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マイクロアド(9553) 渡辺社長にインタビュー!Cookie規制は事業拡大のチャンス ~その戦略を聞く~


【9553】マイクロアド

開催日2024年 05月 22日
出演渡辺 健太郎 代表取締役社長

マイクロアドの渡辺社長に2024年9月期第2四半期業績、Cookie規制についてインタビューしました。

2024年9月期 第2四半期業績

売上は約70億円、営業利益は4億円でした。昨年の5月にタクシーサイネージの契約更改があり、それによる減収がありましたが、主力のUNIVERSEがそれを補い、社内計画を上回る着地となりました。タクシーサイネージのソフトウェア部分を弊社が担当していたのですが、リリース当初数年間は料率を高めに設定していただいていました。数年後に配分が下がる契約を当初から結んでいたため、決まっていたとおり料率が下がった形です。そのため、前年同期比では減収減益に見えますが、これは当初の計画通りです。

 

2024年9月期 通期業績予想に対する進捗

売上は計画の50%を若干下回っていますが、営業利益は55%、純利益は58%と、いずれも50%以上の進捗で計画通りに進んでいます。今期は下半期に売上を伸ばす計画でしたので、現時点では計画通りと捉えています。

 

UNIVERSEの季節性による売上変化

広告業界全般の話ですが、12月と3月が企業の決算期にあたるため、この時期に広告出稿が最も盛り上がります。弊社の決算は9月ですので、12月と3月は上半期にあたり、基本的には上半期が強い傾向にあります。

 

Cookie廃止に向けたテスト受容の取り込み(24年度下半期拡大策_1)

Cookie廃止のテスト需要の取り込みを以前から計画していました。Cookie規制のスケジュールが後ろ倒しになったのは残念ですが、準備の必要性を感じているお客様が増えているため、引き続き取り込んでいきます。

 

「中小顧客」と「大手顧客の直販」の売上拡大(24年度下半期拡大策_2)

また、中小企業のお客様の数を増やす戦略もとっています。BtoBなど広告予算がそこまで大きくない企業のお客様です。このような顧客基盤は季節変動の影響を受けにくいため、ここのベースを積み上げていくことで、下半期も堅調に売上を伸ばせるように安定化を図っていきます。

自治体向け広告も最近増えています。分かりやすい例ではふるさと納税です。広告を打つことで寄付が増え、税収アップに直結します。12月が一番多いです。観光キャンペーン、特にインバウンド向けの需要も増えています。人気のある観光地は別として、地方の自治体などは、海外からの観光客に来てもらいたいというニーズがあるので、そのようなキャンペーンが増えています。

 

UNIVERSEの顧客属性ごとの推移と見通し

弊社は基本的に広告代理店経由での販売がほとんどですが、大手のお客様の直販がここ1年で最も大きく伸びています。前年同期比で46%伸びています。eコマースや、クーポンを出してお客さんを店舗に誘導するような企業が増えています。ここでもCookieを使わないテストを色々行っています。直販は、弊社が直接お客様とやり取りするため、今後の見通しが把握しやすくなります。利幅については、商品によって異なるため一概には言えません。大手顧客の直販と中小顧客の部分を増やすことで、下半期の売上を安定的に積み上げていく計画です。以前と比べてかなり比率が上がってきているので、さらに伸ばしていきたいと考えています。

 

海外インバウンド需要の本格化(24年度下半期拡大策_3)

インバウンド需要は元々、中国からの訪日外国人がビジネスとして最も数が多いため、その対応を進めていましたが、想定よりも伸びませんでした。しかし、1月から3月期にようやく動き始めました。先日、上海のパートナー企業(旅行代理店も兼ねている)に確認したところ、個人旅行が動き始めたのは3月からで、3月の日本向けツアーは全て売れたとのことでした。これから本格的にインバウンド需要が来るのではないかと見ています。弊社の下半期にあたる4月以降にこれが当たると考えています。海外インバウンド需要をターゲットにした広告を出すのは、一般的な家電量販店さんが多いです。訪日外国人の売上が大きいためです。訪日前にクーポンを出したりして、日本に来た時に買い物に来てもらうような施策を行っています。

 

美容サロンサイネージ「OCTAVE」の収益化(24年度下半期拡大策_4)

