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倉庫・運輸業界研究


倉庫・運輸業界についてです。
東証の33業種の分類でいきますと、倉庫・運輸関連業で、過去平均PER、業種係数は17倍というところです。
倉庫・運輸関連業は大きく2つのカテゴリーに分類できます。ひとつは倉庫業で、もう一つは運輸業です。
運輸業というのは、例えばサカイ引越しセンター、引越し屋さんです。それからトランコム、空きトラックの情報と荷物を運びたいという情報をマッチングさせる会社です。また、上組という、港の港湾で行っている運輸業もあります。それから、郵船ロジスティクス、物流関係の会社です。

今日取り上げるのは三菱倉庫です。

倉庫業界の規模です。

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このグラフは、日本全国の普通倉庫に預けている商品の金額を合計したものです。普通倉庫というのは、冷蔵や冷凍ではないということです。
例えば2013年ですと2兆円ほどです。日本全国の普通倉庫に2兆円くらいの商品が保管されていて、それに対して倉庫会社は10日間でいくらみたいな形でチャージしていくわけです。
ですので、業界規模としては一時期やや下がっているんですが、この10年ほどは比較的増加トレンドにあるということです。倉庫に預けてある商品の在庫が増えてきているということです。在庫が増えてきているというのは、一つは、景気の見通しが良くなってきているので在庫を増やしているということと、ネットでの消費が増えてきているので各地に倉庫を増やして倉庫における在庫が今増えてきているということを意味しているかと思います。

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倉庫業界は大きく分けると普通倉庫と冷蔵倉庫という2つの大きなカテゴリーに分けられます。普通倉庫の中で最大手が三菱倉庫です。
だいたい関連の売り上げが365億です。財閥系でいうと三井倉庫が282億、住友倉庫が223億となっています。
冷蔵倉庫の業界で言うとニチレイが471億です。ヒューテックノオリンが268億、ヨコレイが204億となっています。それぞれの分野ごとに強い倉庫会社が違うというふうな状況になっています。

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倉庫業の仕事は、基本は倉庫を持っていて倉庫を貸すというビジネスです。倉庫貸しです。非常にシンプルなビジネスです。
10日間このスペースを貸すので、10万円くださいねとか、30日だったら30万くださいねみたいな形です。場所を貸してお金を貰うという非常にシンプルなビジネスです。
物流の流れでいきますと、例えばネットの通販会社が、商品を受注します。そうすると商品を預けている倉庫に指令を出します。出荷してくれと指令を出すわけです。そして倉庫会社は預かっている倉庫から、出荷します。それをトラックに詰め込んで消費者のところまで届けるというビジネスです。
倉庫会社はただ倉庫貸しだけをやっていたら、ビジネスの広がりがないので、今言ったように倉庫から荷物を降ろしてくるだけではなくて、倉庫会社の関連する前後サービスをしています。それを示したのがこの図です。

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今言ったのは、ピッキングというところです。あるネット会社が受注して、倉庫のLの3番の上から7段目の商品を出荷してくれという指令がきたら、「わかりました。取ってきます。」というのがピッキングです。場所貸しだけでは倉庫会社も儲からないので、他にもいろんなことをやります。例えば、ピッキングする前に出してきた商品に対して、梱包してあげますというサービスもあります。今パレットの上にバラバラに乗っているので、例えばお客様の注文に応じてダンボールに3個詰めてパッキングして、発送のラベルを貼ってあげます、みたいなことをやったりもするわけです。流通加工と言います。それから荷さばきをしたりもします。例えば山梨方面にこれだけ配達してくれ、あるいは関西の大阪方面にこれだけ配達してくれ、というふうに荷さばきをしたり、仕分けをしたりもします。こういう風な前後の作業も行ったりして業務を拡大してきてはいます。
ただ基本は場所貸しです。倉庫という場所を貸すというビジネスになっています。

