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アイリッジ(3917) 小田社長インタビュー !スマホアプリ開発の先駆者! ~ネットとリアルの融合で、消費者との最適コミュニケーション機会を提供~


【3917】アイリッジ

開催日2025年 06月 16日
出演小田 健太郎 代表取締役社長

アイリッジの小田社長に、ビジネスモデル、事業内容についてインタビューしました。

企業理念 MISSION

アイリッジは、主に大企業、特に小売業を中心としたリアル店舗をお持ちの企業のスマートフォンアプリ、またその裏方のシステム提供をしております。

会社の理念、いわゆるミッションとして「Tech Tomorrow」を掲げております。これは「テクノロジーを活用して、私たちが作った新しいサービスで昨日よりも便利な生活を創る」ということです。アイリッジは17年前、2008年の、まさにスマートフォンが日本に上陸した翌月に創業いたしました。

スマートフォンの進化と共にアイリッジも成長してきましたが、まさにスマートフォンは「Tech Tomorrow」の一つの形だと捉えております。スマートフォンによって、今の生活は大変便利になりました。本を読んだり、お店で支払いをしたり、鍵の代わりになったりもします。17年前は「こうなったらいいな」と思っていた世界が今、実現しているのだと思います。そうした「少し先の未来にあったら便利だな」というものを創り続けていきたいという思いが「Tech Tomorrow」には込められています。

 

事業概要

ビジネスは大きく3つのセグメントがあります。

特に重要なのは「アプリビジネス事業」で、創業事業です。2008年、スマートフォンが日本に上陸すると同時に事業を始めておりますので、このスマホ領域においては、日本で一番長く、一番早くから取り組んでいる会社の一社であり、実質的に最も経験が長い会社です。売上の中でも44.1億円と、かなり多くの部分をこのセグメントが占めています。

「ビジネスプロデュース事業」は、マーケティングとコンサルティングを専門に推進している事業です。アプリを開発する上で「どういうアプリを開発すべきか」、あるいはクライアント企業様の成長に対して「どのように取り組むべきか」といったご相談にお応えしています。

お客様からすると、「アプリで何かやりたいが、具体的にどうすればいいか分からないので教えてほしい」といったニーズに応える事業です。アプリビジネス事業を進める中で、よりお客様のために取り組んでいくには、マーケティングとコンサルティングに強い組織があった方が、より力を発揮できますので、現在力を入れて進めている事業です。

つまり、アプリビジネスは「便利なスマホアプリを開発する」部分で、ビジネスプロデュースは、さらに上流の「企画段階から支援する」ということです。

 

アプリビジネス事業

アプリビジネス事業は、基本的には、BtoBtoCと申します。顧客は小売、流通、鉄道、銀行など多岐にわたります。こうした企業様向けの公式アプリ開発をお手伝いしたり、アプリに組み込むツールを提供したりすることで、クライアント様から対価をいただくのが基本的なビジネスです。

顧客には、例えば、コンビニのファミリーマート様や、ガソリンスタンドを運営されているコスモ石油様、鉄道ではJR西日本様、名古屋鉄道様といった会社のアプリ開発をご支援させていただいております。そういった大企業様と一緒にアプリを提供し、そのサービスを利用される消費者の皆様に、アプリというサービスを届けるのがアイリッジの基本的なビジネスです。

ビジネスモデルとしては、「ストック」と「フロー」に分けられます。アプリ開発そのものでいただく開発費用が「フロー」の売上です。それに加え、現在多くのお客様とは、開発を継続的に行い、少しずつ機能強化していく「ストック型」の契約を結んでいます。また、アプリに組み込むツールも月額利用料をいただくSaaS型のビジネスモデルですので、こちらもストック型です。このストック収益がしっかり積み上がりながら、開発支援の部分で大きく伸ばしていく、という合わせ技でビジネスを行っております。つまり、最初の開発費という「フロー」の部分と、その後の保守・改善という「ストック」、さらにアプリのライセンス料という「ストック」が収益の柱になるわけです。そのため、収益は比較的安定しております。このストック収益も毎年着実に成長しておりますので、安定した成長を続けながら、顧客のご支援ができている点がアイリッジの特徴かと考えております。