美容サロンサイネージ「OCTAVE(オクターブ)」があります。美容サロンでは、ヘアカラーなどで長時間過ごす方が多いです。その時間で雑誌を読んだりスマホを見たりして過ごすことが多いですが、そこにタブレットを設置します。座っている方の前のところに設置し、様々なコンテンツを用意して、自由に動画などを見られるようにするものです。これを多くのサロンに設置し、広告メディア化する計画です。タクシーサイネージで分かったのですが、ある程度時間が余っている、あるいは時間潰しをするような環境にサイネージを置くのは非常に有効です。そうでない場所ではなかなか見られません。タクシーだと5分から10分程度ですが、美容サロンだと1時間、2時間と長いです。そのため、様々な広告を当てることができます。また、綺麗になった後には化粧品を買いたくなるという傾向が多いようです。そのため、美容関連商材とは非常に相性が良いと考えています。OCTAVEのサイネージは既に設置が始まっています。計画よりは少し遅れていますが、ある程度の設置が進むと、広告媒体としての価値が上がり、多くの人にリーチできるようになるため、売上も伸びていく構造です。

 

UNIVERSE稼働アカウント数と顧客単価の推移

稼働アカウント数の推移は中小顧客を中心に順調に拡大しています。第1四半期から見ると少し下がっているように見えますが、これは第1四半期に自治体などによるふるさと納税の広告が非常に多く、数が大きく増えたためです。第2四半期はそれがなくなるため、下がったように見えますが、特にネガティブな話ではなく、純粋に第1四半期にふるさと納税が大きく乗った結果です。前年同期と比べると着実に増えています。稼働アカウント数が増えれば増えるほど安定性が増します。

単価の推移は昨年の第4四半期に大きく落ち込みましたが、これは大手代理店経由の案件が大きく落ち込んだためです。昨年のこの時期は、他の広告会社も非常に悪かったので、マクロ的な景気要因が大きかったと考えています。単価を上げていくには顧客満足度を上げていくことが重要です。一度広告キャンペーンを実施していただき、弊社が得意とするデータ分析を使って配信します。「このような層には効果があったが、別の層にはあまり良い反応がなかったため、次回はこうしましょう」といった分析結果とフィードバックをしっかり提案することで、「なるほど」と納得していただければ、次回はもう少し予算を大きくしていただける、というような地道な取り組みが最も大事です。マイクロアドで広告を出すと成果が出てコスパが良いと思ってもらえれば、どんどん単価も上がっていくということです。新しい発見もあります。例えば、「40代男性が一番のターゲットだと思っていたら、実は若い女性が意外と購入していた。これは何故だろう?」といった気づきがあると、「じゃあここは新しいニーズがあるから、次回はそちら向けの訴求も増やそう」といった話になります。広告主の方々は仮説を持ってターゲットを設定しますが、その答え合わせができたり、場合によっては新しい発見があったりするわけです。コンサルティング的な要素でうまくフィードバックできると、次に繋がるわけです。それがうまくいっているからこそ、アカウント数も積み上がっているのだと思います。

 

2024年9月期 第2四半期連結業績まとめ

上半期は累計で計画を上回り、好調に推移しました。当初計画通りのデジタルサイネージの落ち込みはUNIVERSEが補い、戦略通りUNIVERSEの「大手直販」「中小顧客」が拡大し、ベースは順調に拡大しています。

 

データプロダクト「UNIVERSE」の業種特化製品

データプロダクトのUNIVERSEの中でも、特にBtoBの「シラレル」と地方自治体向けの「まちあげ」が順調です。また、直販中心のeコマースも引き続き順調で、ここは変わらず伸びている分野であり、マイクロアドとして最も強みがある特徴的な分野です。

 

Cookie規制と当社事業への影響

Cookieには大きく分けて2種類あります。「1stPartyCookie」と「3rdPartyCookie」です。基本的に、ウェブブラウザ(Chromeなど)でどんなウェブサイトを閲覧したかの履歴を、Cookieを使うことで集められる、というイメージです。

1stPartyCookieは、その事業者、例えばアパレルのECサイトの運営者自身が、自分のサイトに来たお客様のCookieデータを見て、アクセス解析を行い、サイトの改善に役立てるものです。例えば、トップページから特定のカテゴリーへのアクセスが低いから改善しようとか、ログインしているお客様がどのようなコンテンツを見ているかを分析して、サイトを使いやすくしていくものです。これは規制の対象にはなりません。プライバシーの問題ではなく、あくまでサイトの利便性向上のために利用されるものです。一度ログインしたら次に訪れた時もログイン状態になっていたり、カートに商品を入れたままサイトを離れて戻ってきた時に商品が残っていたりするのも、私とそのサイト運営者との間のことで、特に問題ありません。

 

規制される3rdPartyCookieとは?

