新薬メーカー業界研究 第1回
新薬メーカー業界についてです。
新薬メーカーは医薬品業界に含まれます。特にディフェンシブな業界に属しています。医薬品業界をアクションラーニングでは、新薬メーカー、ジェネリックメーカー、その他医療・医薬品の3つに分類しています。
国内医療費の推移をみると、右肩上がりで増えています。
45兆円に届きそうです。ものすごい額です。国の財政をひっ迫しています。
医薬品の国内生産額の推移をみると、横ばいです。
これは、ジェネリック医薬品の普及と薬価改定とによると考えられます。
医薬品は大きく分けて医療用医薬品と、OTC医薬品とに分けられます。医療用医薬品は、病院で処方してもらう薬です。OTC医薬品は、ドラッグストアなどで購入できる薬です。
医薬品・医薬部外品・化粧品・食品の区分をみると、医薬品のうち90%が医療用医薬品で、10%がOTC医薬品です。医療用医薬品のうち、金額でみると新薬が90%、ジェネリック医薬品が10%となっています。ジェネリック医薬品が出ていない新薬がたくさんあるということです。
世界の医薬品市場をみると、成長業界です。地域別医薬品売上高をみると、北米やアジアが大きく伸びています。リーマンショックの年でも伸びています。成長であり非常にディフェンシブな業界であるとわかります。
主要国別医薬品売上高のグラフをみると、アメリカ、中国が伸びています。しかし、人口を考えると中国はまだまだ伸びしろがあると思われます。全体としては、1兆ドル、105兆円を越える規模となっています。
地域別売上高のシェアをみると、4割が米国、中国が11%、日本が7%となっています。年平均成長率は、米国4.3%、欧州4.0%、中国6.7%に対し、日本は-0.2%となっています。日本が横ばいということがわかります。
アメリカは制度が違うので、医療費が非常に高くなるという背景もあります。そのことも覚えておいておかれるとよいでしょう。
主なメーカーは、国内では、武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共があります。ジェネリック医薬品では、日医工、沢井製薬、東和薬品などがあります。そしてその他では、小野薬品工業などがあります。アメリカの企業としては、ジョンソンエンドジョンソン、ファイザー、ロシュ、ノバルティスなど巨大企業があります。
ビジネスモデルをみてみましょう。
製薬企業があります。新薬を発明した場合、ほとんどの場合、医薬品の卸売企業に売ります。卸売企業というと、アルフレッサ、スズケン、メディパルなどです。ここを通して、病院や薬局に売られるわけです。製薬企業から卸売り企業に売る値段を仕切価といいます。卸売企業が病院に卸す値段を納入価、病院や薬局が消費者に売る価格を薬価といいます。薬価は固定です。決まっています。薬価差益が病院の利益となります。薬価差益は1~10%くらいです。
薬価は国によって価格統制されています。中央社会保険医療協議会が決定してます。ですので、政策的に損益が変動する仕組みとなっています。政府の匙加減で薬価が変わり、薬価が下がれば、納入価、仕切価ともに下がり、メーカーの利益が下がるということです。
国が薬価をどんどん下げると、国の財政は助かりますが、新薬メーカーの利益が下がることで、国内の新薬メーカーの開発力が落ちる可能性があるわけです。長い目でみると、薬価を下げてばかりいると、日本の新薬メーカーの元気がなくなり、海外の巨大企業から新薬を買わざるを得ない状況となり得ます。似たような業界としては、介護や保育の業界が当てはまります。
医薬品業界のキーワードは、ブロックバスターです。世界での年間売上高が1000億円を超える医薬品のことです。この開発のために、新薬メーカーは新薬の開発に研究開発費をかけるわけです。
研究開発には、基礎研究と非臨床試験と臨床試験があります。新薬メーカーにとって最も大切なとことは、基礎研究です。ですので、非臨床試験や臨床試験は外注しようとする流れがあります。
第一三共の資料によると、新薬の開発には9~16年、開発費用は数百億から1000億円超え、新薬と成り得る化合物2万5千個からやっと1つ新薬になるような物質が見つかるそうです。
それに対して、ジェネリック医薬品の場合は、開発期間3~4年、開発費用数億円となっています。ジェネリック医薬品にも開発は必要です。
新薬の特許は20年です。最長でも25年です。特許申請は研究開発の段階でされます。ですので、そこから開発や臨床試験などが始まるので、新薬が特許切れまでに売れる期間はわずか10年ほどです。ですので、薬価をあまり下げられると、新薬メーカーとしては、やってられない状況です。特許で守られているのは、最後の一瞬だけといえます。
新薬メーカーのIRの資料には、今、開発中の薬がパイプラインとして載っています。その中にブロックバスターになり得そうな薬があるのかなど、注意深く調べる必要がありますので、非常に難しい業界です。パイプラインとは、あくまで可能性としての情報です。すべてが成功するわけではありません。
特許についてです。特許切れを長引かせるために、残存する種々の特許を根拠に新薬メーカーは、ジェネリックメーカーに販売停止の訴訟を行ったりします。しかし、特許が残っていることがわかっていながら、仕掛けてくるジェネリックメーカーもあります。新薬メーカーの特許に対する姿勢を試しているわけです。このように新薬メーカーとジェネリックメーカーとの戦いが繰り広げられているわけです。
第2回に続く。