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医薬品・医療機器卸業界研究


医薬品・医療機器卸業界についてです。

医薬品・医療機器卸は東証の分類では、卸売業になります。卸売業の筆頭と言えば、総合商社(三菱商事や伊藤忠商事)が挙げられます。その他に、専門商社として、特定の商品を卸している商社があります。鉄鋼専門商社や食料品専門商社、そして医薬品・医療機器卸商社などがあります。医療機器の卸といえば、山下医科器械(山下ヘルスケアホールディングス)などがあります。

医薬品業界は高齢者の増加により成長業界です。国民の医療費もどんどん増加しています。薬局調剤医療費の推移をみても、非常に増えていることがわかります。成長業界であるとともに、日本の高齢人口が減少に転じれば、ピークアウトし成熟にうつるというふうに、今後についても予想しやすい業界です。

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医療機器についても成長しています。国内もそうですが、特に海外で成長産業です。

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アジアの医療機器市場は大きく拡大する予想ですが、これはおそらく中国の高齢化によるところが大きいでしょう。

世界の医薬品、医療機器業界で強いのはアメリカです。

日本は医療機器の輸入大国です。日本の貿易赤字の大きな要因は、エネルギーと医薬品です。

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医薬品・医療機器は国内・海外ともに成長産業です。ですので、その卸売業も成長産業です。そしてディフェンシブな業界です。注目の業界です。

医薬品卸の主要企業としては、メディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスなどが挙げられます。消費者の目に直接触れることのない企業ですが、非常に大きな売り上げを上げている企業です。しかし、どの企業も利益率が低いです。それは、卸の宿命といえるかもしれません。仕入れたものと販売するものが同じであるので、差別化がしにくいわけです。

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東証の決算短信集計を見ると、2016年の全産業の売上高営業利益率は6.15%ですが、卸売業では1.58%です。低いです。これが、卸売業全般の特徴です。

薬の値段を薬価といいます。薬価は、厚生労働省によって価格統制されています。これは、医薬品卸の特徴です。薬価は2年に一度改定されます。

医薬品の流通システムの図を見てください。

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製薬企業がまず卸売業の企業に売ります。そして、卸売業社が医療機関や調剤薬局に売ります。今現在では、卸業社の販売先としては病院より調剤薬局が多くなっています。ここ20年ほどで大きく調剤薬局のシェアが増えました。

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医療機関や調剤薬局が患者さんに薬を販売します。患者さんは3割負担です。残り7割は健康保険組合が負担します。払われたお金が、卸売業社や最終的には製薬会社に入っていきます。このような流れなっています。この流れの中で大切なことは、医薬品に3つの価格があるということです。まず一つは、医療機関や薬局が患者さんに売るときの価格です。これが薬価です。それ以外に、卸売業社が医療機関等に売る納入価と製薬会社が卸売業社に売る仕切価というものがあります。厚生労働省が拘束しているのは、薬価だけです。

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まず、製薬会社が卸売業社に仕切価で売ります。それをメディパルなどの卸売業社が医療機関等に納入価で売ります。この納入価と仕切価との差が卸売業社の利幅になります。そして最後、病院が患者さんに薬を薬価で売ります。薬価と納入価との差が病院の利益になります。この薬価は固定で他の価格は自由です。他の卸売業に比べて医薬品卸は国に守られて安定して利益を上やすい業界です。食料等に比べると、医薬品の方が取扱いに細心の注意が必要ですし、専門的な知識や能力も必要です。また欠品がないよう安定して供給する必要もあります。そのため、他の卸売業よりも専門性が高く、卸売業の中では、比較的利益率が高い業種と考えられます。

医薬品卸は大規模な企業があり、利益率が低いので、寡占化が進んでいます。まだ医薬品業界は成長しているので、今後も業界再編は進んでいくかもしれません。

業種係数も低くなっているので、直近実績×PERを計算するときも注意が必要です。低くなっている理由としては、成長性はあるけれども、非常にゆっくりとした成長性であることと、国の薬価に制限された中での利幅であることなどが理由として考えられます。

 

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