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バリュートレンド

海運業界研究


海運業界についてです。
代表的な企業は日本郵船、商船三井、明治海運、川崎汽船などです。
事業内容としては、船を持っていていろんな荷主さんから頼まれて、物を神戸から横浜ですとか、あるいは海外などに運ぶ、特に海の上で物を運ぶというビジネスです。
詳しく見ていくと、例えばこの左上のこの船の写真、これは日本郵船のホームページから拝借したんですけれども、これはコンテナ船です。
コンテナが乗ってます。でコンテナの中に何が入ってるかというと食料品とかあるいは日用品、衣類とかそれから電化製品とかが入っています。それからこの船は、自動車専門船なんです。この大きな船の中に自動車が山盛り入っているわけです。
それから、ドライバルク船とかばら積み船と言われるのはこの右のものです。
蓋みたいなところが、パカッと開くと例えば鉄鉱石が入っているとか原料炭が入ってるとかセメントとか穀物とか木材が入ってたりします。
船の形を見れば大体何を運んでいるかが分かるということです。
次に左上は原油タンカーです。油がいっぱいです。
で最後こちらがLNG船で液化天然ガスを乗せています。

このように形を見れば何が運ばれているかが分かります。このタイプは原油が運ばれてるし、丸いやつは液化天然ガスが運ばれているということです。
この中で定期船って言われる、時刻表が決まっている船、何月何日何時にどこそこの港を出発して何月何日何時にどこそこの港に着くというふうに定期的にスケジュールを組まれて運航している船と、 不定期に荷主さんから個別にオーダーを出されて荷物を運ぶ船とに別れるんですけれども、この五枚出てきた中で定期船はどれでしょうか。
コンテナ船がいわゆる定期船と言われるものです。それ以外が不定期船と言われるもので、荷主さんと個別に1回1回輸送ごとに契約する場合もあるし、1年とか長期の契約でこの船を拘束する場合もあります。では、定期船と不定期船、どちらがドル箱ビジネスでしょうか。
実は明確に不定期船がドル箱です。
なんとなく決まった条件で毎月毎日という定期船の方が儲かりそうな気がするんですけれども定期船ビジネス、コンテナ船っていうのはイマイチ儲かってないんです。
例えば商船三井なんかに至ってはコンテナ船ビジネスが赤字です。
不定期船ビジネスで結構儲けています。ここはドル箱なんです。
不定期船ビジネスではそもそもビジネスの規模が大きいんです。
海の上を運ばれているものの大半が不定期船でそもそも運ばれているものなんです。
油とかあるいは鉄鉱石とかです。
なのでこの不定期船でいかに稼ぐかというのが実は海運業界のビジネスの肝になっているということです。

日経新聞のマーケット欄の右下の方だったと思うんですけれども、バルチック海運指数っていう指数が毎日書かれています。
バルチック海運指数の生のデータで収集できるものがなかったので、グラフが表示できないんですが、手書きでざっくり書きます。
アルファベットで略すとこのバルチック海運指数はBDIと略されたりします。
2008年から2015年までのこのバルチック海の指数をものすごくザックリとした動きを今からお示しいたします。
一番いい時で1万ぐらいでその半分で5000円、一番少ない水準で言うと1000ぐらいです。
そうするとこのバルチック海運指数、ドライバルク船のチャーター料がどれぐらいで推移してきたかというと、こんな感じです。リーマンショックで下がって、切り返したけれど、今1000ぐらいということでバラ積み船の値段がとにかく下がっているということです。
すごい下がり方です。1万の時があったのに、今1/10ですからすごい差です。
このバルチック海運指数というのが先ほどの、この右上の船のチャーター料の指数です。値段がどれぐらいかという価格指数を示したものです。
そもそも先ほど言ったように海運業のドル箱は不定期船です。
その中のドライバルク船の価格が先ほど見た通り1万から1000と大きくぶれてしまうわけです。
すると、海運業界の会社の業績は、変動幅が大きいということです。ものすごく業績が変動するんです。景気循環の影響を受けやすい、非常に業績の変動の激しい業界です。
株価の変動自体が非常に大きいのでちょっと業績のチャートが見えにくくなってますが業績は景気の変動を受けて動いてます。不定期船のバルチック海運指数が変動するわけだから、こんな業績を見ても、不思議じゃないですよね。
そういうビジネスだいうことが先ほどのデータでもって感じられるんじゃないかなと思います。