アプリの開発期間は、案件やお客様の規模次第ですが、最近は半年から1年ほどかかるものが多いです。何万人、何十万人が利用するような大手企業様の公式アプリですので、しっかりと便利で使い勝手の良いものを作ることが増えてきています。アプリは作って終わりではなく、より良いサービス、使い勝手の良いものへと進化させていくことが現在の主流ですので、そこを末永くお手伝いするのがアイリッジのやり方です。

このアプリの領域では非常にご評価いただいておりますので、ご紹介や先方からのお問い合わせで、新規のお客様からお声がけいただくケースが非常に多いです。小売・鉄道・銀行といった業界の大手企業様の中では、小売でシェア40%以上、鉄道では60%以上のお取引実績がありますので、自然とお声がけいただくケースが増えてきています。

分かりやすいのは、小売・流通業の企業様向けのアプリです。皆様もよくお使いかと思いますが、例えばクーポンが配信されるアプリが基本です。企業側の意図としては、お客様に何度も来店していただき、リピーター、そしてファンになっていただきたいという思いがあります。そのためのリピート促進策として、スマホアプリは非常に有効です。そのクーポンも進化しており、以前は皆様に同じものを配信していましたが、この十数年で進化し、個人の利用実績に応じて、その方に合ったクーポンを配信するのが主流です。

ビールを飲まない方にビールのクーポンをお送りしても効果は薄いですが、コーヒーが好きな方であれば、ちょうど良いタイミングでクーポンが届けば「行こうか」となります。そういったクーポンの出し分けは以前からありましたが、より進化しています。

そのアプリの裏側では、アイリッジが顧客ごとにアプローチを変える仕組みも作っています。アプリに組み込むマーケティングツール「APPBOX(アップボックス)」です。これが入っていると、ユーザー様のクーポン利用実績が蓄積され、自動で出し分けする機能までセットで提供しています。アプリを作る際に、クーポン発行機能や利用実績の解析機能を入れておくことで機能するのです。

さらに最近増えているのが、「なんとかPay」といったスマホ決済機能です。この支払機能をアプリに搭載する企業様が非常に増えています。これもお客様に何度も来店していただきたいという狙いがあります。決済は日常的に使う機能ですから、アプリに搭載されると自然に利用頻度が増え、情報に触れる機会も増えます。その結果、良い情報を見て来店したくなる、という好循環が生まれます。企業からすると、このアプリを使って自社のファンを増やし、リピートを促進していくわけです。決済(Pay)は、ファミリーマート様の「ファミペイ」、コーナン様やコスモ石油様も、アプリに決済機能を搭載してご活用いただいております。

企業のサービスによりますが、アプリ決済機能を使うと、そのお店で使いやすいポイントが貯まりやすくなるなど、使うことでお得になる仕掛けを用意されている場合が多いです。そういったポイントを管理する仕組みをアイリッジがご提供する場合もあります。決済システムは大きいシステムですので、別の会社様が開発されている場合は、そのシステムと連携して提供しています。

 

OMO(Online Merges with Offline)とは?

決算資料で「OMO」という言葉が出てきますが、これは「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインを融合するというマーケティング上の考え方です。各企業様が現在、熱心に取り組んでいる最中です。これまでは、オフラインである店舗のお客様はポイントカードで、オンラインであるECサイトのお客様は別の仕組みで、というように、顧客管理が分かれている場合が多くありました。そうすると、例えばネットで購入した商品について、次に店舗へ行った際に「あれに合う商品が欲しい」と思っても、情報が融合されていないことがありました。しかし、今はお客様に最適な購買体験を届けるために、それらを融合しようという動きが活発になっています。その際に、スマートフォンアプリが最適なツールとなります。今や、店舗で提示するポイントカードも、ECサイトへの入り口も、その多くがスマホアプリに集約されています。まさにこのOMOは、スマホアプリを起点に最適化できる動きとなっており、長くスマホアプリを手掛けてきたアイリッジが、より推進していこうと取り組んでいるところです。

スマホには特徴的なGPS機能があります。特にオフライン、つまり店舗でのビジネスにおいて、GPS情報を活用すると便利な体験を提供できます。分かりやすい例で言いますと、お店に近づいたタイミングで、ちょうど欲しいと思っていた商品のクーポンが届けば、来店しようと思います。家にいる時に届くより、その場にいる時に届いた方が効果的です。また最近では、お店の中でアプリを開くと店舗の情報が、家で開くとECサイトの情報が最初に出てくるといったことも可能です。位置情報を活用すれば、お客様がどこにいるか推測できますので、最適な情報を出し分けできます。オンラインとオフライン、両方の購買体験を最適化したいというOMOの思想を実現する上で、アプリは非常に有効な手段となります。今でこそGPSの活用は一般的になりましたが、アイリッジが創業した2008年当時は、スマホアプリ、ましてやGPSを使った開発をしている人や会社はごく少数でした。その中で、アイリッジは手探りでこの領域の最適な使い方を見出してきました。

 

「APPBOX」とは?

