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農薬業界研究


 

農薬業界についてです。

農薬会社は、業種としては化学に分類されています。

農薬専業メーカーとしては、日本農薬、アース製薬、アグロカネショウウなどがあります。

農薬業界の国内については、成熟です。横ばいから若干増えているでしょうか。

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市場の規模としては3000億円から3500億円の規模があります。

内訳をみると3分の1ほどは稲作向けの農薬、残りは果樹や野菜向けとなっています。

日本農薬は水稲とその他で園芸用の農薬に強みをもっています。アグロカネショウは、果樹と野菜向けの農薬が得意分野となっています。各企業が得意な分野を持っており、すみ分けをして展開しているといえます。

海外、特にアジアでは水稲が主なマーケットとなっています。ですので、日本農薬では、海外展開も積極的に行っており海外売上も大きくなっています。

 

世界の農薬マーケットは拡大しています。

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2004年、約300億USドル(約4兆円)から2012年には約500億USドル(約6兆円)まで増えています。

人口が増加することで、農産物がたくさん生産されるようになり、それに伴い農薬もたくさん消費されるようになっているわけです。

もう少し補足すると世界の耕作地の面積はあまり変わっていないのに、農薬の消費量は今どんどん増えています。世界の人口が増えていると同時に一人当たりの GDPはそれを上回るスピードで増えています。それを背景に、農業を行っている国々が、効率的な農業を行うようになり、農薬の消費が増えてきています。農薬を使うことで、少ない手間で、同じ耕作面積でも、産出量を増やせるわけです。このようなことが世界中で起こっているのです。

地域別に見ればアジアで75億ドルから125億ドル、中南米で54億ドルから115億ドルへと農薬の消費量が倍増しています。

世界的に大規模な外資系農薬企業が狙っているマーケットというのは、トウモロコシ、麦、大豆という大きなマーケットです。モンサント、シンジェンタなどの企業が挙げられます。このような大規模企業は農薬だけでなく、種子・種苗も作っています。モンサントなどの企業は害虫を殺すために強力な農薬を作ります。そして、自社の農薬でなら生き残る種子種苗を同時に作って売っているいるわけです。

一方で、世界的には小規模な水稲や果樹、野菜用農薬のマーケットに日本企業が注力しています。日本企業は、このニッチなマーケットで収益力を高めて大規模市場に攻めていくということを目指しています。

 

農薬業界を取り巻く外部環境要因を考えてみましょう。世界的に言えば人口増加に伴う食糧需要増がメガトレンドとしてあるということ。国内においてはアベノミクスによる農業改革、農業の大規模化を行っていること。これは農薬ビジネスにとってプラスの材料です。日本で農業生産量が増えれば日本国内で農薬消費量が増えるわけです。また、海外における日本食ブームもプラスの材料でしょう。

逆にネガティブな材料としては、農家の高齢化やTPPです。TPPで海外の安い農産物が輸入されると日本国内の

農業生産量が減り日本の農業が衰退するかもしれません。業界としてはこのような背景があります。また、角度を変えてみると、農作物を肥料やバイオ燃料、飼料として使うという、今までとは違う使われ方の可能性が出てきています。つまり、農業生産量だけでなく、畜産の生産量にも応じて農薬の消費量が増えていくということも考えられます。

 

もう一つ、農薬業界を理解する上では、新製品の開発に時間とお金がかかるということを押さえておかなければなりません。それぞれの国によってもレギュレーションが違うということもあります。製品の開発に少なくとも10年、費用は30億円以上かかるようです。日本農薬であれば、1年の売り上げが567億円、営業利益が90億円ですので、1年の利益の3分の1ぐらいは投じないと新しい農薬は生み出せないということです。

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一度築いた競争優位性はある程度の期間維持できるともいえます。しかし逆に言えば、売上を維持していくためには、自社だけで新製品を開発していては、間に合わないということがいえます。そうなると、とるべき戦略としては、M&Aで大規模化していかなければいけないわけです。

日本の農薬メーカーが生き残っていくためには大規模にファイナンスして、どんどんM&Aをし、ニッチな領域、水稲、果樹、野菜などの領域で大規模なメーカーになり、大規模な市場に攻めていく必要があります。

 

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