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人材サービス業界研究


人材サービス業界についてです。

人材サービス業界はサービス業に分類されます。人材サービスというと基本的には人材派遣のイメージです。それから人材紹介、請負、人材情報サービスなどが目立ってきます。

人材派遣会社というと、パソナやリクルート、パーソルなどがあります。人材派遣会社が人を雇用し、その人材を企業に派遣します。雇用契約は人材派遣会社との間に結ばれているのがポイントです。ですので、給料は派遣元が支払います。派遣先は派遣料金を派遣元に支払います。

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人材派遣のスタイルには登録型と常用型があります。登録型は一定期間だけ派遣する形態です。常用型は派遣元に正社員という形で勤務している社員を派遣するものです。派遣会社との雇用関係は退職まで無期限です。登録型がメインになります。6~7割が登録型です。

例えば派遣先の企業が1時間2000円派遣元に払ったとします。そのうち約7割の1400円が本人に賃金として渡されます。派遣料金の内訳をみると、派遣社員への給料の他に、教育費用や社会保険料などの費用がかかり、営業利益は1.2%となっています。多い企業でも5%ほどです。非常に利益率の低いビジネスです。

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これほど利益が低い理由としては、差別化しにくいという理由が挙げられます。また、登録スタッフを集めるために、スタッフの給料は高く設定しないといけません。つまり、代替不可な個人の派遣でなく、特定の業務ができる人材派遣であるため価格競争になりやすく、かといって賃金を下げればスタッフの確保が難しくなるという板挟み状態です。そのため、薄利多売になりやすい業界といえます。このような業界で利益を伸ばすために、業界ニッチを目指すという戦略をとっている企業もあります。特定の技術者の派遣に特化するわけです。大手派遣会社のように、人材を多く集めて事務スタッフという大きなマーケットを薄利多売で攻めるか、技術者という人が見つかりにくいニッチな領域で売り上げ規模は少ないけれど利益をそこそこ出すという戦略をとるかどちらかだと思います。

次は人材紹介です。人材紹介企業に登録すると、マッチングして企業を紹介してくれます。雇用関係は求人企業(就業場所)と個人とが結びます。人材派遣とはそこが違います。労働契約が結ばれた時に、紹介手数料として年収の30%が、紹介業社に支払われるのが相場です。

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次は請負です。請負は、注文主企業が請負業者に業務を依頼し請負契約を結び料金を支払います。請負業者は人材を雇用し業務を行い、賃金を支払います。人材派遣との違いは、雇用者に対して指揮命令を行うのは、請負会社です。それに対し、人材派遣では労働者に対し指揮命令を行うのは派遣先企業です。ここが請負と派遣との違いです。

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投資対象として考えると、人材派遣と請負では請負会社の方が付加価値が高いです。それは、請負は独自の強みを持ちやすく差別化しやすいからです。自社で特別の領域に特化して正社員を雇って、他社と差別化して人を派遣するのかで、付加価値に大きな違いが出てきます。

人材派遣が利用されるのは、必要な時に必要な人材を必要な期間だけ雇えるからです。社内の事務処理能力のバッファーとして使われます。ですので、景気循環なビジネスです。また、募集・採用・教育費などのコスト削減や、社会保険等の加入など管理業務の削減のために派遣は利用されています。

業界地図を見てみましょう。総合人材サービスとして、リクルート、パーソル、パソナがあります。総合人材サービスが生き残っていくには、グローバル化しかないでしょう。国際化に今は追い風です。日本の企業が積極的に海外展開しているので、それに伴い人材派遣のビジネスチャンスも広がっているはずです。リクルートは海外売上比率が高まってきています。

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特定の領域に人材を派遣する技術者派遣には、メイテックやテクノプロ、WDBなどがあります。この辺りは、伸びました。景気循環の影響は受けやすいです。

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人材派遣には規制があります。1986年に労働者派遣法により派遣事業は始まりました。当時は、特定の業種であれば人材を派遣してよいというポジティブリスト方式でした。1999年に改正され、ネガティブリスト方式に変わり、特定の業種以外は派遣してよいと規制が緩和されました。そして2004年には製造業への派遣が解禁され、マーケットは更に広がりました。現在のネガティブリストは、港湾運送業務、単純労働分野の建設業務、警備業務、医業関係業務です。これらの分野の規制が緩和されると、派遣会社にとって大きなビジネスチャンスがきます。特に建設と医療分野への派遣が解禁されると大きな投資のチャンスでしょう。

雇用者の無期・有期雇用者割合の推移をみると、全体として労働者が増えており、特に非雇用者が増えていることがわかります。

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人材派遣業にとっては追い風の時代だったと言えます。背景には、女性の社会進出やシニア層の労働期間の長期化が挙げられます。社会が成熟化、高齢化しても人材派遣の業界は底固く推移していくと思われます。食料品などと違って、人材派遣は、社会が成熟してからも伸びしろのある業界と考えられます。

派遣労働者数の推移をみると、景気循環であることがわかります。

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リーマンショックでかなり落ち込んでいます。また、製造業などの規制緩和を背景として絶対数としては伸びています。派遣会社の売上高も景気循環の影響を受けています。

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グラフの赤色が常用型、青色が登録型の派遣です。世界の派遣市場の売上高の推移をみると、伸びています。総合人材会社は、グローバルに展開していけば、ビジネスチャンスがあると言えます。

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人材紹介や求人広告についも、景気循環の影響を受けます。求人広告の業界をみると、売上高が著しく伸びています。これは人手不足の反映でしょう。

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人材サービス業の特徴をまとめると、差別化が難しく薄利多売であります。専門特化している企業は比較的収益性が高く、大規模で総合化している企業は利益性を高めにくくなっています。女性の社会進出やシニア層の増大により需要も供給も人口構造的に豊富になっています。そして、売上の中心は人材派遣です。ビジネスの特徴としては、景気循環の影響を受けやすく、そもそも景気循環のバッファーとしての性格があります。グローバルにみると、成長市場です。また、規制産業なので、規制緩和があるとビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

人材派遣か請負(BPO)かであれば、請負の方が差別化しやすく投資対象としては魅力的ではないかと考えられます。

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