一方、3rdPartyCookieが今後規制対象となるものです。3rdParty、つまり第三者が行うものです。先ほどのアパレルのECサイトの例で言うと、お客様がどんな商品を見ているかといったデータを、第三者の広告事業者が利用して、例えばお客様がそのECサイトを見た後、別のホームページなどを見た時に、直近で見ていたような商品の広告が表示される、といった経験があると思います。これが、第三者の広告事業者がCookieデータを使って、サイトを横断的にマーケティングする、という主な使い方になります。効果は非常に良いのですが、一方で「追っかけられているようで嫌だ」「怖い」といった声も昔から議論されていました。それがヨーロッパを中心に規制当局が今後規制していくと発表しており、GoogleのChromeに対して規制が行われるというのが、これから起こる変化です。Chromeは非常に多くの人が使っていますから。

第三者の広告事業者でリターゲティングだと、ナスダックに上場しているCriteo(クリテオ)という会社が最大手です。Google自体も行っています。一番細かいものだと「この商品を見ている」とか「このホテルを見ている」といった情報が蓄積されます。そうすると、その周辺のホテルの広告が表示されたり、かなり細かいデータを使ったりしています。ピンポイントで効果は良いのですが、プライバシーに近い領域だという認識です。色々なサイトを見ていると、なんとなくこの人がどんな人なのか分かってしまいます。Cookie自体が、どこの誰かという情報と紐付いているわけではないので、そこまで個人を特定できるわけではありませんが、「どこで線引きをするのか」という点で、規制されることになったということです。つまり、プライバシーの観点から、特にウェブ運営者ではなく、第三者がCookieでデータを取得することについて規制されるようになったのです。

 

PostCookie対策関連のアップデート

元々、2024年8月頃から段階的に廃止されると言われていましたが、最近半年延長され、来年(2025年)の1月からになりました。

 

Cookie規制スケジュールの背景

イギリスの規制当局の判断により遅れています。対象はGoogleですが、Cookieが使えなくなる代わりの代替として、Googleが事業者向けに新しいソリューションとして「PrivacySandbox」を準備しています。Cookieをやめて、もう少しプライバシーに配慮したやり方に変えようとしているわけです。ここで、Googleとイギリスの規制当局との間で、2つの要件を満たす必要があります。Sandboxが十分な機能を備えていること(ちゃんと機能すること)。Google自身も世界最大の広告事業者であるため、プラットフォーマーとして自社に有利な行為を行っていないか、つまりルールが本当に公平であるかという点です。この2つがクリアされないと規制が始まらないため、時間的に余裕がなく、これらが完全なものになっていないため延期されました。Googleが遅らせているというよりは、これらの公約を実現できるところまでまだ行っていないということです。Cookieの廃止と同時にPrivacySandboxが始まるイメージです。既に1%のユーザーはCookieが使えない状態になっており、実験的なことはできています。

 

