余地が非常に大きいと考えています。実際に、2026年に向けてミドル層への導入を検討されている企業も多く存在します。

近年、「人的資本経営」が叫ばれていますが、企業側からは「項目が多すぎて何から手をつければよいか分からない」「絵に描いた餅になりがちだ」という声も聞かれます。重要なのは、計画だけでなく、それを実際に遂行できる「実行人材」の存在です。今回の日本経済新聞社との提携におけるキーワードは、「実行人材」を「見つける」「配置する」「支援する」ことです。

具体的には、日経が持つ「NPA」などのデータやツールを活用して組織内のキーパーソン(実行人材)を見つけ出し、当社がコーチングによって彼らを支援し、企業価値を高めていくという役割分担です。まさに総合商社のように、特定・配置から育成までをクロスセルで提供できる体制が整いました。これは双方にとって非常に有益なモデルです。

 

2026年9月期連結業績予想

2026年9月期の業績予想についてですが、売上高は21億円を見込んでいます。前期比では4.8%増という数字ですが、これは前期にあったKDテクノロジーズの売却分を除外した数値です。実質的な主力である「人材開発事業」単体で見ると、31.8%増という大幅な成長を計画しています。さらに、日経との提携効果を含めた内部目標としては、売上高24億円超も視野に入れています。この数値は、既存顧客のリピートなど既に見えている数字を積み上げた「固い(保守的な)」計画に基づいています。売上拡大に伴い必要となるコーチの供給体制についても、万全の準備を整えています。前期に質の高い優秀なコーチを積極的に採用・セグメント化しており、需要増に十分対応可能です。

利益面に関しては、営業利益で3億円(前期比83.1%増)、当期純利益で2億円を計画しています。前期は株式売却益などの一時的な要因がありましたが、今期はそうした特殊要因を除いたオーガニックな成長のみで、大幅な増益を達成する見込みです。これは日経との提携効果を保守的に見積もったベースの数字となっています。

 

中期利益計画

中期的な利益計画について、数値目標に若干の修正を行いました。具体的には、売上高目標を2026年9月期は24億円から21億円へ、2027年期は30億円から28億円へ、2028年期は40億円から37億5,000万円へと見直しています。ただし、最終年度である2029年9月期の売上高50億円という目標に変更はありません。

この修正の主な要因は、KDテクノロジーズの売却により、その分の売上が連結から外れたためです。しかし、足元では人材採用を急ピッチで進めており、日本経済新聞社との資本業務提携をはじめ、他の優秀な企業との提携や出資も進んでいます。また、社内の組織変革も順調に進んでいることから、2029年の目標達成に向けた道筋は確実に見えている状況です。

2029年9月期の目標である「売上高50億円・営業利益10億円」という数値は、営業利益率20%という高い水準を示しています。この収益構造のイメージとしては、売上の約40%がコーチへの報酬などの「原価」、約40%が会社の運営費用などの「販管費」、そして残りの20%が「営業利益」として残る形となります。

 

経営戦略

当社の経営戦略の根幹にあるのは、単なる「コーチング会社」から「人的資本経営のプロデューサー」へと進化することです。これは、専門商社から総合商社へと業態を広げていくイメージに近いものです。

人的資本経営にはコーチングだけでなく、多様なサービスやツールが必要です。しかし、それら全てを自社単独で提供することは現実的ではありません。そこで、各分野の優れた企業と連携し、お客様に最適なソリューションを包括的に提供する体制を構築しています。

当社には既に約300社の顧客基盤がありますが、日経グループと組むことで、その対象は桁違いの規模に拡大します。日経やパートナー企業が課題や人材を「可視化・発見」し、我々がコーチングを通じて「実行支援」を行う。この役割分担により、企業の価値向上に貢献していきます。

 

業務提携による「人的資本経営のプロデューサー」構想の強化

プロデューサーとしての機能を強化するため、具体的なパートナー企業との連携を深めています。

パナリット社は、人的資本経営におけるKPI(退職率やエンゲージメントなど)を測定・可視化できるAIテック企業です。「可視化」は当社のサービスにおいても重要であり、データによって現状が明らかになることで、そこに対するコーチングの必要性が明確になります。企業の価値向上に直結する重要なパートナーです。

Job-Us(ジョブアス)社は、「ジョブ型人事制度」の構築・運用をAIで支援する企業です。大企業において、数千人規模のジョブ型雇用(職務記述書の作成や評価など)を紙やエクセルで管理するのは困難ですが、同社のAIサービスはこれを効率化します。制度というハード面をジョブアスが整え、その中で働く人の成長というソフト面を当社のコーチが支援する形です。非常に親和性が高く、当社も5%の出資を行っています。既に2社での導入が決定し、約17社のパイプラインがあるなど、急速に引き合いが増えています。