顧客企業は、多くの資金や人材を持つ大企業様ですが、アプリ開発には高い知見と専門性が必要です。そのため、専門家であるアイリッジに任せた方が良いものができる、と考えてくださる企業様が多いです。

「APPBOX(アップボックス)」は、「各ユーザーがどのようなクーポンに興味を持ったか」というデータを蓄積し、最適なクーポンを出し分けするといった機能を、アイリッジが標準で持っている機能群のことです。クーポン以外には、より基本的な機能で言いますと、「プッシュ通知」があります。これも単なるお知らせではなく、その人に合わせた情報を、状況に応じて出し分けすることが基本機能として備わっています。また、スマホアプリは日々改善し、ユーザーにとってより使いやすく、見やすいものに進化させていくことが非常に重要です。しかし、アプリを修正するたびにAppleやGoogleに申請し、承認を得て、ユーザーに更新してもらう、という手順が必要で、これでは進化のスピードが遅くなってしまいます。そこで「APPBOX」には、アプリの更新を伴わずに、ユーザーが使う画面をアップデートして使い勝手を改善していく、といったことを容易にする機能も搭載しています。シンプルな例では、トップページにある「クーポンを使う」というボタンの位置を、上と下とでどちらがユーザーにとって使いやすいかを試すことです。いわゆるUI/UXの改善です。そういった試行錯誤を行いながら、より良いアプリに進化させていくことがしやすいツールになっています。

アイリッジが強いのは、歴史的に大企業様向けにゼロから作るスクラッチ開発を得意としてきた点です。自社独自の先進的なアプリを作りたいという企業様からご評価いただき、個別開発するケースが多いです。ただ、ビジネスを伸ばしていく上で、より早く、安くアプリを作りたいというニーズも当然あります。そうした企業様にご提供できるよう、この「APPBOX」は、大企業向けのスクラッチ開発に組み込むことも、中堅・中小企業様向けに決まった機能だけをパッケージ形式で提供することもできるように進化させています。

競合のカードを組み合わせるように簡単にアプリを開発できるパッケージという概念では重なる部分はありますが、アイリッジはスクラッチ開発で培った先進的な技術や機能を、より活用できる業界にフォーカスしてパッケージ化しています。そういった業界ごとの特徴の出し方や、棲み分けで違いを出しています。

 

MAU 1億ユーザー超を達成!

アイリッジがご提供しているサービスの累計MAU(月間アクティブユーザー)は、1億ユーザーを超えております。これはあくまで通過点ですが、本当に多くの方にアイリッジが作ったアプリをご利用いただけている証だと考えております。「APPBOX」は、MAUに応じた従量課金制を基本としていますので、MAUが増えればアイリッジのビジネスも拡大していくという形です。そのため、先行きの重要指標として開示させていただいております。2018年の2,855万人から着々と増えております。これを見ても、企業様にとっても、消費者の皆様にとっても、アプリがなくてはならないツールになってきていることが分かります。それを支えるアイリッジの技術、開発力、サービスをご評価いただけている結果だと考えております。

企業は、アプリを導入し、アプリへの依存度を高めるような事業展開になってきております。少し前から「アプリファースト」という言葉がありますが、企業様にとって、消費者の方との顧客接点は、かつてのメールから、今や完全にアプリに集約されつつあります。お知らせもプッシュ通知で届きますし、アプリであれば、その方に合わせた情報を、最適なタイミングでお届けしやすいのです。個人ごとに容易にできるため、企業様にとってアプリはますます重要になっている、と強く感じます。

