製粉業界研究
製粉業界についてです。
業種としては食料品に分類されます。食料品には、飲料、調味料、パン菓子ハム、飼料・製粉・製糖・即席めんなどがあります。
製粉とは、穀物をひいて粉をつくることです。特に小麦から小麦粉を作ることを指すことが多いです。小麦にも種類があり、硬質小麦からは強力粉ができそれからパンができます。中間質小麦からは中力粉ができうどんが作られます。軟質小麦からは薄力粉が作られケーキやクッキーなどが作られます。
小麦粉ができるまでをみてみましょう。まず、原料を輸入し、細かくくだき、ふるいにかけます。そして様々な検査をして包装出荷します。
原料の小麦は実に90%が海外産です。輸入先としては、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどです。
小麦の価格グラフをみてみましょう。
ここ10数年のグラフです。平成19年~25年頃までは、かなりブレてますが、ここ5年ほどは安定していることがわかります。小麦の価格が製粉企業の業績にとっては影響が大きいです。小麦の価格が上がることは、日清製粉にとってはマイナスです。円高になると、安く仕入れることができるのでプラスです。小麦価格と為替の影響を大きく受けます。
日清製粉のセグメント別のグラフをみてみましょう。一番下の製粉事業のグラフに注目すると思ったより安定しています。小麦の値段が上下している割に、安定しています。この原因について考えてみます。
輸入小麦については政府売り渡し制度というものがあります。政府が価格を統制しているのです。国外から輸入した小麦は一旦政府が買い取り、その後製粉メーカー等に売り渡します。ここで価格が安定させてくれているわけです。そして、製粉メーカーなどから直接消費者にいくものもあれば、パン・菓子メーカーに卸されるものもあります。大きく2ルートに分けられます。
2007年3月以前は完全に固定的な価格で売り渡される標準売渡価格制度でしたが、2007年4月以降は半年に一度は相場に応じて値段を変化させようという風に変わりました。
政府に買い取られた小麦は毎年4月と10月に、直近6ヶ月のシカゴの小麦価格変動を元に売渡価格が改定されます。製粉会社は2.3か月分備蓄しなければならないというルールがあります。ですので、実際に価格が改定されてから、その改定価格が値段に反映されるまでには約2ヶ月のタイムラグがあります。小麦を備蓄しているのは、万が一輸入ができなくなった場合への備え、安全保障です。
このように政府が価格統制を行っているため、製粉企業のセグメント利益については比較的安定しています。
ちなみに小麦粉の店頭値段のうち、小麦の仕入価格が占める割合は約24%だそうです。食パンですと、売価の6%、うどんでは1%が小麦の占める値段だそうです。
製粉のプロセスをみます。工場に搬入された小麦は細かくくだかれ、ふるいにかけられます。そして、検査をし、包装出荷します。
差別化できるポイントとは何でしょうか?
原料(品質)か値段でしょう。大手は価格競争にならざるを得ないのが悲しいところです。大手が価格競争するためには、大量生産と人件費削減などをするために、合併が必要になってきます。そのため、寡占化が進みます。日清製粉、日本製粉、昭和産業の大手3社で9割のシェアを占めています。そのため、日清製粉の製粉セグメントの利益は、政府による売渡価格の安定と大手3社の寡占による安定により、安定的な推移となっています。今後もこのディフェンシブな推移は続くでしょう。
日清製粉のセグメント情報をみると、事業の柱である製粉の利益率が低いです。利益の柱は食品事業であることがわかります。我々の生活を支える非常に重要なビジネスですが、収益性という面では、製粉事業は薄利多売です。
小麦粉の需要は国内では、横ばいです。製粉の出荷額も横ばいです。背景には、単身世帯や共働き世帯の増加によりパン食が増え、人口が減少している割には、小麦の需要は横ばいで推移しています。麦加工品の輸入量も横ばいです。
一世帯あたりの麦加工品への年間支出金額の推移をみると、パンへの支出が増えています。
小麦粉生産の内訳をみると、パン用が40%、めん用が33%、次が菓子用となっています。
製粉企業の数と製粉工場の数の推移をいると、企業数が減り寡占化が進んでいることがわかります。
大手の企業では、海外へ進出しています。海外ビジネスは案外利益が出るのではないかと思います。
製粉業界についてまとめます。
市場は成熟です。背景には、人口減少と米離れ、単身世帯や共働き世帯の増加が挙げられます。人口が減っている割に、製粉事業の売上は減っていません。
製粉は差別化が困難なため、大量生産化・装置産業化し寡占化が進んでいます。そのため、利幅は少ないが安定的な利益が出ています。原料は9割が輸入であり、政府が売渡価格を統制しているため、安定した業績となっています。
大手は海外市場へ展開しています。日清製粉では、アメリカ、ニュージーランド、タイ、オーストラリアへ展開しています。日本製粉はアセアン地域に展開しています。
世界的にみると、米より小麦の方が需要は多いのでポテンシャルはあるといえます。