10年、20年前の経営者はHR(人的資源)への投資に消極的でしたが、現在は状況が激変しています。東証による人的資本情報の開示要請などが背景にあり、企業は「可視化」や「人材投資」に積極的に予算を投じるようになりました。

 

日本経済新聞社をはじめとした各社との業務提携による価値創出

こうした環境下で、日本経済新聞社との提携は最強の武器となります。彼らが持つ圧倒的な顧客基盤、データ資産、情報発信力、そして何より「ブランド力」は計り知れません。この強固なブランド力とパートナーシップを最大限に活かしつつ、その信頼を損なわないよう、質の高いサービス提供に努めてまいります。

 

「人的資本経営のプロデューサー」構想を体現する組織体制

2025年1月に実施した組織再編(持株会社体制への移行)には、明確な二つの意図がありました。

一つ目は「次世代リーダーの育成」です。当社で約10年間活躍し、非常に高い能力を持つ若手人材を、単なる本部長ではなく「社長」というポジションに就けることで、経営者としての成長を促し、会社の成長スピードを加速させたいと考えました。

二つ目は「事業の多角化と専門化」です。「人的資本経営のプロデューサー」を目指す上で、多様な領域の事業を展開していく必要があります。そのためには機能を分社化し、各社が専門性を持って取り組む体制が最適だと判断しました。

この戦略は功を奏しており、2025年9月期の好業績にも大きく寄与しました。この成功を受け、2026年度中にもう1社、新たなHRサービス会社の設立を計画しています。

現在は、持株会社の下に機能別の事業会社を配置しています。

コーポレートコーチ株式会社は、大企業に寄り添い、人的資本経営全体のプロデュースや提案を行う会社です。幅広いソリューションを提案する役割を担い、売上規模も前期の約10億円から当期は約12億8,000万円へと順調に拡大しています。

エグゼクティブコーチ株式会社は、高品質なコーチングサービスそのものを提供する、いわば「メーカー」としての機能を持つ会社です。

B-Connect株式会社(ビーコネクト)は、マーケティングおよびセールス機能を担う会社です。テック型商品の販売や、メーカー部門と連携した拡販を行い、市場への浸透を図っています。

当社の自己資本比率は約70%と高く、潤沢なキャッシュを有しています。この財務基盤を活かし、今後は大型のM&Aも視野に入れています。具体的なターゲットとしては、「HRテック企業」を想定しています。コーチング事業とシナジーを生み出すためには、組織の状態をデータで「可視化(見える化)」することが不可欠だからです。例えば、企業の風土や、従業員が会社のビジョンにどれだけ共感しているか(エンゲージメント)、現場に過度な負担感がないかといった定性的な情報は、外からは見えにくいものです。HRテックを活用してこれらを数値化・データ化することで、「御社は平均点が高いですが、他社と比較してこの部分が弱いですね」といった客観的な分析が可能になります。

組織の状態が可視化されれば、そこに対する具体的な解決策としてコーチングサービスを提供することができます。HRテックによる現状把握は非常に有効です。M&Aを通じてHRテック企業を取り込むことは、単なる技術の獲得にとどまりません。彼らが保有する顧客基盤に対して当社のコーチングを提供し、逆に当社の顧客に対して彼らのテックツールを提供するという、相互のクロスセルが可能になります。さらに、他社比較データという、自社だけでは入手できない貴重な情報資産を活用できる点も大きなメリットです。

今回の日本経済新聞社を引受先とする第三者割当増資によって調達した約6億円の資金使途についてですが、主な柱は「M&A」「人材投資」「システム投資」の3点です。

今回の増資分と、将来的な新株予約権(ストックオプション)の行使分を合わせると、日経グループから最大で約13億円の資金調達となる見込みです。計画では、そのうち約2億円を「クラウドコーチングシステム」の開発に、残りの約11億円をM&A資金に充当する方針です。

