新薬メーカー業界研究
今回は新薬メーカー業界です。
東証の業種分類で医薬品の分類がありますが、医薬品をアクションではさらに3つに分けています。新薬メーカー、ジェネリックメーカー、そしてその他医療・医薬品です。
新薬メーカーですが、日本では成長産業です。
日本の人口のグラフを見てみましょう。
黄緑色が0~14歳の年少人口そして水色が15歳~64歳の労働人口、赤色が65歳以上の老年人口となっています。
医薬品を主に使う層は赤色の老年人口です。
次に65歳以上人口のみを切り出したグラフです。
現在約3000万人の老年人口はこれから増えていきます。そして2045年くらいにピークアウトする見通しです。
今後30年ほどで老年人口は3割増しぐらいになるという予想です。このことから、まだまだ薬品の消費は増えていくであろうと予想されます。
ですので、この医薬品マーケットは実は日本国内において成長産業であるということです。
角度を変えてデータを見ます。これは国民医療費の推移です。
医療費は増えています。2013年で40兆円です。GDPが500兆円ですから1割弱の市場規模があるということです。
さらに言うと医薬品の中でも輸入してるものも増えています。
実は貿易の中で輸入に何が多いかと言うと、筆頭は油ですけれども、医薬品も結構バカにならないです。
続きまして世界全体でみましょう。世界全体で見たときに医薬品マーケットは成長産業です。
世界は実は今成熟化・高齢化してきています。
世界の生産年齢人口は徐々に下がっていくはずです。人口増加が緩やかになってきています。
次に、世界の地域別医薬品市場のデータです。
水色の部分が北米、赤がヨーロッパ、緑がアジア、紫色が日本、オレンジがラテンアメリカです。
グラフから、北米のシェアが非常に高いということ、例えば2014年で見れば世界の約4割を北米で占めていることがわかります。
その他見逃せないのは、全体のボリュームです。現在、年間で約1兆ドル(120兆円)のマーケットがあるわけです。そもそも成長産業ですが、その元々の市場規模が莫大です。世界のGDPに占める割合も大きいということです。投資対象としは、とても魅力的だといえます。
業界地図をみてみましょう。
日本国内でいうと筆頭は、武田薬品工業、そしてアステラス、第一三共の新薬メーカー。
ジェネリックメーカーとしては日医工、沢井製薬、東和薬品。その他では、ツムラ、テルモ、ナカニシなどがあります。
新薬メーカーは激戦区です。世界の新薬メーカーというと、ファイザー、ノバルティスなどがあります。
ファイザーは5兆円ほどの売上があります。
武田薬品工業についてみてみると、年間の研究開発費が約3800億円となっています。売上の約2割です。これだけの研究費をかけて、年間に1000億円以上売れるブロックバスターと言われる薬を開発しようとしているわけです。リスクが高いと言えます。
いい薬(ブロックバスター)が開発でき、特許が活きている間は爆発的に儲かるけれど、特許が切れると安価なジェネリック医薬品が出てきて利益が落ち込むわけです。バリューチャートにもそれが現れています。
では、研究開発についてもう少し詳しくみていきます。
そもそも医薬品の研究開発は大変だという話をよく聞きます。
まず基礎研究があって、非臨床試験があり、フェーズワンという臨床試験があり、フェーズ2という臨床試験があり、フェーズ3という臨床試験があり、その後承認申請をして承認を受けて製造し販売をするという流れです。
そもそも開発に非常に期間がかかります。このプロセスにおいて莫大な研究開発費がかかるということです。
また、新薬メーカーのビジネスの特徴としては、特許が挙げられます。
医薬品には特許があります。それを理解するために重要なのが長期収載品という言葉です。これは、特許の切れた医薬品のことです。この特許の切れた医薬品を、他の製薬会社が製造・供給する医薬品がジェネリック医薬品です。薬を開発した新薬メーカーは特許が切れた製品でも、長期収載品としてその薬を販売し、ジェネリックメーカーは同じ成分の薬をジェネリック医薬品として販売するわけです。どれだけ素晴らしいブロックバスターを開発したとしても、特許が切れたとたん模倣品が現れ、その競争力は失われるということです。そこが悩ましい点です。
このようにみていくと、新薬の開発そのものよりもそこに付随するビジネスのほうが実は有望ではないかと私は思っています。
例えば、臨床試験のサポートを行うような企業です。臨床試験のサポートをしている会社で代表格はシビックです。
補足的な知識ということで次の図を確認しておきます。
製薬企業は医薬品を売るにあたって、医薬品の卸売りを行っている会社に医薬品を販売します。
医薬品の卸をしている企業というと、アルフレッサ、メディセオなどです。
その卸企業が医療機関に納品します。医療機関はその医薬品を使い、請求審査支払機関に請求をします。そして請求審査支払機関が審査したのち、健康保険組合などに請求がいき、お金が支払われるという流れになっています。
国内も海外もディフェンシブで成長業界である新薬メーカー業界です。しかし、新薬開発には莫大な期間と費用がかかりギャンブル性があるともいえます。