17年前当時は、いわゆる「ガラケー」でのモバイルインターネットが主流でした。アイリッジが創業した直前に、日本にスマートフォンが登場しましたが、最初の2〜3年は、実はそれほど流行らなかったのです。その中で、アイリッジはスタートアップの戦略として、すでに多くの企業が取り組んでいたガラケー向けではなく、新しく登場した、伸びるかどうかわからないこのスマホ領域でチャレンジした方が、勝てる確率が高いのではないか、という思想で取り組みを開始しました。結果として、スマートフォンがこれほど普及し、スタンダードになってくれたおかげで、アイリッジもこの領域で、日本で一番初めから取り組んできた一社として、確固たる地位を築けていると考えています。ガラケー向けの事業も、初めに少し手掛けていました。ガラケーもスマホも、両方少しずつやっていたのですが、やはりスマホの方に手応えを感じ、早めにこちらに経営資源を寄せたことが、今の成長に繋がったのだと思います。

 

ビジネスプロデュース事業

もう一つのセグメントが「ビジネスプロデュース事業」です。アプリを作る前に「どういうアプリであるべきか」「どういう機能を搭載すべきか」という点が、企業様にとっては重要です。自社でやりたいことはあっても、他業界も含めた先進事例を踏まえて、どうあるべきかを知りたいというニーズがあります。また、メールやWebからアプリに顧客接点が移る中でどう振る舞うべきか、あるいは、リピート促進策はクーポン以外にもたくさんありますが、それらとどう使い分けるのか、といった課題もあります。こうした課題解決には、開発やテクノロジーとはまた違った専門性が必要です。そのため、事業を分け、上流からお客様と一緒に最適解を考え、ご提案し、伴走していくチームとして、このビジネスプロデュース事業を組織しました。

アプリは作った後、3年、5年と使い続けていただく中で、時代に合わせた機能を提供し、進化させていく必要がありますが、その成長支援もこのビジネスプロデュース事業が担っています。入り口はフローのことが多いですが、継続的にご支援することで効果が出てくる部分も多いので、継続してご支援し続けるお仕事も増えてきております。お客様は、1つの業態で複数社とお取引させていただく場合もございます。例えば、鉄道業界では大手鉄道会社の大半をお手伝いさせていただいております。もちろん、そこは各社様ごとに最適化した形でお手伝いしております。

デジタルとリアルを統合するマーケティング、ビジネスプロデュースの事例について、ご紹介しているのは、日立製作所様向けの金融機関ソリューションに関する、BtoBtoCマーケティング戦略支援の事例です。日立製作所様が金融機関向けに提供するソリューションを、どのように情報発信し、マーケティングや営業活動を行っていくべきか、という点をお手伝いしました。これは、アイリッジのコミュニケーション、コンサルティング、マーケティングの知見を、近しい業界で事業を展開されているお客様にご提供した形です。

 

ストック型収益の推移

売上全体の成長も大事ですが、ビジネスの継続的な成長のためには、ストック型収益がしっかり伸びていることも重要だと考えております。前年同期比でプラス61%と大きく伸びたことは、非常に良い傾向だと捉えています。

このグラフで、ストック収益が2種類に色分けされています。青色の下の部分が、主に「APPBOX」に代表されるソリューションのライセンス収入です。オレンジ色の部分は、開発のご支援です。開発は基本的に一時的なフローの場合が多いですが、継続的にご支援し続けているお客様も増えておりますので、そうした案件をストック型の開発ご支援として、こちらに計上しています。100社を超える企業様と、基本的にストック型でお取引させていただいております。

 

事業の強み・特長

やはり先駆者であったからこそ、いち早く実績を積み重ねることができました。そして、実績が積み重なることで、さらに多くのお仕事をいただき、経験が積み上がる、という好循環が生まれました。このループの中で、多くの経験、実績、ノウハウを積み重ねた結果、優位なポジションと豊富な知見が蓄積された、という点が大きな強みです。様々な大手様の案件を手掛けていると、色々な工夫や、注意すべき点、そして、うまくいくための方法といったノウハウの塊が蓄積されます。これは、やはり経験の賜物です。それを、いち早く、多くの量で取り組ませていただいた結果が、このテクノロジー、開発力、スマホアプリという領域に積み重なってきたのだと考えています。

スマホアプリはGoogle Playなどからダウンロードできますが、その際の星の数、ユーザー評価も気にしております。評価を良くするということは、すなわち、使い勝手の良いアプリになっているということですから。評価が低い場合は、それを改善するお取り組みをお手伝いするのも、アイリッジの大事な仕事です。この領域の会社としては、しっかりとした組織を築き、大きくしてまいりました。しかし、市場は非常に伸びており、引き合いも多いので、今後さらに組織を大きくして、顧客ニーズに応えていきたいという思いがあります。

