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バリュートレンド

医療機器(器具)業界研究


医療機器業界についてです。
医療機器というとニプロに代表されるようなカテーテルとかキヤノンに代表されるような画像診断装置とかですね。
また、マニーに代表されるような手術針とかです。
そういった業界ですけども拡大です。どう考えても成長市場です。
なぜなら人口が増えてるし、しかも世界は徐々に高齢化が進んでますから、人口に占める老年人口、医療が必要な人たちが増えていきますので非常に息の長い成長産業になるはずです。なので、良い企業を選んで買っておけばきっと10年20年延びるんではないでしょうか。

データの方で見ていきましょう。

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まず世界の医療機器市場の状況です。単位が億ドルです。5000億ドルというと50兆円くらいです。
主なアメリカ、ヨーロッパ、 日本、アジア の推移です。
市場規模が非常に大きいですね
それだけに大きな企業が参入してきて競争が激しいとも言えます。伸びていますね。刻みが4年ないし5年刻みなので若干年が飛んでますから急激に増加しているように見えますけれども、でも 5年4年でこれだけ増えたらすごいですよね。
全世界で伸びています。市場も伸びています。
ましてや今は画期的な、今まで考えられないような医療も出てきてますよね。
何か思い当たりますか。20年前、私今でもすごい印象に残ってるのは、がんになったら絶対死ぬという暗い雰囲気のドラマを見たことが記憶に残ってます。けれど、今では再生医療、ロボット、ダビンチですね、遠隔でものすごい細かい動きをする機械とか、非常に今までになかったような新しい治療法が出てきているので医療にかけるお金自体が拡大していくわけです。
とにかく成長産業です。
ただ良い話も悪い話もあるのでもう少しデータに基づいて見ていきましょう。

次が医療機器の中でも国内の生産金額です。

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日本国内で作って日本国内で使うかあるいは輸出するかどちらかですね。それが水色のグラフになります。もう一つ赤の方が輸入金額になります。これの経年変化のデータです。輸入が伸びていますね。輸出より輸入の方が多いですよね。医療機器高いですし、貿易赤字の原因の一つですね。
日本はこれだけ高齢化していて医療のマーケットが大きい国なのに 、実は結構日本の製品って競争力がなくて輸入ものを使っているんです。
どこから輸入しているのかというと、輸入先として多いのはアメリカ、それからアイルランドからはコンタクトレンズの輸入が多いです。それからドイツなどですね。
アメリカはIT、情報産業が非常に目立ちますけれども、もう一つがやっぱり医療です。医療機器で日本は草刈場というか非常にお世話になっているということです。 このグラフはですねちょっと頭の片隅に置いておいていただいたらいいと思います。生産金額も伸びてるんだけども、輸入の伸びに比べると全然たいしたことない、輸入の方がはるかに伸びてるということです。なのでやはり日本の国策としては、輸入が増えて国内生産がもう逆転されそうなくらいだという時に日本政府としてはやはりやりたいことは、今現実にやってますけれども規制緩和です。規制を緩和して、例えば海外で治験 ができるけれども日本ではできないみたいなことをなくしていく、あるいは承認が出るまでの期間を短くして日本国内初で医療機器とか医薬品の開発をできるようにということですね。こういう背景があるわけですね。

もう一つデータ見てみましょう。

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こちらは国内の出荷金額です。国内の市場規模と思ってください。国内出荷金額が水色、日本国内から輸出している金額が赤色になります。
まず、輸出が少ないですね。輸出が伸びていない。実は日本の医療機器ってあまり競争力がないんですね。
日用品の方が広く受け入れられている感がありますね。化粧品とかね。
市場規模は拡大しているが輸出がそれほど大きくないということ、ディフェンシブか景気循環かと言われれば機械ですけれども、やはりディフェンシブな性格があるといっていいですよね。
機械なので、医薬品のように消耗品ではないので景気循環的かなぁという気もするんですけれども、比較的安定して需要があるということです。このあたりも注目していただけたらいいかなと思います。
医療の市場、医療機器の市場は伸びてるけれども、日本はイマイチその恩恵にあずかれてないです。アメリカなどにやられているよということです。