開発を進めている「クラウドコーチングシステム」は、当社のプラットフォーム戦略の要となるものです。具体的には以下の機能を実装する予定です。

行動変容データの可視化・・・クライアントの日々の行動や成果をデータ化し、可視化する機能です。

スケジュール調整の効率化・・・コーチとクライアント間の煩雑な日程調整をシステム上でスムーズに行えるようにします。

相性マッチングの最適化・・・データに基づいて、クライアントに最適なコーチをマッチングさせる機能です。

外部HRテックとの連携・・・これが非常に重要ですが、提携先のHRテック企業が持つシステムと連携し、コーチングの結果やデータを相互に繋ぎこむ機能です。

このシステムに継続的に投資し、機能を強化していくことで、サービス全体の質と利便性を高めていきます。

M&Aに関しては、約11億円という予算枠がありますが、必ずしも1社に限定しているわけではありません。何よりも当社とのシナジー(相乗効果)を最優先に検討しています。もし、非常に魅力的でシナジーの高い案件があり、買収額が想定予算を超えるような場合であっても、銀行借入などの手段を柔軟に活用して対応していく方針です。小規模な買収にとどまらず、ある程度規模の大きな企業と組むことで、より大きなインパクトとパワーを生み出していきたいと考えています。

 

日本とアメリカにおけるコーチング市場の比較

現在、コーチング市場は大きな変化の時を迎えています。「1対n」から「1対1」へのシフトが進み、エグゼクティブ層におけるその重要性が広く認識され始めたことは、当社にとって強い追い風です。

市場規模を比較すると、米国ではコーチング市場が約3兆円と言われているのに対し、日本は現在90億円程度に過ぎません。この圧倒的な差は、日本市場における今後の巨大な成長余地(ポテンシャル)を示唆しています。人的資本経営の浸透とともに、人材の実行支援を行うコーチングは、今後必然的に伸びていく分野であると確信しています。

米国では、部長や課長といったマネージャークラスにコーチがつくことは一般的であり、サクセッションプラン(後継者育成)や転職時の支援においても必須のプロセスとなっています。

日本でも雇用の流動化が進み、転職が活性化していますが、これに伴う課題も浮き彫りになっています。例えば、高額なコストをかけて採用した人材が、前の職場のやり方に固執して新しい組織に馴染めず、トラブルになったり成果が出せなかったりするケースです。これは企業にとって大きな損失であり、リスクです。

経営者や人事部は、「採用した管理職が自社のミッションに沿った行動をしているか」「費用対効果に見合う成果を出しているか」を知りたいと考えています。しかし、人数が多い大企業では現状を把握しきれません。そこで必要となるのが、HRテックによる「行動と成果の可視化」と、ビジネスコーチによる「実行支援」のセットです。データを基に課題を特定し、コーチングで行動変容を促すことで、転職者の定着と活躍を支援します。

私が目指してきたのは、企業の成長を支援する強固なエコシステムの構築です。日本で一番の顧客基盤と信頼、そしてデータを有する日本経済新聞社。実行支援を行う当社。そして様々なHRテック企業。これらが連携する体制を作りたかったのです。昨年度、日本経済新聞社という「最強のパートナー」を味方につけたことで、このエコシステムの基盤構築は完了しました。これからがいよいよ本格的な成長フェーズとなります。

今後の展望として、単なる「コーチングの先生」から、自ら事業価値を高める「プレイヤー」へと進化したいと考えています。モデルケースとして意識しているのが、米国の「ダナハー(Danaher)」グループです。彼らはM&Aを通じて多くの企業を傘下に収め、独自の改善システム(トヨタ生産方式などを研究・応用したもの)とコーチング的なアプローチを用いて、買収企業の価値を劇的に高めています。当社も、将来的にはM&Aを行った企業のPMI(買収後の統合プロセス)を支援したり、自らM&Aを行って企業価値を高めたりと、より深く経営に関与していきたいと考えています。

M&Aにおいては、財務的な側面だけでなく「企業文化の相性(カルチャーフィット)」が成功の鍵を握ります。水と油のように相容れない文化同士では統合は困難です。当社はコーチングやサーベイを通じて、組織風土や従業員の意識を可視化・改善するノウハウを持っています。これを活かし、M&A前のデューデリジェンス(買収監査)段階での文化調査や、買収後の組織統合支援などで貢献できると考えています。

実際、日本経済新聞社から提携の際にいただいた言葉で最も嬉しかったのが、「ビジネスコーチ社はコミュニケーション能力が高く、モチベーションも高い、非常に理想的な組織である」という評価でした。こうした信頼関係こそが、提携成功の基盤になると確信しています。

 

最後に

当社のお客様の多くはプライム上場企業であり、今後は日経グループや多くのパートナー企業と共に、日本経済を支える大企業の支援をさらに加速させていきます。その際、支援する我々自身がプライム上場企業でなければ、説得力に欠けるという思いを、社員一同が強く持っています。そのため、我々は早い時期での「プライム市場への上場」を目指します。自らが成長し、信頼される存在となることで、日本経済の発展に貢献してまいる所存です。引き続き、応援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 

ページトップへ戻る