長期投資家のためのIR情報
バリュートレンド

総合商社業界研究


 

総合商社業界についてです。

総合商社は卸売業になります。業種係数は12倍で低いです。最近のトレンドとしては、小売業社が直接生産者から仕入れて消費者に販売するという形になってきているので、卸売業はもう必要ないのではという声もあります。非常に厳しい状況です。業種係数が低いので直近実績×PERを計算するときには要注意です。

卸売業の内訳としては、まず総合商社があります。5大総合商社があります。三菱商事・三井物産・住友商事・伊藤忠商事・丸紅です。それから農水産専門商社や工業専門商社などいろいろな分野の商社があります。

5大商社の売上高の推移は、横ばいです。

sougoushousha1.jpg (100 KB)

リーマンショックの時に下がっていることからも、景気循環の影響を受けることがわかります。

sougoushousha2.jpg (151 KB)

5大総合商社の特徴として、三菱商事と三井物産は資源・エネルギーに力を入れている企業です。住友商事は、メディアに力を入れています。丸紅は穀物・食料、伊藤忠商事はアパレルなど、それぞれ特徴があります。三菱商事はローソンに、伊藤忠商事はファミマに、三井物産はセブンイレブンに出資しています。このように、1つの商社の中でもいろいろな事業を行っています。

総合商社のビジネスモデルを見てみましょう。これは、三菱商事のセグメントです。エネルギー事業では、石油やガス、LNGの開発や販売をしています。金属では、鉄鉱石や石炭の調達をしています。日本にとってみれば、これらの商事がないとエネルギーの調達に困るわけです。続いて、新産業金融とは飛行機などのリースや不動産の開発です。機械は、自動車部品を作ったり、輸出したり製造業といえます。化学品はプラスチックの原料や肥料などの調達をしています。生活産業では食料品の調達や繊維製品の流通などをしています。非常に色々なことをしています。

商社はいつも大きなビジネス、事業を探しています。そしてそれに対して投資します。商社はお金があるので、いろいろな企業が出資をお願いにきます。それに対し、商社は投資や融資をしたり、あるいは事業主体となって事業を行ったりします。商社の強みは世界中にネットワークがあることです。今までに投資や融資をしているので、ネットワークがあるわけです。海外で取引をするときには、海外ネットワークのない中堅企業にとってみれば、商社はとてもありがたい存在です。

資金調達が非常に有利にできるということも特徴です。社債の発行や銀行からの融資など、いろいろな形で資金調達ができます。

国と国の取引が多くなれば商社の出番も多くなります。TPPが成立して、世界と日本との貿易が盛んになれば、商社にとっては追い風です。

商社の決算書の特徴としては、莫大な資産を持っているということです。そして、投資・融資の額が非常に多いです。そして借入金も多いです。

商社の決算書で注意しないといけないことは、売上高の見方です。A社とB社をつなぐ場合に、商社が在庫のリスクを取る場合と取らない場合があります。たとえば、A社からB社に100円の物を利益2円で販売するとします。商社がいったん買い取らずに(リスクを取らずに)AからBに売る場合は、商社の利益は2円です。しかし、商社がいったん商品を買い取って(リスクを取って)Bに売る場合の売上は102円となります。さきほどみた三菱商事の売上高20兆円というのは、全てにおいてリスクを取ったとして計上した場合の売上高です。これは日本基準です。しかし、アメリカ基準で、リスクを取ったか取ってないかで売上高を分けて計算すると5兆9千億という売上高になります。

5大総合商社の自己資本比率は、どこも20%内外です。営業利益率は非常に低いです。少ない利幅のため、借り入れを多くしてビジネスの規模を大きくし、利益の絶対額を稼ごうというビジネスモデルです。ですので、株式市場の評価は低いです。PERが8倍くらいということからも、それがわかります。その理由は、借り入れが多いこと、業界自体が成熟していることが挙げられます。

総合商社と十把一絡げに言っても、景気循環的なエネルギー事業が利益柱になっている三菱商事のような企業もあれば、食料などディフェンシブな事業が中心となっている丸紅のような企業もあり、投資する際のポイントはそれぞれ異なります。

関連するガイドはありません
ページトップへ戻る