もう少し今日はマニアックに踏み込んで見てみましょう。
医療機器はいくつかカテゴリーがあるんですけれども、その中で代表的なカテゴリーが治療系と診断系とその他に分けられます。

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この中でどの系統が伸びているのかというと治療系が最も市場規模が大きくなおかつ伸びているということです。
治療系の医療機器とは何かというと、カテーテルとか採血輸血をする機械とかメスとかガンマナイトとかです。そういったまさに処置に必要なもの、手術に使うものが伸びているということです。
もうちょっとマニアックになりますが、今治療系と診断系この 2つに注目します。

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治療系、この青色が治療系の輸入額です。この紫のグラフが治療系の輸出額です。見ていただいたらわかるように治療系、カテーテルだとかメスだとかそういったものは圧倒的に輸入に負けているといます。1兆円ぐらい輸入しています。
一方画像診断システム、診断系などは、この赤色の方が輸出で輸出の方が勝っています。
製造業のこの日本で治療系は輸入に負けているということです。これはちょっと雑学として知っていただけるといいと思います。画像診断はまだ輸出の方が勝っています。

では、もう少し細かく見ていきたいと思います。ここからより具体的な企業が出てくるので面白いかと思います。

診断機器、診断系治療機器、治療系、生体機能補助・代行機器、それからその他ということで、日本の厚生労働省の分類では大きくこの4 つのカテゴリにまず医療機器が分けられています。
それぞれに結構特徴がありますので 見ていきたいとおもいます。

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まず診断機器です。生産額で言うと一番大きいのがこの診断機器です。36.7%、これが診断機器です。
国内生産の中で最もメジャーなものです。
どんなものかというと一つは画像診断システム、 X線機器とかCT、MRIなど。

それから生体現象計測・監視システムといって、体温計、心電計、内視鏡とかです。

それから臨床化学検査機器とか血液検査機器、遺伝子検査装置それから x 線フィルムや造影剤など、これらが診断機器に分類される機械です。これらの医療機器を作っている企業というと、オリンパス、シーメンス、キャノン、島津などですね。
では会社を見ていきましょう。
まず生体計測機器の分野で言うと日本光電です。バリュートレンドはこんな感じです。
医療機器の会社ってたぶんみんな知らないんですね。
売上はいいけれど、ただ利益が今一つともなってないかなというところですね。自己資本比率69.2%、高いですね。
次は、オリンパスです。日本の医療機器の企業が苦戦しているというのがこのグラフから感じ取れますね。海外売上が80%はすごいですね。売り上げが伸びてないですね。
次にシスメックス。
これは検体検査機器ですね。悪くないですね。ただ株価が高いです。尿検査分野とか血球、血液の検査などの機械をつくってます。兵庫県でしたね。
下がったら欲しいですね 確かコモンズが入れてましたね。コモンズ投信がポートフォリオに入れてたと思います。
これは要チェックですね。海外売上84%で非常に伸びています。
次は、エーアンドディ。売上のデータが飛び飛び脱落してて変な形になってますが、臨床検査機器のシステムと臨床検査試薬の会社です。全く同じ社名でもう一つあるので非常にややこしいんです。PERが低いですね。
売上の線がちょっと切れてるから修正するとこんな感じですかね。
悪くない気がしますね。海外売上が0%。でも悪くないカタチです。株価水準が低いのでフォローしておきたいかなというところですね。
今ざっと見てきたのが診断系を主に取り扱っている会社になります。

