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調剤薬局業界研究


調剤薬局業界についてです。

調剤薬局は広く言えば医療のカテゴリーに属します。日本の医療費は、年間約41兆円使われています。そのうち入院に使わている額は16.5兆円、外来には14.2兆円、調剤が7.5兆円が使われています。とても大きな額であることに驚きます。

調剤医療費の総額の推移をみると、その額がすごく増えていることがわかります。

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2016年に調剤医療費が減った理由としては、C型肝炎医療薬の値下げがあったためだと考えられます。2016年の7.5兆円の調剤医療費は、大きく2つの内訳に分けられます。一つは薬剤料、薬代です。もう一つは調剤技術料、薬剤師さんたちへの手間賃です。

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2016年では、薬剤料が5.6兆円、調剤技術料が1.8兆円となっています。2015年から2016年にかけて、調剤医療費が減っているのは、薬剤料が減っているためです。これらのグラフから調剤医療の業界は成長していることがわかります。

調剤薬局の企業としては、アインHD、日本調剤、総合メディカルなどがあります。

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それらトップ企業の売上高を合計しても、調剤医療費全体の9%ほどにしかなりません。つまり、まだ寡占化が進んでいない業界だということです。市場自体が伸びているので、個々の企業がシェアを増やせば売り上げ増につながることが予想できます。とても魅力的な業界です。

調剤薬局のビジネスモデルです。

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処方箋を薬局に持っていくとします。保険適用前で10000円の薬を処方されたとします。調剤技術料は25%、2500円で、薬剤料は75%、7500円です。調剤技術料2500円はそのまま薬局の利益です。薬剤料のうち、おしなべて10%程度が薬価差益です。薬価差益とは薬の仕入値と売価との差です。ですので、7500円の薬剤料であれば、薬局の利益は750円になります。これらを合わせて、3250円が薬局の利益となります。これらのモデルから調剤薬局にも大手が有利というスケールメリットがあることがわかります。

薬の値段、薬価は厚生労働者が決めています。これは、政策的に変動します。診療報酬や介護報酬と同じです。医薬品流通システムをみてみましょう。

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まず製薬企業が薬を作ります。そのうち97%は医薬品卸に売られます。卸を通して、医療機関や薬局が薬を仕入れます。そして、医療機関や薬局から消費者に販売されます。その販売価格が薬価であり、決まっています。卸が薬局に売る値段は自由です。ですので、大手の医療機関や薬局は、その卸値(納入価)を値下げ交渉できるわけです。ここでスケールメリットが出てきます。また、多くの店舗を持っている薬局では、仕入れた薬を一括でどこかの倉庫に保管し、そこからそれぞれの店舗へ在庫を減らしながら、それぞれの薬局へ配送することができます。効率化ができます。このような点からも、薬局は大規模化することでスケールメリットが出てきます。今後M&Aにより業界再編が起こってくるでしょう。

薬価差益を見てみると、消費者が買う薬価と薬局が仕入れる納入価の差が薬価差益です。この相場は10%ですが、大手ではこれが15%くらいになるでしょうし、1店舗だけの薬局では5%になったりもするでしょう。

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調剤医療費がどんどん伸びている理由は、老年人口の増加によります。また、医薬分業の影響もあり、薬局での調剤医療費が伸びています。医薬分業とは、病院での治療と投薬とを分業しましょうという政策です。病院からしても、治療に専念できた方がよいということもあります。

薬局数及び処方箋枚数と分業率の推移のグラフです。

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緑のグラフが分業率です。年々増えています。処方箋枚数、つまり薬局で薬を処方する数も年々増えています。薬局数もどんどん増えています。成長市場だとわかります。

調剤技術料の内訳としては、調剤基本料、調剤料、薬学管理料があります。処方箋1枚当たりの調剤調剤技術料は、平均すると2240円だそうです。調剤報酬点数は1点10円です。

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薬局には、薬剤師を置かなくてはいけません。薬剤師がいないと薬局を開けません。

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小売業の中で、投資に魅力的な業界としては、コンビニ、ドラックストア、調剤薬局と言えます。

調剤薬局業界をまとめると、まず成長市場です。その背景には、老年人口の増加と医薬分業の進展があります。ネガティブな情報としては、販売価格が国に規制されています。薬価もそうですし、調剤技術料も1点10円と規制されています。他の小売り業態と違って、寡占化が進んでいない点は魅力的な点でしょう。薬局上位10社のシェアは市場全体の16%程度ですが、ドラックストアでは上位10社がシェアの70%弱ほどを占めています。薬局の伸びしろの大きさを示していますね。

 

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