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塗料・インキ業界研究


 

塗料・インキ業界についてです。

塗料は化学の分野に分類されます。

グラフを見てみましょう。国内メーカーについてですが、国内の生産量の推移を表しています。ほぼ需要とも一致していると考えていいでしょう。リーマンショックの時に落ち込んでいます。国内に関しては成熟業界といえます。海外については、成長です。

では、塗料とは、どんな目的で使われるでしょうか。

関西ペイントは自動車に使われる塗料を作っている会社でした。しかし、塗料の最大の利用先は建築物です。

塗料の産業区分別需要を見てみましょう。

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一番大きいのが水色の部分、41.9%が建築関連になっています。

続いてが、自動車、船舶、電気機械等となっています。

一番多い、建築用塗料ですが、ただ単にきれいにするために塗料を塗っているわけではありません。

塗料にはいろいろな機能があります。防サビや防火、防水、蚊よけなどの機能があったりします。

ビルやマンションだけではなく戸建住宅など、よく見てみると世の中の建築物は塗料を塗ることによって機能が付加されているということに気付きます。

例えば国内においても、需要が著しく減るわけではないのは、大規模修繕などによる消費があるためです。ある一定程度のストック売上的なものがあるということです。

世界に目を向けると、アジアだけでなく世界中でビルや家がどんどん建築されており、建築用塗料の需要が増えていることが想像できます。この業界はゴールドラッシュです。この業界で、世界的に頑張っている企業は、今非常にビジネスチャンスに恵まれているといえます。

 

自動車も建築物に比べれば少ないですが塗料をたくさん使っています。

まずボディですボディだけでも、3~5回も重ね塗りされているそうです。

車内のプラスチック部品については、傷が付きにくい機能、汚れにくい機能などを追加する形で塗装しています。

タイヤ部分は防さびをし、クリヤー塗料を塗り、と何度も重ね塗りされています。

自動車に関しても、多くの塗料が消費されています。

船舶は全体にも使われていますが、特に大事なのは船底部です。汚れや腐食から守るために塗料が使われています。

塗料の4割は建築物、約2割弱が自動車、10%は船舶ということで、これらの業界が伸びれば塗料の業界も連動して伸びるということです。

グローバルで見れば建物と自動車は間違いなく増えますのでビジネスチャンスです。

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世界の塗料需要をみてみると、2006年から見ると2020年には倍になっている予想です。実績値でみても、10年ほどでグローバルなマーケットが1.5倍になっています。

世界で戦っている塗料業界の会社にとってみれば大きなビジネスチャンスが来ているわけです。

次に、新興国の一人あたりを塗料の消費量を紹介したグラフになります。

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例えば日本であれば一人当たり12~13キログラムを使っているようです。インドの人だった2.5キロぐらいしか使ってないということです。ここから、塗料がどれくらい普及しているのかということがわかります。

新興国ではまだまだ塗料の消費が増えるだろうということです。

次に世界の塗料市場についてのデータです。先ほどのグラフと似たような結果です。

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建築関係が世界的に言うと43%。これはほぼ同じですね。

自動車用が先ほどの日本国内でみれば2割でしたけれど、グローバルで見れば10%弱となっています。

その代わり工業用が世界ではやや多いということで、この辺は産業構造の違いでしょうね。

いずれにしても建築に塗料がすごくたくさん使われているということに変わりはありません。

 

国内の塗料企業というと、日本ペイント、関西ペイントなどが挙げられます。非常に売上の大きな企業です。

そのほか、中国塗料、エスケー化研などが続きます。

2014年の売上高を比べると、世界の塗料業界の中で、関西ペイントが第8位、日本ペイントが第12位となっています。日本ペイント、関西ペイントはM&Aを積極的に行い、急激に規模を拡大しているので、この順位は上がっていくと考えられます。世界でトップの企業としては、シャーウィンウィリアムズ、PPG、アクゾノーベルなどが挙げられます。

 

塗料の業界ですが建築や自動車の生産量、建築量に比例しますので、参考まで自動車の世界の販売台数をグラフにしたものを紹介しておきます。

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2012年のデータが欠落してしまっていますが、世界の自動車販売台数の推移です。

2004年が6000万台、2015年は約9000万台です。伸びています。

この11~2年で1.5倍ぐらいになってます。この数年伸びが鈍化してるかなという気がします

これは、世界で最大の自動車消費国である中国の景気が停滞している影響かと考えられます。

しかし、次はインドが世界で一番自動車を買う国になるでしょう。主役は入れ替わっていくわけです。

このグラフ見て意外なのは案外、リーマンショックの時でも販売台数は落ちてないということです。

なので、塗料も景気循環株かと思いますが、景気循環の影響を受けるけれども、そこまで多大な影響を受けるわけでもないだろうということです。

 

ここまでの話をまとめると、この塗料の業界の特徴は

1.需要が他の業界(建設、自動車)などに依存している。

2.需要が他業界に分散している。そのため、業績が比較的安定しやすい。

3.世界ベスト10に日本企業が2社入っている。

ということです。

 

関西ペイントの資料によると、社会の豊かさにより、消費される塗料が変わってくるそうです。一人当たりGDPつまり年収が1000ドルを超えると建築用塗料の需要が増え、3000ドルに到達すると自動車用塗料の需要が増えるようです。つまり、企業は、それぞれの国の一人当たりGDPを見て、その国に展開するか、どの塗料を販売するかなどを判断するわけです。

 

各企業のM&Aをざっとみてみましょう。

日本ペイントは2017年1月に中国の塗料メーカー、2017年3月にアメリカの塗料メーカーをM&Aしています。

関西ペイントは、2016年10月にトルコの塗料メーカーとマレーシアの塗料メーカー、2016年12月にヨーロッパの塗料メーカーを、2017年2月に東アフリカの塗料メーカーをM&Aしています。

非常に積極的に事業拡大をしています。

 

国内は成熟ですが、海外では驚くほどのスピードで成長している塗料業界、注目していきたいです。

 

 

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