消費者の方にとって、企業との最初の接点がアプリになっていますので、各企業様がここに力を入れている状況は変わりません。そのご期待に応えられるよう、先駆者として培ったこの強みを、もっと伸ばしていきたいと考えております。顧客企業数が強みのバックグラウンドになっていると考えております。

競合他社が、アイリッジのアプリを見ることはできますし、アイリッジも逆に、日本に限らず海外の先進事例なども参考にしながら、より使い勝手の良いアプリは何かを日々研究しています。価格競争になりそうですが、そうなっていないです。見た目を真似して作ろうとしても、それを実現した経験や、実現できるチームが必要になるからです。真似しようと思って、明日すぐに誰もができるわけではないのです。これは、企業様が自社で開発しようとしても、すぐにはできないのと同じ理屈です。そうした経験、チーム、ノウハウを持つ会社の方が、結果として良いものを作りやすい、ということがあります。アプリは作って終わりではありません。作ったアプリをどう便利にしていくか、企業視点で言えば、どう成果を高めていくか、という取り組みは、まさに試行錯誤の継続です。企業と伴走し続けられるという点も、アイリッジの強みだと考えております。

 

2025年3月期 通期業績

2025年3月期の業績は、売上高67億円、売上総利益21.5億円、調整後営業利益2億5,900万円で、前期の赤字から黒字転換を果たしました。中期経営計画に沿った形で、しっかりと業績を出せたと考えております。売上高も、市場の伸長を背景に前期比17.4%の成長を達成できました。調整後営業利益についても、24年3月期にあった、開発がうまく進まなかった不採算案件が解消されたことにより、しっかりプラスに戻すことができました。前期から大きく伸長した要因は2つです。一つはお客様がしっかり伸びたこと、そしてもう一つは、前期にあった開発遅延案件が解消・改善されたことによる積み上げです。

 

セグメント別実績の概況

セグメント別では、全社売上高67億円のうち、アプリビジネスが44億円、ビジネスプロデュースが16億円、フィンテック事業が6億円という構成です。いずれの事業も、しっかりと伸ばすことができた1年でした。特に、主力のアプリビジネス事業は20%以上、それに追随するビジネスプロデュース事業も10%を超える成長ができておりますので、この成長を続けながら、さらなる成長を目指していきたいと考えております。

そして、フィンテック事業に関しては、IRでも開示しておりますとおり、2026年3月期中に事業売却について基本合意を締結いたしました。より大きな成長ができる領域にリソースを集中するという視点から、今回フィンテック事業を売却し、アプリビジネス事業とプロデュース事業で、さらなる成長を作っていこうと考えております。

アイリッジの季節変動として、第4四半期はどの年も数字が大きくなる傾向があります。これは、顧客の中心である大手企業様が3月決算の会社が多く、その期末までに開発を完了させ、売上が計上される案件が多いためです。ただ、今期については、新たに取り組んでいる「EX-DX事業」の影響もあります。「EX」は「Employee Experience」、つまり従業員の方の体験を、アイリッジが得意とするアプリやDXの力で向上させていこうという取り組みです。

今までは消費者がターゲットでしたが、今度は従業員がターゲットのアプリということです。OMOが消費者向けのサービスであるのに対し、その領域をさらに拡大するため、従業員の方にも便利になっていただけるよう、アイリッジの技術を提供しようと開示いたしました。

足元で開始しているのが、アルバイト紹介サービス「バイトル」を提供されているディップ様との資本業務提携を通じて、共同で提供開始した、「バイトルトーク」というサービスです。「バイトル」は、アルバイトを探している人と、飲食店などをマッチングするサービスです。この「バイトルトーク」は、例えば飲食店で働くアルバイトの方が、店長とコミュニケーションを取るためのツールです。これまでは公式なツールがなく、個人のLINEなどが使われる場合が多かったのですが、様々な事情で制約もありました。そうした部分を、公式で使い勝手の良いサービスにすることで、アルバイトの方も、企業側も便利に使えるコミュニケーションサービスを目指しています。飲食店で働き始めたアルバイトの方は、この「バイトルトーク」を自分のスマホに入れれば、店長と簡単につながれるわけです。「来週シフトに入れます」「今日、風邪で休みます」といった連絡が、簡単便利にできるようになります。これまで煩雑だったコミュニケーションが少しでも便利に、効率的になることを目指しています。

