長期投資家のためのIR情報
バリュートレンド

石油・石炭製品業界研究


 

石油・石炭製品業界についてです。

業種見取り図の中には、石油・石炭に関連する業種では、石油・石炭製品という業種と鉱業という業種があります。

石油・石炭製品の業界の代表企業はJXホールディングスが挙げられます。その他には、コスモ石油、昭和シェル石油などがあります。

一方の鉱業には、国際石油開発帝石、石油資源開発などの企業があります。

鉱業の会社は海外で石油を開発するための権益を買い、生産した原油を国内に輸入するのが鉱業です。ビジネスでいうと上流に当たります。そして、石油・石炭製品の方は、海外から国際石油開発帝石などが輸入してきた原油を生成してガソリンや軽油、重油などの石油製品を作る業界です。ビジネスでいうと下流部門に当たります。

sekiyusekitan1.jpg (103 KB)

日本国内の石油製品、つまりガソリンや軽油や重油の消費量は減ってきています。

国内での石油製品の販売量の推移を表したグラフをみてみましょう。

sekiyusekitan2.jpg (187 KB)

第1次石油危機が起こるまで増えていき、石油危機で停滞し、第2次石油危機が来て減少、そしてまた増加に転ずるという比較的ドラスティックな動きをしています。そして、1990年代はずっと横ばいでその後下がっています。

石油製品の需要に大きな影響を与える要因としてまずは、人口動態、国内での消費量があります。また、省エネ技術、発電方法つまりエネルギー政策などが挙げられます。国内で見ると、人口減少、省エネ技術の進歩、原発推進などの背景により、基本的にはこの10年ほど石油の消費量・販売量は減少傾向にありました。そして、今後も減少していくでしょう。あまり景気循環的ではありませんが、衰退産業といえます。そのため、投資対象としてはあまり魅力がないといえます。

 

原油はガソリン、ナフサなどいろいろなものに精製されます。それぞれの使い道としては、ガソリンは自動車、ナフサは石油化学工業で使用されます。灯油は暖房などの家庭用、軽油は車やディーゼルエンジン、重油は船舶や発電に使われます。軽油や重油は一部輸出もしています。ナフサは国内で多く消費されるため、輸入もしています。

 

次に、原油処理能力と設計能力稼働率の推移のグラフをみてみましょう。

sekiyusekitan3.jpg (119 KB)

これは、どれだけの原油を処理する設備が今、日本にあるのかということを表しています。1日あたりどれくらいかということで、この青の棒グラフを見ていくと、600万バレルほどあった処理能力が今400万バレル程度になっています。また、設備の稼働率はどうかというと80%くらいから落ちてきて、60%ぐらいになり、また今は80%ぐらいの水準にあるということがわかります。

石油の需要が減っているので、供給も減っています。そのため、グラフの通り、原油処理能力や設備はどんどん減っています。要は国内の石油精製設備は余っているわけです。ですので、今後もM&Aによる企業の統合が進んでいくでしょう。統合が進み、大規模化することで競争が緩和され、低コスト経営が実現するからです。JXホールディングスと東燃ゼネラル、出光興産と昭和シェル石油も経営統合しました。

 

次に世界的な石油の需要についてです。

国際石油需要の見通しの表をみると、世界全体では、2040年に向けて現在より1.4倍ほど需要は増える見込みです。国別にみると、中国やインド、アフリカなどの需要は増えていきます。一方でOECD諸国や日本などは減っていくようです。増加量の方が多いため、世界的に見ると石油精製業界は成長産業といえます。

sekiyusekitan4.jpg (188 KB)

 

原油価格のチャートは、原油1バレルの値段の推移を表しています。1バレルは約160Lです。原油に比べると、ガソリンの値段が高いのは、精製費用や税金、販売費用などが上乗せされているためです。

sekiyusekitan5.jpg (99 KB)

石油・石炭製品業界は、装置産業であるといえます。JXホールディングスの貸借対照表の有形固定資産をみると、資産全体に対して、建物構築物及び輸送、機械装置運搬具などの有形固定資産額が多くなっています。このように有形固定資産の大きな産業を装置産業といいます。資本効率が悪い反面、参入障壁が高いというメリットもあります。1度大きな設備を作ると、なかなか撤退できないという弱点もあります。

また、仕入れ価格が相場変動の影響を受けるというのもビジネスの特徴です。ビジネスの特性上、在庫は必ず必要です。ビジネスの仕組み上もそうですし、法律上も一定量備蓄しておかなければいけません。原油の需要はある程度予測できますが、供給量の予測は難しく、供給量によって原油価格は変動します。そのため、海外から輸入した原油の価格が、在庫中に変動することよって業績が大きく影響を受けます。このことから、業績の予想が非常に難しい業界といえます。

 

まとめると、国内の石油の需要は安定して減ってきています。そして、石油と一言で言っても、ガソリンやナフサ、重油などいろいろな目的で使われています。重油など海外に輸出しているものもあるため、為替の影響もネガティブなものばかりとは言えません。業界としては、再編が進み、2~3社に絞られていくでしょう。そして、原油の需要は合理的に予測できますが、供給量が予測できないため、原油価格によって業績は影響を受けます。

関連するガイドはありません
ページトップへ戻る