デジタルマーケティングの手法とプライバシーデータ

Webマーケティングのざっくりとした流れですが、基本的に「認知」から始まります。検索で調べるにしても、商品名などが分からなければたどり着きませんから、テレビCMやYouTube、バナー広告など、何らかの方法でまずその商品やサービスを知ってもらうことが必要です。「こんな便利な商品があるんだ」と多くの人に知ってもらうわけです。認知されると、その商品名で検索されたり、一度サイトを見に行ったりする人が増えます。そうすると、先ほどのリターゲティング広告のように、一度サイトを訪れた人に対して再度広告が表示されるようになります。そして「購買」に至ります。購買後も、商材によってはリピート商材であれば、メールマガジンを送るといったCRM(顧客関係性マネジメント)でLTV(顧客生涯価値)を上げていこうという世界があります。Yシャツなどを同じところで何度も買うのは、サイズなどが分かっているのでリピートしやすいです。そういった優良顧客に対してキャンペーンやクーポンを出すのは効果が高いです。今回のCookie規制で最も影響を受けるのは、この「購買直前のリターゲティング広告」です。サイトを訪れた人に、サイトから出ていった後も繰り返しアピールする広告です。PrivacySandboxなどの代替技術で似たようなことはできるようになりますが、一対一の粒度ではできなくなるため、広告効果自体は下がると思います。そうすると、広告主からすると、「全体的に同じような成果を上げるには、リターゲティング広告ではない領域で効率を上げていかないと、同じような売上が出せない」という話になります。そのため、それ以外の例えば「認知広告」「ブランドマーケティング」や、購買後の「CRM」をもっと頑張る必要があります。今までリピート率が2回だったのを3回にしよう、といったように、他の部分でより努力しないといけなくなるのが基本的な変化だと考えています。なので、他の部分を改善し、そこに予算を使っていくことを考えるわけです。ブランドマーケティングの中でも、広い認知はあまり変わらないと思いますが、より絞った、より興味関心が高いであろう層に対して、しっかりと認知活動を行うことで効率を上げていこうという動きが出てくるでしょう。そこは弊社の得意とするところです。UNIVERSEは業種に特化した商品をそれぞれ作っています。例えば、BtoBの場合、部署や会社のデータを使うため、人事向けのSaaSであれば、人事部の人に伝えたいです。幅広くやってもあまり意味がない。そういったことが可能です。認知の中でも対象を絞った認知が非常に得意です。幅広いテレビCMのような形ではなく、データを使って、認知の中でもダイレクトの一歩手前ぐらいの領域です。

Web広告の市場規模は非常に大きく、ブランドマーケティングとダイレクトマーケティングにかけられている広告費用は1対4くらいで、ほとんどがダイレクトマーケティングと言ってもいいくらい市場が大きいです。今までダイレクトマーケティング、リターゲティング広告にコストをかけていた予算が、規制によって効果が薄れることで、ブランドマーケティングの方に流れてきて構成比は少し変わると思っています。少し変わるだけでも、ブランドマーケティングの市場がもともと大きいので、インパクトは大きいです。

 

PostCookie時代におけるマーケティングの変化

CRMの効率はやはり悪くなると思います。今まで1万円で新規顧客を獲得できていたのが、もしかしたら1万5千円になるかもしれない。一人当たりの獲得コストが上がっていく流れになるのではないかと考えています。そうすると、せっかく獲得した新規顧客をいかにリピートさせるか、LTVを上げようという話がより重要になります。一人のお客様を獲得するのが大変になった分、その人を大切にしようということです。つまり、ダイレクトマーケティングが縮小する代わりに、CRMの部分、既存顧客向けのマーケティングが非常に重要になります。しかも、1stPartyデータを使うので、規制の影響は全く受けません。既存顧客に許可された、ちゃんとしたお客様に対してアピールするから問題なくCookie規制の影響がありません。

 

PostCookie時代におけるマイクロアドの戦略

CRMは今まで弊社になかった領域です。2024年4月にM&AでUNCOVER TRUTHという会社をマイクロアドグループに迎え入れました。Cookie規制を踏まえると、このCRMの領域が非常に重要になるため、弊社になかったこの領域を強化する必要がありました。純粋にこの分野が伸びるという点ももちろんですが、もう一つは、この1stPartyデータ(優良顧客のデータなど)を使って、「どのような層が優良顧客になりそうか」というのを、ブランドマーケティングに反映していく、という狙いがあります。もちろん簡単ではないですが、これができるようになると、ダイレクトマーケティングとは違ったアプローチで、ピンポイントで優良顧客を捕まえることができるようになります。今まで購買直前の部分に広告予算が大きく流れ、そこでの取り合いだったのが、規制によってそこまでの精度でできなくなると、もう少し全体を見て、難易度は上がるものの、こういったことをしていかなければいけない、というのが大きな変化の流れだと考えています。

 