この業界で今一番アツイのが、今画面に映しているところです。こういう変化が起こっているんです。

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画面の左の方が、昔です。右の方が今、最近の流行りです。
左の画面から見ていきましょう
昔は荷主企業、例えばキユーピーとしましょう、が、何万個と商品を作ってこれを出荷しますとこういうことがあります。食料品業の会社で、どこそこのスーパーまで送りたいよという荷主がいます。荷主企業は、直接スーパーに運ぶものは、運送会社さんに明日10万個出荷するから取りに来てくれ、例えばトラックが100台いりますという風に運送会社に連絡をとって、あるいは運送会社を取りまとめてくれる物流会社に連絡をとって段取りをしていました。あるいは、一部作りすぎたものについては倉庫に預けるということで、倉庫会社に連絡をして、何時に何個を持っていくからという風な形で連絡を取ったりしていました。荷主企業が物流会社・運送会社・倉庫会社にいろいろ手配して、その商品をコントロールしていたわけです。ただこれは、面倒ですよね。企業にしてみればマヨネーズを作ることが得意なんであって、マヨネーズをうまく出荷することは強みじゃないわけです。それが一番得意なことじゃないはずです。なのでそういう面倒なことは一括してまとめて代行してもらおうということで、このサードパーティロジスティックス(3PL)が今熱いです。
荷主企業がファーストだとして、運送会社がセカンドだとすればそのどちらにも属さないサードパーティーだということです。
サードパーティーが、物流全体を一括して請け負いましょうということで、今非常にこの事業に力を入れている会社が多いですし、かつすごく儲かっています。どんな会社かというと、トランコムなどです。
今までなかった、元請けというサードパーティー企業が出てきたわけです。元請けが一番儲かりやすいわけです。
今まではこの元請けというものが存在しなかったのが、サードパーティロジスティックス企業が出てきたことで元請が生まれました。これが最近の物流の大きな変化なんです。
なんでかというと物流に対して求められるものが非常に高くなってきたからです。
例えば、10年前とかあるいは20年前とかだったら、商品を注文してから、実際家に届くまで、あるいはスーパーなどに商品が届くまでに非常に時間がかかりました。そして、それに対してみんなあんまり疑問を感じなかったのです。しかし、今は amazon に代表されるように、今日注文して明日届く、あるいはもうアスクルとかだと今日届いたりします。つまり配送が早いというのがスタンダードになってきているし、なおかつそこにみんなが価値を感じているわけです。amazon でもそうです。配送のスピードを速くしてもらうためには一年間に何千円か払えば超特急で届けてくれる、そういうふうなサービスあります。
つまり物流自体に価値が生まれてきているわけです。
だから荷主企業は物流にお金をかけようというふうに意識が変わっているし、消費者側も早い物流、早く商品が届くんだったらプラスアルファになっても仕方ないというふうになって、つまり物流に付加価値が生まれてきているし、それが高度化しているわけです。
なのでこういうサードパーティー企業が必要になってくるわけです。
エンドユーザーから商品を受注してから翌日配送する仕組みを作るのはすごく大変です。なかなかそんな簡単にできるようなことじゃないんです。だからこ、こういうサードパーティ企業が出てくるわけです。倉庫会社もこのサードパーティロジスティクスに進出しようということで頑張っているところとあまり頑張ってないところとがあります。
あるいは運送会社の中でも、サードパーティロジスティクスに力を入れていこうと頑張っている会社があります。
なぜかといえば儲かるからです。利幅が大きいからです。
下請け、孫請けになってしまうと儲かりにくいですし、ましてや人件費が上がっていますから儲かりにくいということです。
なのでイメージ的に言いますと、このサードパーティロジスティクス、物流の中核を担う業界が儲かるということで、路線トラックの業界や倉庫会社などがサードパーティロジスティクスサービスに進出してきているというのが今の物流あるいは倉庫業の非常に大きな出来事です。
だからこのサードパーティロジスティクスをうまくやってる会社は非常に儲かっています。
トランコムや日立物流、センコーなどです。
それともう一つ大きな流れとしては、下請け企業や孫請け企業は価格競争になっていくわけです。元請けから買いたたかれて、価格競争になるわけです。そうするとM&Aが起こります。企業の規模を大きくして体力をつけて値下げ競争にも耐えうる、あるいは利益を出しやすいような体質にしていくという、価格競争のためのM&Aが起こってくるわけです。その代表例の1つがハマキョウレックスという企業です。

このように、倉庫業、物流業の中では今のような大きな流れが起こっています。
また、サービスの差別化もあります。このサードパーティロジスティクスに進出することで差別化する、あるいはセンコーさんなどがそうなんですが、運ぶ物を特定の領域の物に絞るということもあります。センコーさんは、住宅関係という特定の領域が得意です。また、非常に高価で重くて運びにくい機械などを出荷するのが得意な運送業者さんなども一つの差別化です。
非常には競争の激しい業界で、なおかつ今人件費が上がっている業界です。

その物流業界の中の非常に重要な役割を果たす倉庫会社で首位が三菱倉庫です。
倉庫会社も倉庫を貸すだけでは利益が出ないので、その周辺の事業、荷物を運んだり、取りに行ったり、海外への輸出や輸入の手続きを手伝うなどの港湾、国際一貫輸送などのを行うのが、この倉庫会社の今の特徴です。
それともう一つ非常に特徴的なのが、賃貸ビルやいわゆる不動産業をするというのを大手の倉庫会社は実はやっています。三菱倉庫の貸借対照表をみてみると、総資産の4割くらいが、倉庫や賃貸用の不動産になっています。
倉庫会社は、倉庫事業だけだと景気の変動を受けやすいので、景気変動の波に負けないように多角化しています。具体的には、不動産賃貸など分散しているわけです。

日本全体の小売りで、ネット経由で購入している割合は今まだ10%にいっていません。世の中でいろんなものが販売されて消費者が買っていますが、そのうち店舗で買われているのが9割以上なわけです。それがだんだんネットの方に移行するはずです。例えば今10%弱なのが20%まで上がるとすれば、それまでの期間は物流の形態はずっと変化していくわけです。サードパーティロジスティクスの企業はこの波に乗れるわけです。この変化が停滞した時がサードパーティロジスティクスが淘汰されていく、そういうふうな時代になるわけです。
ネットによる購買額が増加していくのが止まるまでは、このサードパーティーロジスティクスは伸びていくのかなというふうに見ています。

バリュートレンドをみてみると、倉庫業は成長が非常に緩慢であることがわかります。安定した推移をしているという点は、この業界のよいところかと思います。
倉庫業に関して限定していうと、消費の形態が変わり物流が非常に重要な位置を占めてきているという意味では、衰退はしていません。成熟の真ん中手前でしょう。そして、景気循環にとても近いディフェンシブな業界といえます。

この業界は構造としては価格競争に陥りやすい業界です。差別化しにくいです。差別化できるポイントは、この物流全体のオペレーションをすること、高度化している物流を一括してオペレーションしてくれることに価値があるので、やはりそこに出て行かないとなかなか厳しいのかなと思います。


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