「バイトルトーク」を皮切りに、この「Employee Experience」、従業員の方が快適・便利に、定着率高く働けるようなサービスを、アプリを中心としたデジタルの力で創っていきたいと考えております。スタートはディップ様とのお取り組みで推進しますが、ディップ様のカバー範囲ではない領域については、アイリッジが広げて取り組んでいくことを考えております。コンビニやホームセンターなど、アルバイトの方が多い業態では、こうしたアプリのニーズは高いです。また、アルバイトの方だけでなく、最近ではアパレルやホームセンターなどで、接客スタッフの方が、自社の接客用スマホアプリで様々な情報を便利に活用するケースも増えています。在庫を調べるなどアイリッジのカバー範囲を広げ、従業員の方の働く体験を良くしていく、ということを広げていきたいです。

業績が良かったもう一つの理由として、「パートナープログラム」の参画企業を増やしています。アプリに組み込む機能群のソリューション「APPBOX」に関する取り組みです。これまでは、自社で直接提供することがほとんどでしたが、アプリの機能は多機能化しており、例えば決済機能一つとっても、裏側には決済システムの会社様や会員管理システムの会社様がいらっしゃいます。全ての機能を自社単独で開発するのは非効率なため、それぞれの分野が得意な会社様とどんどん連携し、お客様に良いものを早く提供していこう、という思想で取り組んでいるのが、この「APPBOXパートナープログラム」です。

パートナー企業に、機能群の一部を「利用していいですよ」と貸し出すようなイメージで各社様の強い機能と連携して価値を出していく、ということを進めています。例えば、ブレインパッド様のマーケティングソリューションは、アプリ向けの機能が十分ではありませんでした。そこで、アイリッジの「APPBOX」が持つアプリ向けのプッシュ通知機能を連携して使っていただいています。ブレインパッド様からすれば、自社でプッシュ通知機能を開発しなくても良いわけです。両社の強みが補完され、アイリッジとしてもビジネスが広がりますし、ブレインパッド様にとっても、自社サービスの強化に繋がります。こうした形で、パートナー企業様と一緒に「APPBOX」が使われるシーンを広げていきたいと考えております。

 

2026年3月期 連結業績見通し

2026年3月期の業績見通しは、中期経営計画で掲げている数字をしっかり達成することで、中長期の成長を進めていこうという計画です。売上高72億円、調整後営業利益3億円という形で、しっかりと伸ばしていく計画を掲げております。フィンテック事業の売上がなくなる分を、アプリビジネス事業とビジネスプロデュース事業がしっかりと成長することでカバーしますので、フィンテック事業を除いた既存事業は、引き続きしっかりとした成長をできていると考えております。

 

中長期の業績目標

2027年3月期には売上高82億円、調整後営業利益5億円、さらに2030年には売上高150億円、調整後営業利益15億円、営業利益率10%を目指しています。アプリを中心とするDX市場は非常に伸びており、アイリッジもそれを実感しています。17年前から先駆者として取り組んできましたが、まだまだ「アプリファースト」の時代は変わらず、むしろ、さらに強まっていると感じています。その市場の成長を、アイリッジもしっかり捉えて成長していく、という考えです。

アイリッジも17年間事業をやってきて、アプリがここまで生活に溶け込んで便利になる世界が、本当に近づいてきていると感じています。支払いができる、鍵になる、家に帰る前にお風呂を沸かす、といったように、生活のあらゆる動作の入り口が、アプリやスマホになっています。アイリッジが生活をより便利にしていく中で、このアプリの強みをもっと活かしていきたいです。そして、その活躍の余地は、消費者の方が便利になる世界だけではないと考えており、それが先ほどお話しした「エンプロイー」、従業員の領域です。そういった領域にも広げながら、世の中を良くしていくために、アプリの技術を使っていきたいと考えています。

2008年にiPhoneが登場したというデバイスの変化が、大きなビジネスチャンスを生み出しました。しかし、スマホも長く使われており、いずれ次のデバイスが出てくると思います。例えば、メガネ型のデバイスや、音声で操作する時代が来た時、このアプリビジネスは、今より伸びるのか、あるいは廃れるのか、様々な見方があると思いますが、私は、デバイスは進化していくものだと考えています。ウェアラブルになるかもしれませんし、音声だけの入出力になるかもしれません。ただ、現在の進化の延長線上で考えると、それらの機能を束ねる何かを、消費者が持つ必要があり、それはこのスマートフォンアプリである可能性が高いと考えています。