株式会社UNCOVER TRUTHに関して

UNCOVER TRUTHは「Eark(アーク)」というCDP(顧客データプラットフォーム)と呼ばれるデータ分析のプラットフォームを持っています。この分野の最大手にはソフトバンクグループ傘下のTreasure Data(トレジャーデータ)がありますが、Earkは比較的安価に導入できるのが特徴です。ECサイトなどを運営する企業が、このEarkを導入するイメージです。ソフトウェアだけでなく、コンサルティングも行い、導入をサポートしています。あとは、「コンテンツアナリティクス」というウェブ解析ツールです。企業のサイト構造やユーザーの流れを分析し、「ここをこう変えた方がもっと良くなる」という提案をします。例えば、「Yシャツのページになかなかたどり着けない」といった使いにくいECサイトがあります。そういったものをデータで可視化し、改善点を見つけるツールです。1stPartyデータを使えますので、ログインしていればどのようなお客様かも分かりますし、単純にサイト構成で「ここからYシャツのページに行く人が異常に少ない」といったデータは分かりますので、そのような分析をするツールです。そして最後に、このようなツールを導入しても、データアナリスト(データを分析したり、引っ張ってきたりする人材)がいない会社が非常に多いです。マーケティング責任者が「このようなデータを用意したい」と思った時に、すぐにデータを出せる人材がいたら良いのに、という会社が多いので、そのような人材支援も行っています。実際に常駐して業務を行うサービスも提供しており、ソフトウェアだけでなく、人材も提供するというサービスです。既存顧客のリピート率を高め、LTVを高めていくことを支援しています。ここからさらにマイクロアドとしてサービスの幅を広げて、このノウハウを認知の部分にも活かせるようにしたい、というのが中期的な目標になります。

 

「リターゲティング」商標を保有するマイクロアド

昔は、実はダイレクトマーケティングも行っていました。リターゲティング広告は、実は弊社が日本で初めて行ったものです。商標も持っているんです。なので、他の会社が使うと厳密には商標侵害なのですが、そうは言わないです。Googleなどはリマーケティングという言葉を使っています。

 

ダイレクトマーケティング事業からブランドマーケティング事業へ

一番最初にやったのは弊社ですが、リターゲティング広告は購買直前の世界で、類似商品との競争が激化し、さらに細かくなっていきました。かなり前にいち早く始めたのですが、「これでは限界が来るのではないか」と感じていました。購買直前の短い時間の争いは限られたパイであり、競争が激しく、レッドオーシャンになってきていたためです。ここに力点を置くのはやめて、データマーケティングで認知の領域は難易度が高いものの、誰もやっていないところなので、ここをやろうとUNIVERSEを作ったのです。規制が入ることまで予想していませんでしたが、ただ、どんどん細かくなっていくのはどうなのかな、というところもありました。予想していたわけではありませんが、ずっとこのままいかないのではないかという思いはありましたので、UNIVERSEに舵を切ったのが今となっては正解だったと考えています。非常に大変でした。2016年くらいから確信を持ってやっていました。2016年頃から、ソフトバンクさんとの業務提携や、CCCさん(Tポイントさん)との提携など、大手データプロバイダーさんと提携を重ねて、データをどんどん集めていったのが始まりです。

 

データプロダクト「UNIVERSE」のビジネスモデル

基本的に200社くらいのデータプロバイダーさんから様々なデータをお預かりしています。UNIVERSEは業種に特化していますが、データは、どの会社にも価値のあるデータばかりではありません。例えば、自動車メディアのアクセスデータは、自動車関連の会社にとっては非常に貴重なデータですが、お茶や飲料メーカーさんにとっては、基本的にあまり必要ありません。そのため、業種ごとに必要なデータを集めてきて、その業種に必要とされるマーケティングをそのデータを使って商品化していくのが特徴です。データも様々ですが、例えば自動車のWebメディアさんと複数提携しているのですが、アクセスログデータしか基本的にありません。どのようなページが見られていたか、というアクセスログです。それだけでは使えないのですが、AIを使いコンテンツやページごとに分析し、「これはトヨタのレクサスの何々という新車のコンテンツだ」といったように意味付け(タグ付け)をしていきます。そうすると、単なるアクセスログが、メーカーごとや車種ごとのデータベースになっていくのです。手間はかかります。ただ、それはAI(機械)がやるようになるので、だんだん手間がかからなくなります。そうやって、自動車のマーケティングに必要であるデータベースにしていくと、例えばメーカーや車種、そして価格帯が車にとって重要なので、予算があるため同価格帯の複数の車種を検討する、といったニーズに対応できます。このようにデータを整備することで、「このメーカーさんのこの新しいRV車(400万円台)をマーケティングしたい」という時に、やはりその辺に興味がある人たちだけに広告配信する、といったことができるのです。単にデータを仕入れてくるだけでなく、それを加工して意味付けをして、さらに複数の会社のデータを組み合わせて有効な形にしていきます。社内にデータサイエンティスト人材がたくさんいます。ある程度の興味がある人たちの塊で、弊社は商品として販売していますので、一対一のリターゲティングとは少し違うものです。そのため、代替技術で同じようなサービスは提供可能です。Cookie以外のデータも、やはり貴重なデータが結構あるので、「優れている」「劣っている」というのはあまりないです。Cookieでできることをこの手法であれば他の技術でもできる、というところです。加工したりして、最終的にその業種のマーケティングとしてどういうものが求められているか、というものがあるので、そこを実現できればCookieだろうがCookieじゃなかろうが関係ない、というところです。

