印刷業界研究
印刷業界についてです。
カテゴリーとしては、その他製品に分類されます。
その他製品の中には、造船やその他製品という分類もあります。
業界規模ですが、衰退しています。
1990年8兆円ほど、1991年には約9兆円あった業界規模です。GDPが500兆として約2%弱の規模です。
9兆円程度をピークにして波打ちながらも下がってきて今や5.5兆円ほどまで下がってきているいうことです。かなりの減少です。この20年~25年ほどで、3.5兆円の市場規模縮小、約4割縮小したということで非常に厳しい衰退産業であるということがわかります。
なぜ印刷業界はこれだけ売り上げが減ってきているんでしょうか。業界規模が縮小しているのでしょうか。
印刷業界なんですが、すごい規模で装置産業です。大量に生産して採算をとるという風なビジネスです。印刷業界は大きくいくつかのカテゴリーに分けられます。
まず伝統的な印刷ということで出版印刷、その言葉の通りで本・雑誌です。出版社から定期的に刊行される出版物です。次に商業印刷というカテゴリーがあります。商業印刷は広告宣伝とか販促に使われる印刷物ということで、パンフレット、ちらしとかです。証券印刷は、証券類、カードです。それから、事務用印刷、ビジネスフォーム印刷というと、会社にカスタマイズされた請求書、領収書やクロネコヤマトなどの送り状などです。それから包装、その他特殊印刷、これは食品とか薬品とかのパッケージ、紙以外の食品とか薬品とかに印刷するというものです。
これらの出版印刷、商業印刷、証券印刷それから事務用印刷、包装の中で市場規模が一番大きいのは、商業印刷、パンフレット、チラシなどです。
出版はこの7年ほどで半減です。その他シェアが大きいのは事務用印刷です。上の水色のところは包装印刷でこれが食料品とか薬品とかです。
出版物は激減そして包装が増えているというのが、印刷業界の最も大きな特徴的なところかと思います。
本は売れない雑誌も売れない、それ以外は比較的安定しているんですが中でも包装は伸びているということです。
ということはこの業界の中でいろんな企業がありますが、出版に力を入れていた会社はつらい状況にあるということです。
では、もう少し具体的に見ていきましょう。
印刷業界大手は、大日本印刷と凸版印刷この2社ですね。
この2社による寡占化が進んでます。
売り上げ高トップは凸版印刷です。1兆5000億円。
で第2位はほぼ同じですけれども大日本印刷が1兆4000億です。
次となると、トッパンフォームズ、凸版グループで2600億とか、グループ外でいくと日写、日本写真印刷1000億で、要は大手2社、大日本印刷と凸版印刷の寡占市場であるということが特徴です。
次に見ていただきたいのが、凸版印刷と大日本印刷の利益率です。
大日本印刷が3.2%、凸版印刷が2.7%です。
収益性が非常に低いです。
この印刷業界は市場自体が縮小している、あるいは少なくとも成長していない、そのうえ過当競争になっていて価格競争です。コモディティー化しているというわけです。
このような業界で収益を上げる戦略としては、M&Aによるさらなる巨大化かニッチで攻めるかどっちかです。
普通であれば業界再編なんですが、もうすでに大手2社しかないのでM&Aをすると言ったところでもうその余地があまりないということなんです。儲からない業界だということです。
なので最後の手としては、海外に攻めていくということです。
凸版印刷であれば海外売上が17%、大日本印刷で海外売上15%ですので、頑張って出て行ってはいるけれども、それでもこの収益力であるということです。
差別化が難しいんですね。
ということでこの業界のビジネスの特徴としては基本、コモディティ化しているということ、差別化できないんです。
雑誌を印刷する、本を印刷すると、値段以外何で競争すればいいの?ということです。それ以外の部分での差別化が難しい。価格競争であるということです。
もう一つは先ほど見たように需要が減少していると、結果として寡占化が起きているということです。
需要が減少してる背景としては、IT化により紙媒体を使わなくなった、パンフレットやチラシを配らなくなった、新聞を取らずにネットで読むということです。
印刷物の減少の背景として、IT化が進んでるということが一つと、もう一つは新聞の折り込みチラシが減っていることが挙げられます。それは、チラシの効果がなくなってきているからです。それは、チラシに載っている商品自体もコモディティ化してる、価格でしか勝負できない製品ばっかりになってきているということです。
スーパーのチラシに載っているものも激安とか、価格でしか勝負できない、電化製品にしてもチラシを入れたってチラシで見てそれをネットで注文して終わりになっているんです。来店してまでそこの店で買うという理由がなくなっているということでチラシに掲載されている製品も基本的に多くの製品がコモディティ化しているので、チラシを入れたところで意味がないということになっているわけです。
日本全体がすごく豊かになって、物やサービスが溢れているので結局すべてコモディティ化してチラシが効かない、チラシを入れても無駄だということで、みんな苦しんでいるということです。あらゆる製品がコモディティ化してるのチラシを入れたところでパンフレットを作ったところであまり意味がないということです。DMについても、個人情報が取得できにくくなっているからDMを送りたくても送れないいうことです。
凸版印刷のバリュートレンドを見ると、循環してます。景気循環的に動いてます。これは、私は細かく分析してないですが、先ほど見ましたこの業界の中で非常に大きな規模を商業印刷が占めているということに関係していると思います。商業印刷、ここが循環するんでしょう。出版は構造的不況なんで全然ダメでチラシ・パンフについては景気が良くなればチラシの出稿も増える、広告の出稿も増えるということです。なのである程度循環的に動いています。
また、セグメント別の利益率を見ても、どれも収益率は低く強みが見えません。まさにコモデティ化していて突破口は見えないなというそういう状況です。
なので、結局分家のトッパン・フォームズは会社全体5%くらい利益率が上がってるので、そっちの方がいいのではないかという話になります。また、後で紹介しますが朝日印刷なんかですと、営業利益率7%くらいあげています。だからニッチで頑張っているところの方が収益率が上がっています。けれど、その分野に大手が参入するかというと、あまりにもニッチすぎてわざわざそこに参入することもないだろうとなります。やるならM&Aして子会社化してしまってもうそれで終わりとなるでしょう。
自社でまたわざわざ一からそういうことをやる必要ないだろういうことです。
朝日印刷は医薬品の包装に特化しているところです。朝日印刷はこの低迷する印刷業界において唯一伸びている包装マーケットで頑張っている会社です。医薬品なんかの包装パッケージの印刷をしている会社です。医薬品なので求められるその品質水準が高かったり、例えばバーコードなどでナンバリングしたりしますので、通常の印刷物とちょっと違ったノウハウが必要になってくるということです。これは確か富山の会社です。
医薬品の服用量が増えています。日本は高齢化していて、高齢者の方が増えています。医薬品の消費量が増えると、ジェネリックだろうが新薬だろうがパッケージは必要ですから、そちらに印刷するという意味では消費量は増えていくということですね。
ということで、印刷業界、結論として投資するならは大手ではなくニッチです。朝日印刷とか、あるいはトッパンフォームズとかビジネスフォームに特化している会社なんかに注目です。あるいは日写、特殊印刷の日本写真印刷です。ニッチな業界で攻めていくというところでしょう。
マトリックスで表すと、大日本印刷や凸版印刷は衰退。ディフェンシブか景気循環かというと、印刷の種類によるでしょうが、ビジネスフォームなんかだったら比較的ディフェンシブだし、出版印刷とかあるいは商業印刷であれば比較的景気循環ということで、やや景気循環よりかと思います。