では、次に行きたいと思います。 次はですね治療機器の分野です。医療機器の中でも治療に関連する機器です。

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国内の生産額で言うと30.2% の部分になります。ただ先ほど見たように治療機器は基本海外にやられている、アメリカにやられている分野になります 。
治療機器とは具体的になにかというと処置用機器、注射の筒、チューブ、カテーテル、採血・輸血用の器具、それから治療用・手術用の機器ですね。ガンマナイフなど。それから鋼製器具ということで鉗子やメスなります。
治療用機器に当てはまる企業としては、朝日インテック・テルモ・日本ライフラインもですね。日本ライフラインは、基本商社ですけれども自社でつくっているものもあります。
まずはテルモです。カテーテルの会社です。
バリューの面でみると、この10年くらい厳しそうですね。直近でグッと伸びてますけど、結構ずっと停滞してる時期があるんですよね。やっぱりアメリカの企業が強いというだけあって、先ほどのシスメックスほどきれいになだらかに上がっているわけではないということですね。
クリエートメディック、カテーテルですね。
カテーテルの業界というとなんとなく日本の企業が優秀で非常に伸びている分野なのかなというイメージが私もあったんですけれども、案外カテーテルの会社って苦戦しているということですね。
カテーテルそのものではないんですが、ガイドワイヤというカテーテルの補助みたいなものを作っている、朝日インテックです。株価水準が高いですね。
今日株価が暴落して24,000円まであがっていた日経平均が22,000円に戻ってきて、これから株価がどんどん下がっていくんじゃないかというこの日に、こんな割高な会社もあるんだなと是非確認しておいてください。こういった会社も株価は下がってきますから。
市場が暴落すればこういう会社も下がってきます。
まだあります。テクノメディカです。これは採血管準備装置です。採血管を格納している装置です。
次は、大研医器という手術室とかで使う消耗品である、吸入器や注入器などを作っている会社です。大阪の南の方の会社です。売り上げは伸びてるので、この会社は一応ちょっとチェックしておいてもらった方がいいかなと思います。
ちょっとこの数年横ばいですが、だいたい適正株価といったところでしょう。
次はアクションの銘柄レポートでも多分10年近く前だと思い ますが、取り上げたと思いますマニーです。手術用の縫合針、眼科用のナイフ、それから歯科用の治療器などの会社です。ちょっと分かりずらいですけども地味に伸びてます。ジリジリと伸びています。売り上げは結構伸びています。
ちょっと進行形がすごく伸びている感じです。
これは是非ウォッチしていただきたい企業ですね。ベトナムに工場があります。
海外売上76%で自己資本比率88.2%と いうことで非常に高くなっています。
治療機器をざっと見てきました。医療機器の中でも治療に関連する分野で、基本アメリカに負けている、輸入に負けている分野ですけれどもカテーテル、ガンマナイフ、メスなどの会社があります。特に注目はマニーです。
グラフをもう一度見直すと、テルモは特に直近が伸びていました。朝日インテックは良いが株価が高いです。このあたりは要チェックですね。それからマニーです。
皆さん思い出してください。世界の医療機器市場はすごく伸びてましたからその中で頑張っている企業です。特にマニーなどは、企業の規模としてはそれほど大きくないです。売り上げていくとに100億ぐらいですから、こういった医療の業界の中でもニッチな領域で攻めてる会社、強い会社というのがなかなか注目かなと思います。
結構いろんな会社がありますが、2社に1社ぐらいは悪くない感じのバリュートレンドになっているということです。

3つ目生体機能補助・代行機器ということです。医療機器の4分野の中の3つ目です。

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生産額で言うと13.7%になりますが、こちらを見ていきたいと思います。
透析器(ダイアライザー)・ペースメーカー・人工関節などこれらの企業で思い浮かぶところがあるでしょうか。
日本MDMは今回は商社なので入れてないです。2年ほど前になりますけれども、医薬品と医療機器の卸という切り口で業界セミナーをやっていますので、今回は商社は外しています。
まず、ニプロです。ディスポーザブル、つまり使い捨ての医療器具です。ダイアライザーなど人工透析に使う機器や人工腎臓などに強い会社です。売り上げは悪くないですが、自己資本比率が低く、海外売り上げはそこそことで利益はややガタガタです。
次はGMS。こちらもディスポーザブル医療器具です。血液回路とか透析装置、透析針など透析がらみです。
次は、川澄化学工業 、人工透析器具です。
人工透析はずっとリピートするものなので、儲かるのかと思いきや案外透析関連のメーカーは儲かってないんです。
次はメディキットです。人工透析用留置針なとです。これも伸びていて非常に安定した形です。ちょっと投資するには、成長性が低すぎるかなという感じです。海外売上10%、資本比率86.2%いうことで非常に健全ですが、やや緩やかであります。
生体機能補助・代行機器の装置を作っている会社を見てきましたが、これも実はアメリカが強い領域 ですね。