ただ、仮にそれが音声だけで完結するデバイスや、ウェアラブルデバイスに変わったとしても、アイリッジがやっていることの本質は「企業と消費者、あるいは企業と従業員のコミュニケーションを、その時々の最適なデバイスで、最適に提供する」ということです。デバイスが変わっても、同じことを移植すれば良いだけだと考えています。その時に大事になるのは、「どういうタイミングで、どういう情報を消費者に出せば、もう一度来店してくれるだろうか」という点であり、結局そこにフォーカスされます。それはアイリッジが17年間、ずっとやってきたことです。それを今のスマホではなく、音声やグラス(メガネ型デバイス)で表現する、という話に変わるだけですので、デバイスが多様化していくことは、アイリッジにとってチャンスが広がっていくことだと捉えています。

 

中期経営計画2027

中期経営計画の中では、5つの成長戦略を示しています。中期成長戦略のベースとして、各業界で活躍されている企業様とのパートナーシップで成長を加速させていこうという方針を掲げております。

その一例が、このビジネスプロデュース事業における沖縄テレビ様との業務提携です。会員制のアプリメディア構築に向けた協議を開始しておりますが、アイリッジが持つスマホアプリで情報を届けるノウハウと、沖縄テレビ様が持つコンテンツや沖縄エリアでの放送局としての知見を掛け合わせ、ユーザーデータを一緒に蓄積・活用することで、両社の取り組みを拡大していこうと考えております。コンテンツとデータの掛け合わせ、そしてアイリッジの強みであるアプリの開発力、この掛け算で取り組みを進めていこうとしております。これがうまくいけば、他のメディア企業にも広げていけると考えております。

広告代理店大手博報堂との合弁会社「HAKUHODO BRIDGE」を設立しました。コア事業であるアプリビジネスを、博報堂様とのパートナーシップでさらに伸ばしていく取り組みです。アイリッジのアプリ開発で培ってきた経験・ノウハウを、博報堂様が持つアプリ以外の広告やマーケティングの知見と掛け合わせることで、お客様の先の消費者へのリーチ手段を広げていこう、という取り組みです。

博報堂様にとっては、アプリ開発はまだ弱い領域でした。アイリッジがそこを補完することで、博報堂グループとしてアプリも一緒に提供できるようになります。クライアント企業様やその先の消費者様にとって、「アプリファースト」の現代において、アプリでの情報配信は非常に重要です。その世界観を、博報堂様とアイリッジで一緒に創っていこうという取り組みです。

広告主からすれば、昔のようにテレビCMや新聞広告だけではなくなっています。博報堂様は、スマホアプリなどを使った新しい広告手法を提案したい。そのために、アイリッジのアプリ領域のノウハウを一緒にご提供し、取り組みを進めていく、ということです。

博報堂様に出資いただき、資本業務提携を結ぶと共に、合弁会社「HAKUHODO BRIDGE」も設立しました。出資比率は、博報堂様が51%、アイリッジが49%です。

そこでは、アプリに限らず、博報堂様が持つWebやSNS、いわゆる広告といったものを一気通貫で統合したソリューションを提供できる会社を作っていこうと取り組んでおります。

重要な部分は資本業務提携と絡めて展開していく、という戦略です。ディップ様とは、アプリ以外のDX領域での広がりを作っていく、という形でパートナーシップを組んでいます。中期経営計画の目標達成のためにも、自社だけでなく、ご一緒できるパートナー様と、より強く大きな成長を作っていきたい、という考えで進めております。

 

最後に 個人投資家の皆様へ

アイリッジは、1億MAUの方々に使っていただける世界をご提供できております。特に大手企業様向けのスマホアプリご支援では、この業界で非常にご評価いただいております。実質的に一番である領域は、非常に多くあると思っております。

アイリッジは、このアプリ開発の領域で、多くの企業様、そして消費者の皆様が使われているアプリを支えている会社でございます。今後、さらに大きな成長を作っていこうと取り組んでおりますので、是非、応援いただけますと幸いです。どうもありがとうございました。

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