バルチック海運指数ですが、先ほど見たようにこれほど大きく変動しています。
この船のチャーター価格に影響を与える要因ってなんでしょうか。
船の需要に影響を与える要因としては、原油の消費量です。原油に対するニーズがそのまま船に対する重要としてはね返ってくるということです。
あとでデータで確認したいと思います。もう一つは供給サイドです。船が何隻あるかとうことです。
原油を運べるタンカーは世界に何万台もないわけです。数が限られているわけです。だから船の台数が1台増えれば価格は下がるし、1台沈んで使えなくなったとか廃船になったということがあれば、当然供給が減りますから結果的に価格が上がるということです。
なので船の数、この2つの要因が海運会社の業績に影響を与えてくるわけです。

今世界でバラ積み船やコンテナ船とか自動車専門船とか、船がたくさんウロウロしてます。この船が運んでるものは、たくさんありますが、何を特にたくさん運んでいるでしょうか。
主要なものだけですけれども、データがありますので紹介したいと思います。

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トップは原油ですこの紫色の部分です。
量が少ないもの、例えばボーキサイトとかはグラフから省いているので実際にはもっと母集団があるんですけれども、主なものというと原油が筆頭です。
世界の海を走っている船のうち原油を運んでるものが最も多いということです。
で次に多いのか鉄鉱石です。鉄を作るための材料です。そして石炭です。そして、穀物がこの緑色なんです。穀物より原油などの方がはるかに多いです。

なので、船に対する需要に何が最もインパクトがあるかというと原油なわけです。
つまり原油に対する需要が増えれば爆発的に船に対する需要も増えるし、船の価格も上がる、すると日本郵船の業績がバーンと跳ね上がります。
逆に原油がに対するニーズが減れば、船の価格が下がるということです。
つまり原油の消費量は結局世界経済の影響を受けますので、世界経済が好転するときには船に対するニーズが増えて油がたくさん運搬されて船の値段が上がって日本郵船の業績が良くなるということです。

もう一つ供給サイドを見ておきたいと思います。
船の供給に関しては実は、日本の企業による船の供給って多いんです。

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このグラフでいうと、日本は緑色の部分です。
2005年からちょっと飛び飛びですけれども、日本はだいたい横ばいですが200億トンです。それに対して競ってるのが、一つは韓国と中国です。韓国が伸びています。1番伸びているのが中国です。
これら3カ国が船を世界に供給して、結果的にバルチック海運指数が下がって海運会社の業績が今低迷しているということなわけです。
供給がどんどん増えてます。
世界中で消費される原油の量は確実に増えていくので、船もたくさんいります。この船の供給量の後ろに原油に対する需要をイメージ的に書くならば、原油の需要がすごく増えたので、船が足りないため船を一生懸命作ります。船ができた頃には世界経済が悪くなって原油に対するニーズが落ちます。すると船が余るので価格が下がります。するとまた景気が良くなってきて船が足りなくなってたくさん作る。こういう風に、船の需要と供給が循環しながら、いい時には需要が大幅に供給を上回って海運会社の業績が良くなる、その逆も然りでそういうことの積み重ねの結果が、先ほど見ていただいた日本郵船のこういう風な業績バリューチャートになるのかなと思います。
投資をするには難しい業界ですね。

船に関連する業界で言うと造船業、複合一貫輸送業者、港湾総合運送、気象情報会社なんかがあります。
造船関係でいうと、三菱重工、川崎重工、三井造船などです。この辺り大型船やもうちょっと小型の船も作ったりしていますけれども、原油タンカーからばら積み船などを作っているのはこの造船企業です。
そして、複合一貫輸送業者と言って、これアクションでも何度か取り上げたことがあるんです。例えばAITですと、要は船を使って海外からコンテナ船で衣類などを輸入するときに、現地の中国などの工場から出荷して、中国で通関手続きをやって、で日本で税関を通して店の倉庫まで運ぶという一連の手続きがあります。その手続きを一貫して行ってくれる複合一貫輸送業者というのがあります。