結構ニッチな領域で目立った企業があるので、今日は たくさん取り上げています。
同じ業界といっても結構多様なんですね。なぜかというと市場規模が大きいからです。
では最後、その他の部分を見ていきたいと思います。

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まず歯科用機器です。
歯科材料の歯科用金属とか眼科関連でいうとコンタクトレンズ、それから施設用機器では手術台、衛生材料、それから家庭用医療機器の中では補聴器などがあります。
企業としては、まずナカニシです。ハンドピースというと歯医者さんが手に持ってガリガリやるものです。あれで世界一です。伸びてますね。海外売上78%自己資本比率90%です。
次は松風です。京都の会社です。会社訪問記事の中に松風の記事もありますのでぜひ読んでください。
人工の歯あるいは詰め物の会社です。人工歯、研削材などもあります。 デンタル関連で非常に有名な会社です。売り上げは伸びてますが、アメリカでの展開にも注力しているということです。
アマルガムという銀の詰め物、昔使っていたものを最初に販売した会社だったと思います。
次にメニコンです、コンタクトですね。コンタクトに関して言うと、実はアイルランドからの輸入が非常に多いです。国内で言うとメニコンとかホヤなどがコンタクトを作っています。
次はリオンです。銘柄レポートで取り上げました。補聴器あるいは環境計測機器とか、音量の計測をするという機械を作っている会社です。
売り上げは横ばいぐらいですが利益は非常に向上しているというバリュートレンドになっています。これも銘柄レポートがあります。最後不二硝子です。これは ガラス土石製品に分類されていますけれども、医療用のガラスということで菅瓶、アンプルなどを作っている会社です。
ナカニシは要チェックです。

業界地図です。

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企業一覧でいうと今紹介したような会社があります。専業ではないけれども医療機器を扱っている企業が他にもありまして、オムロンとかフクダ電子とか島津とかいったところもあります。
海外の企業で言うと、ジョンソン・エンド・ジョンソンとかGE、シーメンス、フィリップスなどです。
世界に並みいる競合がいます。
医療機器を使った治療行為には点数がつきますから、保健行政の影響を受けます。
今日冒頭で見たようにまず市場規模として拡大していくことはまず間違いない鉄板の業界なんです。その中でどんな企業を狙うのかというと、途中で見ていただいたように日本の医療機器のメーカーはあんまり強くないわけです。一方アメリカの企業は強い。なので、王道は米企業狙いというのが、一つの戦略だと思います。
あるいは 見てきたように日本国内の企業でニッチで世界一になっている会社、朝日インテック、ナカニシ、マニーなど市場規模が小さすぎて大企業が参入する意味がないという分野で強い会社、ニッチな会社を狙うという戦略。このどちらかの戦略になると思います。

業界の特徴をまとめます。市場規模が日本国内においても2兆円以上ある、もうすぐ3兆円です。この規模感は是非意識しておいていただきたいということです。国内海外ともに成長市場なので投資のチャンスは 非常にあるということです。ただ見たように長期で投資するなら米企業か日本企業のニッチを狙うかという戦略になるかと思います。市場規模は成長していますが需要はディフェンシブと思われます。 グラフで見ていただいたように案外安定している。機械装置なので、例えば製造業の機械装置だと景気の変動によって大きく上下しますが、それほどでもないということです。
あとは輸入の方が輸出よりも多いということです。これは日本の政策を理解するとき、貿易赤字を理解するうえで重要な観点かなと思います。先ほど言いましたけどもニッチな分野では世界一の企業がいくつかあり ますのでこの辺りを狙っていきましょうということです。

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