 

クロスボーダー事業(新領域関連_1)

中国のアクティブシニア事業を展開する「上海東犁(シャンハイドンリ)」社と、日本で合弁会社「NewB(ニュービー)」を2024年4月に設立しました。中国は定年が日本より早いです。男性だと55歳、女性だと50歳です。そのため、非常に多くの人口が早期に退職し、時間を持て余す人たちが膨大な数で存在します。このドンリは、そのような人たちを会員組織化しています。カラオケ、楽器教室、旅行など、時間をたくさん持っている方向けの、そんなに高くない安価なエンターテイメントをたくさん用意していて、会員になるとその会員が友達を連れて、施設で遊んだり旅行に行ったりする仕組みです。そのため、会員が増えると、会員の友達も連れてくるような形で、どんどん人数が増えていきます。新しいマーケットなので面白いと感じています。また、中国は景気が悪いと言われていて、実際高級レストランなどは潰れています。例えば、サイゼリヤが非常に好調で、昔の日本のようなデフレ時代になった感じがします。そうすると、安価に余暇を過ごす、というコンセプトのドンリは伸びるだろうと考えています。そのような人たちを日本に呼び込んで、マーケティングをニュービーで一緒に行っていきます。中国でこれから余暇需要がどんどん増え、日本にお越しくださいというマーケティングがますます盛り上がるということです。

 

オルタナティブデータ事業(新領域関連_2)

UNIVERSEでデータ分析をしていると、例えば、自動車の分析から「なんとなくこの車種の売上が伸びるな」といったことが分かるようになってきました。もしかしたら投資に役立てられるのではないか、というところで、当初は機関投資家にデータを売ろうと考えていたのですが、検討に非常に時間がかかり、収益もそこまで上がらなそうだと感じました。それなら自分たちで投資しよう、と。予想精度が高いのであれば、自分たちでやるべきではないかというシンプルな発想です。データ解析の結果を使いながら、自分たちのお金で国内の個別株をロング&ショートしています。もちろんまだ課題はありますが、1月から3月期で2,000万円の利益が出ています。第1四半期は100万円くらいだったので、半期で言うと年利換算で11.9%ですが、第2四半期だけだと20%くらいです。現在4億円を運用しています。まだ2,000万円×4にはなっていませんが、やはり少しずつ精度が上がってきていて、10%から20%くらいのリターンは出せそうだという感触はあります。ただ、まだ安定しない課題があり、そこを一歩一歩改善しているところです。単純にデータ分析して「買いだ」「売りだ」と自動販売機的に答えが出るかと言ったらそうではなくて、やはり様々なマクロ経済イベントなどを見ながら、オルタナティブデータ(他の人が見ていないようなデータ)を付加してやっていくのが正解だと今は思っています。衛星から撮った写真で石油タンクの影の長さや駐車場の駐車量などを使ってやる、と言われますが、そういったものに近い色々なデータを使っています。ただ、仮にそれが正しいとしても、例えば為替の影響が激しく動くとそちらの影響の方が大きくなるので、「こっちのシグナルは買いだけど、イベントのマイナス影響の方が大きいとリスクがある」といった判断を複数の軸でしないと、やはり市場の動きに負けたり、他の変動要素で負けたりすることがあるので、いかに負けないようにするか、というのを課題として取り組んでおり、そこが少しずつ分かってきたので、結果も出せるようになりました。

 

最後に(個人投資家の皆様に)

Cookie規制は非常に分かりにくい部分ではありますが、かなり大きな変化が生まれるイベントだと考えています。弊社はこれを、長い時間をかけて準備してまいりました。結果として、おそらくどこよりもこの領域は先行していると思っています。スケジュール的には来年からですが、大きな流れが変わるという点で、中長期的に見れば弊社にとっては大きなチャンスになると考えております。ぜひ、この大きな流れというところを、長い目で応援していただけるような株主様を数多く増やしてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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