そして港湾総合運送といって、港に行くと大きなクレーンのような機械で船にコンテナを積んだり降ろしたりする港湾サービスがあるんです。例えば上組という会社があります。そして、気象情報ということで、切り口が違うんですけれど、ウェザニューズという会社あります。気象情報を配信してくれるビジネスです。
ウェザーニューズが何を気象情報として海運会社に売ってるかというと、どのルートを通ったら一番多い風で順調に進めるかという、航路情報を提供しているのがウェザーニューズなんです。
なぜかというと燃費が良くなるからです。風の向き、潮の向きによって、同じエネルギーを使っても、進めるスピード・量が違うので、その航路情報をウェザーニューズが情報提供して情報料をもらうわけです。それによって船を運航している会社は適切なルートを通り、燃料費がすごく安くなるという、そういうふうなビジネスです。面白いですね。
ウェザーニューズはすごくおもしろくて、自分たちで気象衛星を打ち上げたりしてかなり面白いビジネスをやっています。この先世界の気象変動があればあるほど、ビジネスチャンスが出てくる会社です。
ということで、海運業界は物を運ぶ、日本郵船など以外にも、船を作るというビジネスであったり、船を使って物を運ぶ人たち向けの複合一貫輸送というサービスであったり、港湾でのサービスや気象情報サービスなど、海運に関連するビジネスは色々あります。

海運で主に先ほどから話をしているのは海外と日本との間の輸送をイメージして話してるんですが、国内での港間での輸送量は徐々に減ってきています。

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内航、国内での船のやりとりで何を運んでいるかと言うと、一番多いのが鉄鋼とか原油、セメントとです。それから、輸送用機器というのは自動車です。

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今度は日本の船が国際間でどういうものを運んでいるかというデータです。切り口が輸出と輸入と三国間となっています。

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三国間というのは、例えば日本から見た時に中国からアメリカにとかそういうイメージです。青色の部分が日本から輸出する船の輸送量、赤色が輸出する船の輸送量で緑色は三国間、日本じゃない国から日本じゃない国への輸送量ということです。要は船をいろいろ使っているんですけれども、多くは輸入もしくは三国間で日本から輸出に使っている外航は非常に少ないということです。

今日の話で言えばAという場所が海外、B という場所が日本です。
日本に来る船は輸入がすごく多いので当然満杯です。
でも日本からの輸出は少ないですから日本からBに行くこの船は空っぽのことが多いということなんです。
だからここで、今安倍政権が頑張ってるのが、この本来外国に戻っていく空の船に農産物を載せて輸出するとかそういうことができれば非常に安い運賃でできるわけです。
今は輸入に偏ってます。


一応コンテナ船の世界の中での日本の企業の位置づけですけれども、商船三井で第10位、日本郵船で13位です。

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海運業界をプロットするなら、基本的には日本と海外との間の主に原油とか鉄鉱石のやりとりのビジネスですので、成熟で景気循環でしょう。
三国間取引、日本企業にこだわらず、例えばコカコーラの商品をヨーロッパに運ぶとかそういうビジネスをし始めたら成長軌道に乗るでしょうけれども基本日本の企業をお客さんにして日本と海外をつなぐ限りはこの辺りでしょう。

この海運業界は業績があまりにも変動が激しいし、世界経済の影響も受けます。競合他社の造船量にも影響を受けるので、非常に難しい業界です。

まとめると、海運事業といっても定期船事業=コンテナ船事業とそれ以外の不定期船事業があります。まずこの大きく2つに分けるということが大事です。不定期船事業が実はドル箱で、コンテナ船事業はあまり儲かりません。
この不定期船事業は、どうやって儲かるか儲からないかが決まるかというと、需要と供給の影響です。どういう影響があるかというと需要面では世界経済、特に原油や鉄鉱石の利用量によって決まります。鉄鉱石の利用量ということは、結局鉄の利用量ということです。そして鉄が何に使われているかというと主にビルや自動車です。ですので、やはり世界経済の影響を受けるわけです。ビルをどんどんを建てようとなったら鉄鉱石がどんどん売れます。鉄鉱石を使います。だから船で鉄鉱石を運びますとなるし、車も同じです。
なので世界経済の影響を受けます。
供給面では他社の影響を受けます。
そして、この業界の景気を示す上で象徴的なのがバルチック海運指数です。
このあたりが今日は一番大事かなと思います。
なので朝、朝刊を見て、バルチック海運指数を見ることですね。2000を超えてきたぐらいから、ちょっと海運業界がよくなっているのではないか?ということです。

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